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ブルガリの参入ではじまった熾烈な薄型化競争。それを上回る1.65mm厚の奇想天外な最薄時計とは|菊地吉正の時計考_004

ユニークで革新的な時計を手がけることで知られるロシア人独立時計師のコンスタンチン・チャイキン。2024年9月に1.65mmという驚異的な薄さを実現した機械式時計「ThinKing」のプロトタイプを発表。その最終プロトタイプが去る5月10日・11日に開催されたフィリップスのオークションに出品されて508,000スイスフラン(日本円で約88,773,000円)で落札された。

薄いと言われるドレスウオッチのケース厚は目安として7〜8mmだろうか。ThinKing の1.65mmがいかに薄いかがおわかりいただけるだろう。ちなみにゼンマイの巻き上げや時刻調整に必要なリューズを装備することはこの厚さでは不可能なため、ゼンマイの巻き上げと時刻の調整には、専用のキーを使うか、ほかに用意されている厚さ5.4mmの専用ケース「PalanKing」で行うかの二つの方法から選択できるらしい。

さて、超薄型時計に代表される時計メーカーといえば長年ピアジェだった。そこに割って入ってきたのがブルガリである。2014年に世界最薄となる「オクト フィニッシモ トゥールビヨン マニュアル」で厚さ5mmを発表。18年には3.95mmの「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」を発表するなど、驚いたことにブルガリは毎年のように超薄型モデルを発表している。

対してピアジェはケース厚2mmの「アルティプラノ アルティメート・コンセプト」を18年に発表しブルガリを薄さで一度は上回ったものの、22年発表されたブルガリの「オクト フィニッシモ ウルトラ」は1.8mmを実現してしまった。しかし、それだけでは終わらず同年7月に発表されたリシャール・ミルとフェラーリとのスペシャルモデル「RM UP-01 フェラーリ」はさらに薄い1.75mmという驚異的な数字をたたき出してしまった。つまり高級時計の薄型化競争はいまや100分の1ミリ単位での凌ぎ合いという状況なのだ。

そこに対してコンスタンチン・チャイキンのそれは1.65mmと、リシャール・ミルよりさらに0.1mmも薄くしてしまった。最薄記録と認定されるのかはまだ不明のようだが、そのチャレンジ精神と技術力には脱帽である。

【画像】チェイキンの驚異的な薄さとユニークさを細部の写真でチェック!

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菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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