林家 正藏 -男の肖像時計の選択(パワーウオッチVol.30)

真打ち昇進の翌年に購入したジャガー・ルクルト。ピンクゴールド、シンプルな白文字盤、黒のレザーベルトで端正な印象。和装にもすっきりとマッチする

 

昨年、落語界の大名跡を襲名し、古典落語にひたむきに取り組んでいる9代目林家正蔵師匠。正統派落語家の道を着実に歩む師匠は、時計や装飾品に関しても落語界のしきたりを気にかけてきた。

「そもそも噺家はお客様相手の商売ですから、お客様よりも良い物を身に着けていては失礼にあたるということで、あまり高価な時計を着けていてはいけないという意見が多いんです。それは裏を返すと『旦那、良い時計ですね』『そうかい? じゃあ、おまえにあげようか』なんていうチャンスが生まれるかもしれないってことでもあるんですけどね。私もその噺家のしきたりに習って、装飾品や時計は持つまいとずっと思っていました」


私もその噺家のしきたりに習って、装飾品や時計は持つまいとずっと思っていました

しかし、何よりも粋を大事にする落語家稼業。ましてや趣味人としても知られる正蔵師匠となれば、時計に無関心ということはない。それは父である故・林家三平師匠の影響も少なからずあるようだ。

「そうはいっても時計好きの噺家って多いですね(笑)。高座に上がるときは外している方が多いですが、普段は高級な時計を着けている方も多いです。うちの父親もかなりの時計好きでした。オメガの時計をいつも愛用していて、病室でも亡くなるまで時計を着けていましたからね」


品が良くてあまりギラギラしていない。長く使えて飽きが来ない。
和服を着たときに身に着けていても違和感がないっていうのが選んだポイントです。

全盛期は寄席だけでなく、テレビ出演でも大活躍していた三平師匠だけに、スケジュールは常に分刻みだったようだ。テレビでは「15秒で小咄をお願いします」などと頼まれることも多く、時計は必需品だったのだろう。そして正蔵師匠も、自分の嗅覚で愛用の1本を探し出すことになる。

「真打ちに昇進した次の年に、首相官邸の食事会に招かれたことがあって、私もお招きいただいたんです。その帰り道に銀座の和光さんに寄って、記念として買ったのがこのジャガー・ルクルトの時計なんです。品が良くてあまりギラギラしていない。長く使えて飽きが来ない。和服を着たときに身に着けていても違和感がないっていうのが選んだポイントです。後になって気が付いたら、父のオメガとはまったく正反対のものを選んでいますけど、どこかで父と違ったことをやらなければいけないって気持ちがあったのかもしれないですね。父は小咄や新作で人気を博しましたけど、私は同じことをやっていても絶対に父を超えることはできない。そういう気持ちって、ちょっとした持ち物にも表れるんだと思います」

落語と時計は、こだわりや美学を表現するという部分が非常に似通っている。正蔵師匠の持っている美学も、このジャガー・ルクルトにさりげなく投影されているのだろう。

 

林家 正藏落語家
SHOZO HAYASHIYA 1962年12月1日、東京都生まれ。78年に父・林家三平に弟子入りし、林家こぶ平の高座名で落語の道に入る。88年真打ち昇進。バラエティ番組やドラマにも多く出演し、その親しみやすいキャラクターで幅広い層から人気を得る。2005年に大名跡、林家正蔵を襲名。浅草で行われた襲名パレードには14万人もの群衆を集めた。最近は古典落語にも積極的に挑んでいる。

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