セイコーインスツルのメカクォーツ搭載、スイス発の独立系ブランド“ファーラン・マリ”に注目

》古典的クロノグラフの意匠とメカクォーツを融合

 FURLAN MARRI(ファーラン・マリ)は時計作りに情熱を持つ、親友2人により2019年に設立されたスイスのレマン湖南端、ジュネーブにある日本未上陸の独立系時計ブランドだ。 ブランド名は、2人の創業者の名字から取られている。

 ファーラン・マリの共同設立者でリードデザイナーであるアンドレア・ファーランは幼少期からヴィンテージ製品や時計に好奇心を持っており、祖父の時計キャビネットを探検したことから始まった。 このキャビネットの中には古い工具や懐中時計の部品、有名スイス時計発祥の地として知られるル・ブラッシュやヴァレ・ドゥ・ジュー(ジュー渓谷)のサプライヤーからの手紙などが入っていた。さらに祖父が残した1本の時計に感動し、全ての時計には語り継がれるストーリーがあることを実感したそうだ。

 工業デザイナーとしてキャリアを積んだファーランは、ショパール、ウブロ、サーカー、HD3コンプリケーションといった名だたるブランドに在籍した経験がある。 ファーランはドミニク・ルノーと共同で複雑機構の時計“DR01 Twelve First”のデザインも手がけている。


 共同創業者のハマド・アル・マリはビジネスマネジメントの経験を持つアーティストでもある。彼が14歳の時、父親からオメガのシーマスターをプレゼントされたことがきっかけで時計コレクターになる。 時計への情熱はオークションに出品されているヴィンテージウォッチを探し出し、いつの日か自分のものにすることを夢見る。

 彼はフィリップスやクリスティーズなどのオークションなどで得た、時計に関する知識を活かして、ファーラン・マリのブランドビジョンや製品の方向性の決定に貢献している。


 創業者二人が幼少期に経験した時計との出会いがブランドビジョンを構築に大きな影響を与えており、デザインはスイス・ジュネーブにあるデザインスタジオで、部品は香港や日本で調達。時計のデザインについては、1930年代〜1940年代のアンティークウオッチ、特にパテック フィリップのRef.1463からインスピレーション得ているとのことだ。ムーヴメントはセイコーインスツル製のメカクオーツ・ムーヴメントを採用。機械式モジュールとクォーツ電池の精度が融合したムーヴメントであり、機械式クロノグラフのような操作感と針の動き、インダイアルのレイアウトを、手頃な価格で楽しむことができる。


 時計のケースに関してもこだわりが細部に見られ、ケース、裏ブタ、ベゼルは別個に成形。パーツごとに研磨を施すなど、技巧を凝らして手抜きのない丁寧な作り込みが採用されている。 10角形の裏ブタは前段に述べたパテック フィリップのRef.1463のケースバックのデザインにインスパイアされたものである。


FURLAN MARRI(ファーラン・マリ)
メカクォーツ・クロノグラフ-Mr.グレー


 ファーストコレクションとなるメカクォーツ・クロノグラフは、直径38mm、厚さ11.3mmの316Lステンレススチールケースと風防はドーム形サファイアクリスタル風防を採用。 ムーヴメントはセイコーインスツル製のメカクオーツ、Cal.VK64を搭載。 全5種類のダイアルカラーで” Mr. Grey “は、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)のチャレンジ部門にノミネートされた。


Mr. Grey
Ref.1041-A


Tasti Tondi
Ref.1011-A


Laccato Nero
Ref.1022-A


Havana Salmon
Ref.1031-A


Farro
Ref.1022-B

 販売価格はいずれも約5万7000円で、全5色のラインナップを展開しているが、残念ながら2021年10月時点で全色完売となっている。現在、2021年から23年にリリース予定の5つのウォッチストーリーに取り組んでいる模様で、個人的に数年先のストーリーとコレクションとても待ち遠しい。


》FURLAN MARRI(ファーラン・マリ)公式サイト
https://furlanmarri.com


文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。

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