チューダーなど、古典的な味わいをグッと深める“くさび形インデックス”の魅力とは!

 時刻を読み取るために時計の文字盤上に12個配置されたアラビア数字などの目盛りのことを一般的には “インデックス”と呼ぶ。また“時字(トキジ)”や “アワーマーカー”とも呼ばれる。

 インデックスは、オーソドックスな1から12までのアラビア数字以外にも、ローマ数字やドット、そして棒状のバーなど代表的なものがいくつかあり、時分針の形状とともに視認性だけでなく、腕時計の個性を引き立てるデザイン的な要素としてもとても重要な意味をもつ。

すべてくさび形のものと写真のようにアラビア数字を組み合わせて判読性を高めたものもある。右はロレックスのオイスターパーペチュアル、左はゼニスのクロノメーターモデル

 そこで今回は、インデックスとして代表的なものの中から“くさび(楔)形インデックス”と呼ばれるものを取り上げたいと思う。“楔”は木材や金属で作られたV字形あるいは三角形をした道具である。つまり、くさび形インデックスについて大雑把に言うと先端に向かって徐々に尖っていく形状にデザインされたものについてこう呼ぶ。その中で形が三角形のタイプはトライアングルとも呼ばれる。

 このくさび形インデックスだが、近年はこれを採用している時計をほとんど見なくなった。おそらくは形が個性的だからなのだろう。くさび形インデックスは1950年代から60年代にとてもよく使われておりアンティークウオッチで目にすることが多い。どちらかというと古典的なイメージのほうが強い。そのためどんな雰囲気にも合うわけではなく、加えてそれに合わせる時分針のデザインもある程度限定される。近年あまり採用されない理由のひとつにはこんな背景もあるのかもしれない。

この写真はロレックスのオイスターデイトだ。右写真二つの個体は白文字盤が1950年代で黒が60年代。一方の左は黒が60年代で白が80年代。黒文字盤タイプは二つとも同じ60年代のRef.6694だが、インデックスが違うだけでこんなに雰囲気が違う。これがアンティークウオッチのおもしろさである

 さて、このくさび形インデックスは、特に当時のロレックスやチュードル(現チューダー)のオイスター系ベーシックモデルに多く採用されていて、しかも様々なスタイルのくさび形が存在するためなかなか面白い。

 上に掲載した写真の四つの個体はすべてロレックスの手巻きオイスターデイトである。右から1950年代、60年代(黒文字盤二つとも)、そして80年代である。中央の黒文字盤二つを見比べるとわかるが、左側のバーインデックスは形こそ違えど現代も普通に使われているため見慣れているせいもあるのだろう、同じ年代でもくさび形インデックスを使った中央右の個体のほうが、より古典的なイメージが強くなり歴史的な趣がより深く感じられる。

 このように、もちろんインデックスだけでなく時分針のデザインも含めて、これらをいろいろ注意深く見ていくと、特にアンティークウオッチの場合については個性的なものも多く、しかも時代時代の特色が感じられたりするため、また違った意味でいろいろと楽しめるというわけである。

【写真】他の“くさび形インデックス”の時計をチェック!

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!