【WLN女子部発】女性のために生まれたブレゲのマリーンコレクションには魅力がいっぱい

 女性編集者がレディースウオッチを実際に見て、感想を交えて紹介する本企画。今回は大海原にインスピレーションを得たBreguet(ブレゲ)の“マリーン”から、2019に初めてコレクションに加わったレディースモデルを紹介します。

【モデル紹介】

マリーンとは?
 今回紹介する“マリーン”は、アブラアン-ルイ・ブレゲが開発に努めたマリン・クロノメーター(航海用精密時計)からヒントを得たコレクションです。

 マリン・クロノメーターとは、船の往来が活発になった大航海時代より、航海の際に経度を測る高精度の時計が必要となり開発されたもの。
 そんなマリン・クロノメーターから着想を得て1990年に発表されたのが、5気圧防水を備えたスポーツウオッチライン“マリーン”です。ギョーシェ彫りやブレゲ針、ケース側面に施されたコインエッジなど創業者ブレゲが発案した意匠を盛り込みながら、ラグジュアリーかつスポーティなモデルへと仕上げられています。

 2017年には現代的なデザインが取り入れられ、コレクションが再編。このとき、新たに採用されたのが、本作でも用いられているウェーブ模様のモチーフを挟んだデザインのリューズや、船舶同士の通信の際に用いる国際信号旗の“B”のイニシャルをあしらった秒針です。

<本モデルでも採用されているウェーブ模様のリューズ。まるで船のスクリューのようにも見える>

 伝統とスポーティーな雰囲気が見事に調和した高いデザイン性により、これまで多くの男性時計ファンから支持を得てきたマリーン。そんなマリーンコレクションに2019年、初めてレディースモデルが加わりました。
 マリン・クロノメーターにちなんだ“海”をモチーフにしたデザインが随所に盛り込まれており、可愛いマリンテイストに仕上げられています。

 発表されたコレクションは大きく2種類。ベゼルにダイヤモンドを施したものと、フラットなタイプ、またそのなかでも文字盤の素材や加工の違い、そしてケースの違いを含めると全部で6種類に分類することができます。以下に表を作ったので、参考にどうぞ。

※MOP=マザーオブパール(真珠を作る母貝を文字盤として採用したもの)

 上の表の通り、文字盤にギョーシェ彫りが施されているのは、K18WG、K18RGケースのモデルのみ。この6モデルすべてにラバーベルト、レザーベルトの2タイプが用意されており、ベルトの違いを含めると全部で12モデルがリリースされています。

<文字盤にフラットなホワイトMOPを用いたモデル>

 これまでマリーンのメンズラインにも取り入れられていなかったデザインがいくつか採用されている本作。今回はその新しい意匠に焦点をあてるために、ギョーシェ文字盤モデルをピックアップしました。

ブレゲ初搭載! 海から着想を得た可愛い三つのデザイン

 初めて採用されたディテールは、どれも海からインスピレーションを得たもの。どれも海を感じる魅力的なデザインとなっており、ひとつずつ紹介していきます。

1.波打ち際を表現したギョーシェ彫り“marea(マレア)”
 ブレゲは本作とともに、新しいギョーシェ模様を発表。それが“marea(マレア)”と名付けられたギョーシェ模様です。海から浜辺に打ち寄せる際の、自然な波の動きを思わせるこのモチーフ。直線的なデザインが多いクラシックなギョーシェ彫りと対照的な、曲線美が魅力です。

 ギョーシェ彫りは、旋盤を用いて文字盤に模様を施したもので、現在もブランドを問わず多くの時計に採用されているが、先にも述べたようにこれも創業者アブラアン-ルイ・ブレゲにより生み出された装飾技法です。

 ブレゲでは1800年代製のギョーシェマシンを、改良を重ねながら現在も使用。それを職人が手動で回しながら、一つひとつ手間をかけて模様を施しています。こうした伝統的な製法を採りながら、技術の継承にも務めているのです。

 ブレゲではギョーシェマシンを約30台も自社工房で所有しており、ギョーシェ彫り専門の職人も多く在籍。古典的なパターンだけでなく、新しい模様も、職人の発想で生み出されています。本作の“マレア”も、現場の職人たちにより新しく発案された模様です。

2.ブレゲ初採用のラッカー仕上げ文字盤
 深みのあるマーブル模様が特徴的なラッカー仕上げ。こちらも今回マリーンに初めて採用された意匠であり、非常に手間をかけて作られています。

 まず最初に文字盤の上に深いブルーの塗料と透明色のラッカーをのせ、それを手作業で混ぜて乾燥。この塗料をのせては乾かすという作業を15回ほど、手作業で繰り返しているのです。

 手作業で仕上げているため、同じ色合いのものが二つとありません。今回使用されたのはブルーカラーの塗料ですが、濃い青や鮮やかな水色など、様々な色が複雑なカラーが混ざり合った、美しい文字盤でした。

 新たにモダンな仕様であるラッカー仕上げを採用した本モデル。ブレゲといえば、ギョーシェ彫りというイメージが強かったのですが、“文字盤を美しく見せる”という発想の根底には共通するものがうかがえます。ブレゲの新境地が感じられる、美しい意匠です。

3.海藻を表現したラバーベルト
 上記で紹介した12モデルすべては、ベルトの素材をラバーとレザーのうちどちらかを選べるようになっています。このうちのラバーベルトに、今回新しく用いられたデザインが写真のものです。

 実はこれ、海藻をモチーフにしたデザインなのです。潮流にそって海藻がゆらゆらと重なり合う様子が浮かんでくるよう。
 このように些細なディテールにも、海をモチーフにしたデザインが取り入れられているのも、遊び心があっておもしろみを感じます。

【装着感は?】

 ケースとベルトをつなぐため、一般的な時計ではバネ棒を用いるのですが、ブレゲではほぼすべてのモデルに、両端をねじで固定するバーを採用しています。バーに丸みのある滑らかな加工が施されているので、手首に当たる感覚がとても滑らか。

 さらに本作ではバーがラグと一体に成形されており、ケースとベルトの間が短く、ベルトが手首にフィット。着け心地も良好でした。

【推しのポイント】

ローターに施されたギョーシェ彫り
 先ほどモデル紹介のところで説明した、マレア模様のギョーシェ彫り。実は12モデルすべてのモデルのローターにこの加工が採用されており、どのモデルを選んでもマレア模様が楽しむことができるのです。

 このマレア模様がローターにも施されているところが、筆者のお気に入りポイント。なぜならば、ローターを軽く揺らしてみると、波が揺れ動いているようにも見えるから。あえて動きのあるローターにもこのマレア模様を施したところに、ブレゲの遊び心を感じます。

 伝統的なデザインを踏襲しながら、職人ならではの発想によりアレンジが加えられた本モデル。これからも新しいデザインが出てくるのが楽しみです。

Ref.9518BR/52/584/D000。K18RG(33.8mm径)。自動巻き(Cal.591A)。5気圧防水。414万7000円

Ref.9517ST/E2/584。SS(33.8mm径)。自動巻き(Cal.591A)。5気圧防水。210万1000円

文◎佐波優紀(編集部)

【問い合わせ先】

ブレゲ ブティック銀座
TEL:03-6254-7211
ブレゲ 公式サイト
https://www.breguet.com/jp