【2021年新作時計】リシャール・ミル|ハニカムモチーフが印象的なトゥールビヨンウオッチ

 “時計のF1”というコンセプトを掲げ、複雑機構を搭載する技術力や革新的なデザインなど、トータルでトップを目指す“RICHARD MILLE(リシャール・ミル)”。

 2001年に最初の作品(RM 001 トゥールビヨン)が発表された当時は、人間工学に基づくトノー形のケースに、特徴的なトルクネジを配置したデザインで時計業界に衝撃を与え、大きな話題を呼んだ。

 技術やコストに一切の妥協を許さず、億越えモデルまで製造するなど、現在は超高級時計メーカーを代表する存在である。そんなリシャール・ミルが手がけた、2021年新作モデルは、航空工学の世界からインスピレーションを得て製作された。

 新作の“RM 21-01 トゥールビヨン エアロダイン”は、5Nレッドゴールド素材を使用した新しいケースデザインを採用。ベゼルの外側に採用されたカーボンTPT素材は、鎧のように5Nレッドゴールドのケースを保護し、20本のスプラインネジによってしっかりと固定されている。

 カーボンTPTの印象的な縞模様の仕上がりは、厚さわずか30ミクロン以下の繊維層に黒い樹脂を染み込ませてから、特殊な機械で各層の繊維の方向を45度ずらしながら織り込み、高圧窯で120度に加熱したあと、ミクロン単位で機械加工を施すことで生まれる。

 同じくカーボンTPTを使用した地板には、航空工学のコンセプトを表現したハニカムパターンを採用している。そこにブランド初となるブルーPVDコーティングを施したHAYNES(ヘインズ)214合金を組み合わせた。

 この合金は、ニッケル基合金、コバルト基合金などの高機能合金のリーディングカンパニーであるヘインズ社が、温度が955度以上の環境で使用することを想定し作り出した、ニッケル-クロミウム-アルミニウム-鉄合金である。

 高温耐酸化性に優れた同素材は、特殊な方法での成型や組み立てを必要としないが、特に燃焼室で使用されている。この地板には剛性、極めて低い熱膨張率、そして優れたねじれ抵抗が装備されているのだ。

 11時位置にはおよそ70時間を誇るパワーリザーブのインジケーター、1時位置には主ゼンマイのテンションが確認できるトルクインジケーターを配置。4時位置に配されたW、N、Hのファンクションセレクターは、リューズトップにあるプッシュボタンで切り替えを行う。このプッシュボタンを押すことで巻き上げ(W)、ニュートラル(N)、時刻合わせ(H)に選択が可能だ。

 4方向に伸びたアームによって支えられたゴールドの円形基盤で、香箱とトゥールビヨンを保持し、地板のるつぼ型の中央部にセット。回転運動するパーツに機械特性を与えることで、トゥールビヨンの美しさを存分に引き出している。

 ムーヴメントのブリッジの素材にはチタン90%、アルミニウム6%、バナジウム4%で構成された、生体適合性をもつグレード5チタンを採用。同素材は航空宇宙産業でも使用されており、優れた剛性と耐食性を備えている。

 5NレッドゴールドPVDコーティングによる仕上げでケースのコントラストを引き立てたこのキャリバーは、航空工学的な機構の個性をはっきりと表現している。

 ムーヴメントのパーツに施された、手作業による精緻な仕上げ(面取り、ポリッシュ仕上げ、艶出し)、そして、テクニカルで革新的な素材と重力の影響を相殺するために組み込まれたトゥールビヨンなど、リシャール・ミルの時計に不可欠な特性がすべて揃った新たなエクストリームウオッチが誕生した。

 

RICHARD MILLE(リシャール・ミル)
RM 21-01 トゥールビヨン エアロダイン

■Ref.RM 21-01。5NRG×カーボンTPT(42.68×50.12mmサイズ)。50m防水。手巻き(Cal.RM21-01)。世界限定50本。税込み9955万円

 

文◎松本由紀(編集部)

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