アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
シチズン
スーパーデラックス
1958年の発売当時、“日本一の薄型”をうたっていたシチズン デラックスは、同年3月の発売から2年ほどで100万個を販売するほどの大ヒット商品にまで上り詰めていた。当時の腕時計メーカーの間ではユーザーのニーズに応えるべく、薄さと精度の高さを追求し、様々な商品が開発されていったのだ。

【写真の時計】SS(37mm径)。手巻き(Cal.9202)。1960年代製。5万5000円。取り扱い店/BQ
当時、第二精工舎が展開していた薄型中3針のクロノスを上回る薄さを実現したシチズンデラックスは、後に精度や耐久性を向上させた上位版も発売された。それこそが今回紹介するスーパーデラックスだ。
発売当初は23石、3姿勢での精度調整が施されていたが、後に25石、5姿勢調整の仕様へと変更され、特別な精度調整が施された高級品であった。直訳すると“非常に贅沢”という、現代の感覚からすると安直なネーミングにも思えるが、製品自体はその名に恥じぬ、上質な仕上がりであった。
また、消費者にこのモデルの特別さをアピールするのにはうってつけのワードチョイスだったのだろう。そんな特別調整品には、高精度の証として文字盤に3ツ星がプリントされている。さらに、ブランドロゴには立体的な植字が採用されている点からも、高級機としての威厳を感じられる。
デラックスの設計は従来のムーヴメントとはまったく異なるものであり、本中3針と呼ばれていたセイコーのマーベルやクラウンと比較すると、分針が取り付けられる2番車が中心からオフセットされ、秒針は3番車から動力を受け取る、秒カナ式(秒針が直接的に動力を伝達しない、ピニオンを使用した方式)が採用された革新的な設計であった。
この設計は歯車のスペース効率を高め、地板を無理に薄くすることなくムーヴメント全体の薄型化を実現したものであり、後に登場する薄型手巻きの“エース”にも受け継がれている。また、軸受けの潤滑油の保油性を高める“プロフィックス”や耐震装置のパラショック、切れにくいゼンマイのフィノックスを採用することで、精度だけでなく耐久性も優れたムーヴメントであったのだ。
さらに当時の高級機としては珍しく、ステンレススチールケースのバリエーションも展開しており、今日の使用においてもメッキ剥がれの心配は少ないだろう。しかし、防水性能を備えていないため、高温多湿や水気には要注意だ。
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文◎LowBEAT編集部