【70年代の思い出がプレイバック】懐かしの8トラックとリンクする、私的な“OMEGA(オメガ)”コレクション2選

 現在では、サブスクで音楽をダウンロードして聴くことが主流となっているが、少し時代を遡ると、カセットテープやレコードで音楽を聴くのが当たり前の時代があった。カセットテープは、レコードと違って手軽に持ち運ぶことができて、どこでも音楽を楽しめるのが大きな魅力だったが、そんなカセットテープが人気を博したのと同年代に、欧米で同じように人気だったのが“8(エイト)トラック”という音楽再生装置だ。

》レトロなデザインがマニア心をくすぐる“8トラックプレーヤー”とは?


 1960年代半ばから1970年代後半まで、音楽を楽しむためのメディアとして人気を博していた。“8トラックプレーヤー”は持ち運びができるだけでなく、カートリッジを家と車の間で共有することもできた。音質面ではカセットテープに劣るが、その反面でデザイン面では優れていたのも魅力で、アンティークの時計と同じように、コレクターズアイテムとして、マニアックな人気を博しているのだ。今回は私が個人所有する“8トラックプレーヤー”と共に、同年代に製造されたアンティークウオッチを独断と偏見で紹介する。

 “8トラックプレーヤー”は1960年代の前半にアメリカのビジネスジェットメーカーである、リア・ジェットのウィリアム・リアが中心となり、アンペックス・マグネティック、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、モトローラ、RCAビクター・レコードなどの複数企業の共同で発明されたとされている。

 当初は、米国で急成長していた自動車市場向けにダッシュボードを使った音楽システムとして販売され、フォード・モーターが66年に発売された全車種に、“8トラックプレーヤー”がオプションとして提供させたと言われている。これを皮切りに8トラックは一気に普及することになり、60年代後半にはレコードに匹敵する売り上げを記録した。

 “8トラック”は便利なだけでなく、耐久性にも優れており、アメリカだけでなく、カナダやイギリスでも人気があったが、販売ピークは67年から75年の短い期間であった。

 “8トラック”が衰退したのはオーディオカセットが普及したことが要因のひとつと考えされる。カセットテープはサイズが小さく、家庭での音楽録音を容易にしてくれた。70年代半ばになると8トラックを製造していた大手メーカーは市場から撤退。時代とともに消滅した “8トラック”ではあるが、個性的なデザインのプレイヤーやテープは、時代を経ても根強い人気を獲得しており、収集を楽しむ人たちに支持されている。



OMEGA(オメガ)
コンステレーション(Ref.168.010):1966年製
 小振りな35mmのサイズ感が魅力的なコンステレーション。内部にはオメガの自動巻きムーヴメント、キャリバー565を搭載。 ブラックの文字盤にシルバーの針、立体的なインデックス、日付窓のボックスが映えている。 ケースは丸みを帯び、ドーム型のアクリル風防がその美しさを引き立てている。


Panasonic(パナソニック)
RQ-830S Dynamite – Blue:1975年発売
 時計と一緒に撮影したのは、パナソニックの“RQ-830S Dynamite – Blue”。コンパクトなカセットの幅ギリギリで設計されたコンパクトなサイズ感と、ブルーのボディに映えるスピーカー(上部の丸窓で曲数を表示している)、そしてボディに対して極端に大きい上部のプッシュボタン(曲の早送りを行う)のコンビネーションが 何とも言えない魅力を感じさせる。



OMEGA(オメガ)
ダイナミック オートマチック(Ref.165.039): 1968年製
 ケースサイズは41mm。内部にはオメガの手巻きムーヴメント、オメガ キャリバー601を搭載している。絶妙なケースシェイプ、シルバーとブラウンを組み合わせた文字盤、ホワイトの時分針(中央に向かってブラックのタッチがある)、オレンジの秒針を備え、メリハリの利いたデザインが70年代ならではのレトロ感を醸し出している。


Panasonic(パナソニック)
RS-833S Swiss Cheese – White:1976年発売
 時計と合わせて撮影したのはパナソニックの“RS-833S Swiss Cheese – White”。ボディに二つのスピーカーを備えたステレオ仕様のプレーヤーで、その名前の通り、スイスの名産品であるチーズを彷彿とさせるユニークなボディデザインがマニア心をくすぐる。70年代らしい個性的でレトロなデザインは、オメガのダイナミック オートマチックとも共通するデザインの雰囲気を感じさせている。


文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。

https://www.instagram.com/spherebranding/