様々な背景をもつゲストにスポットを当て、時計との思い出や宝物にまつわるストーリーを含めたインタビューを行いながら、それぞれの想いや価値観を紐解いていく新連載、Time Files(タイム ファイル)。
初回はWatch LIFE NEWS編集部の一員であり、当連載の担当者兼インタビュアーを務める、市村(いちむら)をフォーカス。彼の自己紹介も兼ねたデモンストレーション記事という形でお届けする(※インタビュアーは編集長・船平が担当)。

市村 信太郎(Shintaro Ichimura)
音楽・教育業界を経て2023年より編集者としてのキャリアをスタート。当WEBメディア「Watch LIFE NEWS(ウオッチライフニュース)」でも連載記事を担当。時計やメイク、ファッションなどあらゆるものをジェンダーレスに楽しむ。レディース・メンズの垣根を超えた自由なスタイルを体現し、その魅力を発信するべく奮闘中。
●電車好きの幼少期と忘れられない転校体験
「幼少期はとにかく電車が好きで、東海道新幹線の駅を東から西まで全部覚えてよく呪文みたいに唱えていたそうです。乗り物全般好きだったみたいで(いまは全然違うんですけど笑)。でもある意味その凝り性というか、好きなことはとことん追求する姿勢はいまでも同じかもしれません」
福岡県で生まれ、小学生時代には他県への転校・転入を2回経験。仲が良かった友人とお別れするときの寂しさは、いまもしっかり覚えているそう。
「新しい学校に転入して少しずつクラスに馴染んで、親友と呼べるほどの友達ができたころにまた転校が決まって。そのときの寂しさはいまでも覚えています。不可抗力で人間関係がリセットされるやるせなさというか。新しい学校で自己紹介するときのあの異様に期待されて注目される感じとかも、わりと内気な私にはなかなかハードでした(笑)。でも転校・転入体験を通して得られたものも大きいですし、いまではすべて良い経験だったと思っています」

幼少期(左)と中学生時代(右)
●“陸上漬け”の中高時代
現在は東京住みだが、小学4年生から大学卒業までの12年間を過ごした地元・福岡は特に思い入れが深いそう。
「中学生のときに当時何気なく入った陸上部(長距離)が、全国大会常連の超強豪で。男子は全員坊主ですからね、陸上部なのに(笑)。当然、練習や規則もハンパなく厳しくて何度投げ出したいと思ったことか。それでも辞めずに頑張れたことで、心身ともにだいぶ鍛えられました。体力がついたこと以上に、ちょっとやそっとのことじゃキツい・辛いと思わなくなった精神力や粘り強さが得られたことが大きな財産です」
そんな日々を思い出させてくれる宝物が、バンドは片方外れ、液晶表示にはヒビが入って動かない“ボロボロすぎる”ナイキのスポーツウオッチだ。

中高時代の陸上生活を支えてくれたというスポーツウオッチ
「陸上部で頑張るって決めてから祖父に買ってもらった時計です。練習中のラップタイムを測るために欠かせないスポーツウオッチで、毎日着けて走っていました。当時は黒と黄色のものが好きで、なんとなくデザインが気に入って。高校進学後も陸上を続けて、引退するまでのほとんどの時間を一緒に過ごしたと思います。それだけに、この時計との思い出は本当に深くて」
高校3年生の夏、引退前の最後の大会では、長崎県に住んでいた祖父母がサプライズで福岡まで応援に来てくれたという。
「試合前にお手洗いに行ったら、祖父そっくりの後ろ姿の人がいて。後から本人だったと知ってめちゃめちゃ驚きました(笑)。そんな祖父は2021年に亡くなってしまって。その後部屋の整理をしているときにこの時計が出てきて、いろんな思い出が甦ってきました。とっくに壊れているし、“親子代々受け継ぐ時計”とかそんな代物じゃないですけど、捨てられない宝物です」