5万円前後!ビジネスでもしっくり決まる手頃なコンプレダイバー系腕時計3選

 筆者がいる東京のことで恐縮だが、最近は寒暖差こそまだ大きいものの、それでも少しずつ春めいてきて、日によってはコートなしでジャケット1枚でも十分外出できるほどになってきた。

 ということで、そんなこれからの季節、ジャケパンスタイルにもオススメな時計を今回取り上げたいと思う。と言ってもせっかくなのでちょっとだけ個性的なタイプで、しかも比較的に手の届く価格の3モデルをチョイスしてみた。

 さて、取り上げる3モデルに共通するのが、1960年代のコンプレッサーダイバーをモチーフに作られているという点である。

 コンプレッサーダイバーとは、ケースメーカーのEPSA社が1955年に特許を取得したコンプレッサーケースを採用した防水時計のことだ。ケースにかかる水圧を利用して、水深が増すごとに密閉度を高めるというもので、EPSA社はこれをスイスの各時計メーカーに供給。当時、ロレックスやオメガなどごく限られたメーカーしか作れなかったダイバーズウオッチを、これのおかげで多くのメーカーが製造可能になったという、当時としては画期的なものだったのである。

コンプレッサーケースを使って1960年代にスイスの時計メーカーから販売された当時のダイバーズウオッチ。ブランド名は右から、ハミルトン、ウイットナー、エニカである。ほかにジャガー・ルクルトやロンジンからも販売されている

 そして、コンプレッサーダイバーにはある共通した構造上の特徴がある。それは経過時間を測定するために必要不可欠な目盛り付き回転ベゼルが、外側でなく風防ガラスの内側に装備されている。そして、それを操作するためのボタンがケースサイドの2時位置に設けられ、時刻調整のためのリューズ(4時位置のボタン)と必ず二つ備えている点である。

 通常のダイバーズウオッチのように、アウターベゼルに目盛りがあると視覚的に目立つためダイバーズウオッチ然としてしまうが、風防の内側のためそれほど目立たない。そのため無骨な雰囲気がかなり薄れるため、さすがにスーツスタイルにはオススメしないが、ジャケパンスタイルであれば、ビジネスシーンでも十分いい感じで決まるのである。

 さて今回は、このコンプレッサーダイバーをモチーフにしたモデルとして、手前味噌ながら、筆者のプロデュースするオリジナルブランドの中からコンプレダイバー1960を、フランスのブランド、リップからノーティックスキーを、そしてイタリアのブランド、スピニカーからブラットナーを紹介する。

 暖かくなるにつれ、時計も露出する機会も増えるこれからの季節、ファッションのちょっとしたアイコンとしてコンプレダイバーを着けてみてはいかがだろう。

アウトライン|コンプレダイバー1960

Ref.YK18001-1(黒)、Ref.YK18001-2(ネイビー)。SS(40mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.MIYOTA9015)。4万9500円(各150本限定)

 アウトラインは、1940〜60年代に作られたアンティークウオッチの雰囲気を大切にしながら、大人でも楽しめる5万円以内の時計をコンセプトに、筆者自らが2019年1月に立ち上げたブランドである。

 その記念すべき第1弾がこのコンプレダイバー1960だ。時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」では目標額503%を達成するなど、時計好きの間からも評価を得た。

 自動巻きムーヴメントにはシチズン傘下であるミヨタ社の最上位機、Cal.9015を搭載。デザインはあくまでも1960年代らしい、クラシカルで落ち着いた雰囲気にこだわり、日本製として品質管理を徹底するために、すべて日本で組み立てられている点もポイントである。

現在は以下の専用サイトのみで販売
タイムギア ONLINE SHOP
タイムギア ONLINE SHOP Yahooショップ店

リップ|ノーティックスキー

Ref.LP671504。SS(38mm径)。20気圧防水。自動巻き(MIYOTA製)。8万1400円

 1968年にフランスのグルノーブルで開催された冬季オリンピックに合わせて発売されたノーティックスキーは、フランス時計で初めて機械式時計ながら当時において200m防水を実現した歴史的なダイバーズモデルである。

 特徴的なインナー回転ベゼルには、フランス国旗であるブルー、ホワイト、レッドをさりげなくあしらわれている。そしてこのモデルは、伝説のヨットマン、エリック・タバリーが世界航海中に着用したともいわれているモデルだ。

 ケースは38mm径とインナーベゼルを装備しながらも細身の日本人にも程よいサイズ感なのも特徴のひとつ。さらには、傷が付きにくいドーム型のサファイアクリスタル風防を採用し、18気圧と高い防水能力を備えている。

協力◎DKSHジャパン、TEL.03-5441-4515

スピニカー|ブラドッナー

(左)Ref. SP-5062-05(右)Ref. SP-5062-02。ともにSS(42mm径)。18気圧防水。自動巻き(Cal.SEIKO NH35)。各3万5200円

 セーリングやダイビングなどの“海のスポーツに関わる人々の腕時計”をコンセプトに2014年に誕生し、19年秋から日本での展開が始まったばかりというイタリアンブランドである。

 そんな同社を代表するモデルが、1960年代のコンプレッサーダイバーへのオマージュとして、そのスタイルを踏襲した“ブラッドナー”だ。

 機械式モデルでありながらも3万円台という手頃な価格を実現。それでいて18気圧の高い防水性能だけでなく、ドーム型のクラシカルな風防にはサファイアクリスタルが使われている。そして実はありそうでなかったウォータープルーフ加工の特殊なレザーストラップを備えているところも見逃せない。

協力◎ウエニ貿易、TEL.03-5815-3277

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。