【レディースウオッチ】時計好きの憧れ、ランゲ1の意匠を受け継ぐ“リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ”を紹介

 女性編集者がレディースウオッチの新作を実際に見て、感想を交えて紹介する本企画。今回はA.LANGE&SÖHNE(A.ランゲ&ゾーネ)のリトル・ランゲ1・ムーンフェイズを取り上げる。

【モデル紹介】

 A.ランゲ&ゾーネを代表するモデル“ランゲ1”に、月の満ち欠けを表示するムーンフェイズを搭載した“ランゲ1・ムーンフェイズ”が登場したのは、2002年のこと。時分針や秒針を表示するスモールセコンド、パワーリザーブなどのアシンメトリーな配置や、アウトサイズデイトといった特徴的なデザインはそのままに、スモールセコンド部分にムーンフェイズを新たに配した。

 そんなランゲ1・ムーンフェイズよりも1.7mm小さいバリエーションとして2017年に登場したのが本作。ランゲ1・ムーンフェイズのデザインをそのままに、ギョーシェやローズゴールドのムーンフェイズなど、メンズモデルとは異なる装飾の美しさを楽しめるのが魅力だ。

 私が実機を見てまず心引かれたのが、文字盤に施されたギョーシェ彫りだ。これらの線は同ブランド専属の職人が、1世紀以上も前から使われている専用の旋盤を用いて、すべて手作業で彫り上げたもの。1mm幅以下の間隔で模様を彫り込む、熟練の技術が必要な技法だ。同ブランドはこうした技術にこだわりを持っており、なんと直営の学校を設立して職人を育てるほど、技術力の継承に力を入れている。

 また工芸品のように美しい模様は、実は文字盤の反射を防ぐ役割も果たしているとのことだった。さらに細かい部分を見ていくと、インダイアル部分とインデックス部分など、部分ごとに彫る模様を変えることで、視認性が高められていることに気付く。ドイツ製らしい、ものづくりにおける機能性重視の姿勢を感じた。

 次に気になったのが、2時位置に配された大きなデイト表示、“アウトサイズデイト”。大きく見やすい数字と小窓のデザインに興味を持ち、質問をしてみたところ、ランゲ1の象徴的な機構であると知った。
 さらに詳しく聞くと、このアウトサイズデイトは、ドイツ、ドレスデンのゼンパー歌劇場にある五分時計から着想を得たものとのこと。この五分時計は、“歌劇場の最後列からもよく見える時計”を目指して、A.ランゲ&ゾーネの創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲが師であるグートケスと共に製作したもので、いわゆるデジタル式で時刻を表示するように設計された画期的なものだ。この歌劇場は現在も残っているそうで、写真を見せてもらったところ、アウトサイズデイトのデザインととてもよく似ていた。ドレスデンの歴史を感じさせるアウトサイズデイトの意匠に、とても心引かれた。

 本モデルのデイト表示は、一般的な時計のデイト表示よりも約3倍大きく設計されており、高い視認性を実現している。伝統的で上品な装飾のなかに、個性的なアクセントが加えられているのが素敵だと思った。
 ちなみにドレスデンは、創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲの出身地でもある。

 もうひとつ私が気になったのが、このモデル最大の特徴でもあるムーンフェイズ。まず驚いたのが、機械としての高い精度だ。月の満ち欠けの1周期である朔望月に1日分の誤差が生じるまで、122.6年もの歳月を要するという。
 またデザインに関して気になったのが、ホワイトとローズゴールドの配色だ。一般的によく見るデザインだと夜空をイメージしてブルーを用いることが多いが、このモデルではインダイアルをホワイト、月や星をローズゴールドの2色で表現。この2色のコントラストにより、女性的な美しさが引き立てられている。

【装着感は?】

 ムーンフェイズを搭載した機械式時計というと、個人的に“重そう”というイメージを持っていたが、実際に腕にのせてみると想像よりも軽く、腕にしっくり馴染んでくれた。またもうひとつ気になっていた、レディース時計としては若干大き目のケースサイズ(36.8mm)についても、ラグのデザインが計算されているため手首に当たるストレスもなく、着け心地の良さを感じた。個人的に普段、ボーイズライクな時計をすることが多く、このくらいのサイズ感が好み。同じように大きすぎず小さすぎず、腕元で程よく存在感を主張してくれるサイズが好きな人にもオススメしたい。

