
タグ・ホヤーが2025年からF1の公式タイムキーパーを務めることを記念して復活させた「フォーミュラー 1 ソーラーグラフ」。写真は10月に発売するリミテッドエディション
クォーツ式でありながら電池交換が不要ということからあっという間に普及したソーラー時計。それを世界で初めて販売したのはどこかご存じだろうか。アメリカのラーゲンセミコンダクターという会社で、同社が1972年に発売した“シンクロナー2100”というLEDウオッチが初のソーラー腕時計となる。
本体上部表面に複数枚のソーラーセルを備え、6時位置側のケース側面に設けられた小窓に時刻をLEDでしかもデジタル表示するというものだった。ソーラー腕時計というと日本市場で広く普及しているため、日本かと思いきや実はアメリカだったのだ。
しかしながら、デジタル式ではなく時分針を備えた一般的なアナログ式を世界に先駆けて商品化したのは日本。76年9月にシチズンが発売したアナログ式太陽電池腕時計“クリストロン ソーラーセル(3ページに写真掲載)”である。文字盤に単結晶シリコン太陽電池(ソーラーセル)を8枚配置し、銀電池を二次電池(バッテリー)としてそこに蓄電する方式が採用された。ちなみに69年にクォーツ式腕時計を世界に先駆けて市販化したセイコーがソーラー腕時計を発売したのはその1年後の77年だった。
そんなソーラー腕時計が一般化したのは1990年代以降だろうか。ソーラー発電素子の変換効率が向上したうえに構造がシンプルであることからコストダウンと量産化が可能となり安価に。加えて90年代半ばになると電波時計の登場によりソーラー電波時計として、その便利さから普及が加速していった。
そして2000年代になると、太陽電池技術がさらに向上し、発電効率はもちろんソーラーセル(パネル)自体の小型化も加速した。それによって文字盤部分のデザイン的制約がかなり少なくなったことに加えて、文字盤に金属を使えないがゆえの様々な試行錯誤の結果、いまや見た目にも一般的な腕時計とほとんど変わらなくなったことも要因のひとつといえるだろう。
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