斎藤 洋介 -男の肖像時計の選択(パワーウオッチVol.31)

かなり年季の入ったオメガ・シーマスター・デヴィル。文字盤が適度に日に焼けていて、絶妙な雰囲気を醸し出している

 

個性的なバイプレーヤーとして、映画やドラマで強い存在感を漂わせている斎藤洋介さんは、その時計のチョイスも非常に個性的だ。愛用の1本はおそらく1960年代に製造されたオメガ・シーマスター・デヴィル。斎藤さんはこれを3万円ほどで手に入れたということで、かなり買い物上手といえるだろう。

「たまたま手ごろなものが見つかって、4~5年前に手に入れたものです。色のくすみ具合が気に入ったんですよね。オーバーホールしようと思って時計店に相談してみたんだけど、この時代の時計は扱える技術者が少ないらしくて、なるべく裏蓋は開けない方がいいって言われました。秒針がぐらついてきているんで、近い将来に修理に出そうとは思っているんですけどね」


たまたま手ごろなものが見つかって、4~5年前に手に入れたものです。
色のくすみ具合が気に入ったんですよね。

貫禄たっぷりのビンテージオメガだが、斎藤さんはクラフトマンシップを感じさせるものに、子供のころから惹かれていたのだという。

「以前はセイコーのロードマチックを使ってたんですが、それは父親から譲り受けたもので東京オリンピックのころに製造されたものでした。時間の正確さを求めるならクオーツがいいんでしょうけど、今やケータイにも時計機能は付いていますし、そんなに不便に感じることはないんですよね。それよりもゼンマイを巻く行為によって愛着が湧いてくる感じを大事にしたいんです。機械ものは子供のころから好きでした。中学校に入学するときに初めて腕時計を買ってもらったんですが、授業中にドライバーで裏蓋こじ開けて、中がどうなっているのか観察してみたりしてましたね(笑)」


かつて誰が使っていたもので、どういう経路で
僕のところにたどり着いたのかはわからないんですけど、そういう縁も大事にしたいんです。

お金を出せば手に入れられる時計よりも、固有のヒストリーを持っている時計に強い関心があるのだろう。それは斎藤さんが演じるキャラクターと共通する部分がある。

「かつて誰が使っていたもので、どういう経路で僕のところにたどり着いたのかはわからないんですけど、そういう縁も大事にしたいんです。時代を感じさせるもの、職人気質を伝えてくれるものっていうのに昔から惹かれますね」

傷がついたときに後悔するような高価な時計は「身の丈に合わない」と笑う斎藤さん。自分にとって本当に価値あるものを身につける大人の余裕。今まで演じてきた名キャラクターは、その余裕があったからこそ湧き上がってきたのだろう。

 

斎藤 洋介歌手・俳優)
RYOTARO SUGI 1944年8月14日、兵庫県神戸市生まれ。65年歌手デビュー。67年、“文五捕物絵図”(NHK)にて主演、脚光を浴びる。その後、76年にリリースした“すきま風”はミリオンセラーとなり、テレビ出演は現在までに1400本以上。代表作に“右門捕物帳”“遠山の金さん”“新五捕物帳”“同心暁蘭之介”“喧嘩屋右近”など。15歳の頃から福祉活動に取り組み、現在は法務省・特別矯正監。日本とベトナム、両国の特別大使。福祉関連での受章歴も多数。