ニューヨークの世界的な金融機関「モルガン・スタンレー」とスイス時計界のコンサルティング会社「LuxeConsult」が、毎年のように調査・公表しているスイス時計業界の推定収益についてトップ50社の2024年版最新調査レポートを今年も去る2月に共同で発表した。
すでにご存じの方も多いかもしれないが、あらためてその結果を2023年とともに振り返ってみたいと思う。そして、以下は今回発表された調査結果50社のうちのトップ10の銘柄と推定売上高だけを抜き出したものである。
【2024年推定売り上げトップ10企業(カッコ内はシェア率)】
1、ROLEX 105.8億スイスフラン(32.1%)
2、CARTIER 31.8億スイスフラン(8.0%)
3、OMEGA 23.9億スイスフラン(7.0%)
4、AUDEMARS PIGUET 23.8億スイスフラン(5.2%)
5、PATEK PHILIPPE 23億スイスフラン(6.5%)
6、RICHERD MILLE 15.5億スイスフラン(3.2%)
7、LONGINES 11.2億スイスフラン(3.8%)
8、VACHERON CONSTANTIN 9.4億スイスフラン(2.5%)
9、BREITLING 8.5億スイスフラン(2.4%)
10、TISSOT 7.6億スイスフラン(2.5%)
OTHERS(26.8%)
出典(LuxeConsult, Morgan Stanley Research)
【2023年推定売り上げトップ10企業(カッコ内はシェア率)】
1、ROLEX 101億スイスフラン(30.3%)
2、CARTER 31億スイスフラン(7.5%)
3、OMEGA 26億スイスフラン(7.5%)
4、AUDEMARS PIGUET 23.5億スイスフラン(4.9%)
5、PATEK PHILIPPE 20.5億スイスフラン(5.6%)
6、RICHARD MILLE 15.4億スイスフラン(3.1%)
7、LONGINES 11.1億スイスフラン(3.4%)
8、VACHERON CONSTANTIN 10.9億スイスフラン(2.7%)
9、BREITLING 8.7億スイスフラン(2.4%)
10、TISSOT 8.2億スイスフラン(2.5%)
OTHERS (30.1%)
出典(LuxeConsult, Morgan Stanley Research)
ご覧のように1位はロレックス。あくまでも推定売上高とはいえ、2位のカルティエとは70億スイスフラン以上もの開きがある。頭ではわかっていてもこうやって数字で比較してみると、あらためてロレックスの突出さに驚かされてしまう。
さて、コロナ禍でも好調に輸出を伸ばしていたスイス時計産業だったが、2024年はラグジュアリー疲れなど消費行動の変化や中国経済が失速した影響もあって輸出全体としては対前年マイナスと低調に終わっている。しかしながら今回の調査結果からトップ10の数字だけを見ると6社については逆に売上げを伸ばしていることがわかる。ただ、これには量というよりも平均価格の上昇が関係していると言われる。
加えて、シェア率で見るとOTHERS(11〜50位の合計)が23年は30.1%だったのに対して24年は26.8%と大幅に減っている。つまりほんのひと握りのブランドを除いては、実態は全体の数字以上に厳しく、二極化がより鮮明になったといえるだろう。
そこに追い討ちをかけたのが、いわゆるトランプ関税である。今後どうなるかはわからないが、スイス時計界にとってアメリカは最大の市場だけに状況は深刻だ。