これは瞬殺の予感! ドイツ屈指の時計ブランド、SINN(ジン)の原点回帰的ミリタリーシリーズが最高にカッコいい

 SINN(ジン)をご存知だろうか。時計に明るくない人にはなじみがないかも知れないが、ジンはドイツでも屈指の時計メーカーとして知られている。

 いまでこそ、クラシックでエレガントなモデルやレディースウオッチも手がけているが、ジンの時計の原点はパイロットウオッチやミリタリーウオッチといった、視認性や機能性を突き詰めたプロユースの特殊モデルだ。

 事実、それは会社名にも表れている。現在、日本ではシンプルにジンと呼ぶが、正式名はドイツ語でSINN SPEZIALUHREN (ジン スペツィアルウーレン)。公式サイトなどで散々語られているように、日本語では“ジン特殊時計会社”となる。

 加えて、過去の製品を見てもそれは一目瞭然だ。

 ジンが時計メーカーとして設立される以前、創業者のヘルムート・ジンが手がけたのは航空機のダッシュボードに装備するコックピットクロックだったし、ジンの名をもつ時計メーカーとして事業をはじめた初期の名作として、いまも知られているのはドイツ空軍に納入した軍用クロノグラフだった。

こちらは1960年代製に納入されたジンのドイツ空軍航空機用ナビゲーション・ダッシュボードクロック、タイプ NaBo 17。6時位置のインダイアルは積算計で、15分の簡易積算機能を有する。 ETA社のCal.551を搭載しており、文字盤6時側の1番下に設けられた楕円形のプッシュボタンで、スタート、ストップ、リセット操作を行う

 

67年にNATO管理ナンバー“6645-12-146-3374”として製造された、当時の西ドイツ空軍制式採用クロノグラフ。同タイプのクロノグラフはジンのほか、当時のホイヤー・レオニダス社も製造した。このクロノグラフは当時“1550”と呼ばれており、モデル155の由来になっている。手巻きのCal.バルジュー230を搭載した

 

こちらはモデル155の後継として、68年に当時の西ドイツ軍に制式採用されたクロノグラフ、モデル156.B。大きなベゼルなどはモデル155と変わらないが、搭載ムーヴメンメントを変更。センター同軸のクロノグラフ秒針と60分積算計と6時位置に12時間積算計を備えたレマニアのCal.5100を採用。なお、9時位置はスモールセコンド、12時位置は24時間表示計だ

 

 そんなジンが、久々にその本領を発揮したミリタリースタイルの新作を突如発表した。それが、日本限定ミリタリーシリーズの最新モデルとなるミリタリー タイプ IVである。

 日本限定のミリタリーシリーズは、もともとラインナップの幅が広がりはじめた2007年に“ジン=ミリタリー”というイメージを復活させることを目標としてスタートした企画。視認性を追求し、無駄を排除した次世代のミリタリーウオッチが開発された。

 ジンのレギュラーモデルを“タイプ I”と定義し、2009年にファーストモデルの“タイプ II”をリリース。13年に“タイプ III”そして今年はその第3弾として“タイプ IV”を発表したわけだ。

09年にリリースされた、ミリタリーシリーズのファーストモデル“タイプ II”。こちらもクロノグラフで、精度の安定と向上を目的としたプロテクトガスの充填やドライカプセル機構、高い耐磁性能を実現したマグネチック・フィールド・プロテクションなどのジン・テクノロジーを採用した。こちらは日本限定300本だった

13年にリリースされた前作“タイプ III”。デザインやスタイルはタイプ IIを踏襲しているが、シリーズ初の3針モデルとしてリリースされた。タイプ II同様、プロテクトガスの充填やドライカプセル機構、マグネチック・フィールド・プロテクションを採用し、8万A/mの耐磁性能を有した。こちらも日本限定300本だった

 

 第3弾、タイプ IVのコンセプトは、ズバリ“クラシックミリタリー”。

 12時間積算を排除して視認性を追求した点はファーストモデルから続く特徴だが、本作では1960年代にドイツ軍のミルスペックの条件のひとつだったアクリル風防を採用。クラシックなルックスが際立つスタイルとなった。

 一方で、これまでのミリタリーシリーズの特徴も踏襲。ネジ込み式リューズは、使用感と安全性を考慮して通常とは逆側の9時位置に配置。ステンレススチールケースにスクリューバックを採用し、20気圧の防水性を確保している。

 ちなみに、標準装備はグレーのナイロンベルトだが、交換用としてブラックのカウレザーベルトも1本付属する。そのコンセプトゆえ、このモデルにはブランドおなじみのジン・テクノロジーの搭載はなし。シリーズ中最も製造数が少なく、100本限定のレアモデルだが、価格はなんと36万3000円。時計好きのツボを刺激するデザインとスタイルで、この価格設定はかなり魅力的である。

 11月に発売開始を予定しているらしいが、即完売だろう。正直、自分が欲しいので、あまり注目してほしくはない。だが、この新作を含め、そのバックボーンまで紐解いていくと、ぜひとも知って欲しくなる魅力的なモデルのため、今回はあえて紹介することにした次第である。ぜひとも売り切れてしまう前に、実機に触れたレビューができれば幸いである。

 

SINN(ジン)
ミリタリー タイプ IV
日本限定のミリタリーシリーズ最新作。1960年代にドイツ軍に採用されたクロノグラフ、モデル155やモデル156.Bを彷彿とさせるクラシックなスタイルがなんとも魅力的。
■SS(41mm径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.SW 500)。日本限定100本。36万3000円(11月発売予定)
■その他  耐磁性:DIN8309(4800A/m)/負圧耐性/クロノグラフ(30 分積算計)/デイデイト表示/強化アクリル製風防/ブラックのカウレザーベルトが1本付属

 

文◎佐藤杏輔(編集部)

 

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SINN 公式サイト
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