 また着けた感想を素直に言うならば、“時計を着けている”というより“工芸品を身に着けている”という感覚。すべて手作業で仕上げられていると思うと、博物館などでケース内に展示されているような工芸品を、贅沢にも身に着けているようだった。

【推しのポイント】

世界トップクラスの時計ブランドの技を目で楽しめる

 実際に時計を見た感想としてまず思ったのが、文字盤とムーヴメントに施された装飾が本当に美しいということ。特に特殊な旋盤を使って文字盤に施されたギョーシェは、手作業によるものとは思えないほど均一で、綺麗に仕上げられていた。時計1本に職人たちが注ぎ込んだ時間や労力を考えると、本当に頭が下がる。

 ケースバックから見えるムーヴメントにも、その技術を見ることができた。なかでも時刻表示の精度の調整を行うスワンネック緩急針や、同ブランドが開発したムーヴメントの受け板“3/4プレート”など、スイスとは違う、グラスヒュッテ独自の仕様も見どころである。
 また手巻きのムーヴメント、Cal.L121.2は2年前に発表されたランゲ1のキャリバーをベースに開発されたもので、ツインバレルを採用している。香箱を二つ搭載することで、より安定した高い精度と、72時間ものパワーリザーブの長時間化を実現した。

 また、実はベルトのカラーバリエーションが多いのも女性として嬉しいポイント。ブラウンやブラックなどの定番色から、パープルやエメラルドグリーンなど、様々な種類がある。もちろん、ベルトも同ブランドのオリジナルだ。ベルトを変えると、文字盤のデザインをより様々な表情で楽しむことができる。
 デフォルトのホワイトだと女性的な美しい印象だが、レッドやグリーンだとカジュアルに着用できる。他にもブラックやブラウンだとシックな雰囲気になり、腕の細い男性が着けるのも良さそう。

 実際に時計を見て、私にとっても長い時間をかけて手に入れたいと思う“憧れの時計”になった。

*スペック*

Ref.182.030
リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ

【ムーヴメント】
・ランゲ自社製キャリバーL121.2、手巻き、ランゲ最高品質基準準拠、手作業による組立ておよび装飾、5姿勢調整済み、素材の表面を生かした洋銀製の地板、ハンドエングレービング入りテンプ受け
・部品数 411

【石数】
44石

【ビス留めゴールドシャトン】
8石

【脱進機】
アンクル脱進機

【調速機】
耐震機構および偏心錘付きテンプ、自社製ヒゲゼンマイ、毎時2万1600振動、スワンネック形バネと側面にある調整用ビスにより微調整可能なビートエラー補正装置

【パワーリザーブ】
完全巻上げ状態で72時間

【機能】
時、分およびストップセコンド機能搭載スモールセコンドによる時刻表示/パワーリザーブ表示/ランゲ・アウトサイズデイト/ムーンフェイズ表示

【操作系】
ゼンマイ巻上げおよび時刻調整用リューズ、アウトサイズデイト用ワンタッチ調整ボタン、ムーンフェイズ表示調整用埋め込み式ボタン

【ケース】
PG(36.8mm径)。高さ9.5mm

【ムーヴメント寸法】
直径30.6mm、高さ6mm

【風防ガラスおよびシースルーバック】
サファイアクリスタル(モース硬度9)

【文字盤】
ゴールド無垢、シルバー、ギョーシェ仕上げ

【針とインデックス】
ピンクゴールド

【ベルト】
アリゲーターベルト(ホワイト)

【バックル】
ピンゴールド製ピンバックル

【価格】
456万円(税別価格)

【お問い合わせ】

A.ランゲ&ゾーネ 公式サイト
www.alange-soehne.com
TEL:03-4461-8080

文◎佐波優紀(編集部)