アウトライン(OUTLINE)」裏話 【第4回】当初3万円台を目標にスタート!

ムーヴメントを変更し 細部の仕上げにもこだわる

 4回目の今回は、去る1月11日に発売した記念すべき第1弾モデル〝コンプレダイバー1960〟の開発ウラ話について書かせていただこうと思う。

 上の写真を見ていただきたい。これは1回目と2回目の試作機を並べて撮影したものである。左が1回目、右が2回目だ。デザイン的な変更はいくつかあるが、1番の変更点は、写真ではわかりづらいがケースの厚さなのである。そして今回、このケースの厚さを変更したことで、最終的には様々な部分がいい方向に改善されたと思っている。

 実のところ当初は価格設定を3万円台に想定して開発をすすめていたのだが、インナーベゼルがあることと、クラシック感を出すために風防ガラスはフラットにしたくなかったこともあってケース厚が13.65mm(下の写真)とだいぶ厚くなってしまった。

 これまで色々な時計を着けてきたが、僕の中では日常着ける際にストレスを感じない厚さの許容範囲は、どんなに厚くとも12mm台だと考えている。そのためどうしても13mmという数字は切りたかったのだ。

  そこで今回、ベゼル、風防をキープしつつも、ケース厚を抑えるために最終的に取った手段がムーヴメントの変更だったのである。

 先にも触れたが、当初は価格設定を3万円台と決めていた。そのためミヨタ社のスタンダードな8000番台のムーヴメントを採用するつもりでいたのだった。決して悪いムーヴメントではないのだが、難点を強いて挙げるならば薄くないところだ。

 これが上位機のハイグレードタイプ、9000番台になるとムーヴメント自体が1mm以上も薄くなる。つまりこれに変えさえすればすべてが解決した。ただし問題がひとつ、8000番台よりも価格はかなり上がってしまい、定価3万円台は諦めざるをえないことだった。この9000番台は薄いだけではない。毎時2万8800振動にハイビート化され、性能も仕上げもグンとよくなる。そこで考えたのが、ならば4万円台でもそれに見合う仕上げにしようと。

 そして改良したのが、針、文字盤、インデックス、そして風防である。針はさらに立体的に矢印の造形にも少し凝った。文字盤はマット調から針が写り込むぐらいにグロス感を持たせ、ロレックスのサブマリーナで良く知られるミラーダイアル風に仕上げて高級感を出した。インデックスは蓄光のルミノバに色を加えて経年変化による焼け感を出し、アラビア数字も太くすることでメリハリを与えた。

文字盤はロレックスのミラーダイアル風に針が写り込むぐらいにグロス感のある漆黒に変更。高級感を出した

くさび形のインデックスはルミノバに色を加えて経年変化した感じに。またアラビア数字は太くしメリハリを与えた

 最後に風防だが、サファイアクリスタルも考えたのだが、ドームっぽくするとコストがさらに上がってしまい定価4万円台にも納まらなくなるため断念。その代わりに強度を高めたK1ミネラルガラスを採用した。

風貌はドーム状とまではいかないが、少し突き出た感じがクラシカルな雰囲気を強調。サファイアクリスタルにすることも考えたが、このスタイルを表現するにはコスト的に無理だった。そのためK1ミネラルガラスを採用

 ということであらためてトップの写真をご覧いただきたい。全体的に完成度は高まったと思うのだが、いかがだろうか。

待望の第2弾! プロトタイプが完成してきた。まだ手を加えなければならない部分があるため、顔をお見せできないのが残念だが、1回目の試作機にしては、思いのほかイメージ通りで、かなりいい感じに仕上がってきた。今回3種類のデザインで提案し、最終的には2種類に絞ろうと考えていたのだが、これがどれも捨て難い。よって、3種類のデザインで展開することを決めた。さてそのデザインだが、裏ブタの刻印から想像してみてほしい。6月にはWATCH Makersで予約販売予定。ご期待を!

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菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。