ロレックスやオメガ、IWCやロンジンなど、名だたる時計ブランドは、その実用性や信頼性から高い評価を受け、アンティーク愛好家たちの間では現在もなお高値で取引されている。
だがしかし、汎用ムーヴメントの採用や他社との協力開発によって良質な製品を生み出し、手ごろな価格帯で人知れず生き残り続けてきた傑作時計も数多く存在する。そこで今回は、マイナーながらも確かな品質を備えた、隠れた名作シリーズを紹介したい。
モバード
トランスアトランティック Sub-Sea50
今回紹介するのは、1970年代に製造されたモバードのトランスアトランティック Sub-Sea50だ。
かつて、モバードはティファニーなどの有名宝飾店が販売した腕時計の製造を担うほどの実力を備え、堅実で高品質な時計を製造していたブランドだが、60年代に突入すると腕時計の需要が一層高まり、実用品としての量産性が求められるようになった。モバードは自社で優れたムーヴメントの製造を行っていたが、あまりにも高コストで大量生産に向いたものではなかったのだ。そこで同社は、今回紹介するモデルのように、他社製のムーヴメントをベースに製造を行うことで生産性を高めようとしていたと考えられる。

【写真の時計】モバード トランスアトランティック Sub-Sea50。Ref.J13091。SS(35mm径)。手巻き(Cal.347)。1970年代。11万8000円。取り扱い店/WatchTender銀座
本個体はスナップバック式の裏ブタを採用した防水ケースに、手巻き中3針のムーヴメントを搭載した古典的な構成だが、シンプルで無駄のない、洗練されたデザインが魅力的だ。
裏ブタの構造については、同年代の競合他社が防水性に優れるスクリューバックを採用していた点を考えると、やや見劣りする部分かもしれない。しかしその一方で、ケースの薄型化を実現し、装着感に優れたデザインに貢献している点は評価したい。
筋目仕上げのシルバー文字盤やドーフィン針には、目立った腐食や変色は見られず、良好なコンディションを保っている。加えて、純正のライスビーズブレスレットが装着されている点にも注目だ。このブレスレットはしなやかで肌触りも非常に良いので、試着する機会があればぜひ腕に乗せてみてほしい。
ムーヴメントには、ユニバーサル・ジュネーブ社のCal.1105をベースとしたCal.347を搭載。中3針の非常にベーシックな設計で簡素な仕上げながらも、厚みを持たせた受け板や、油だまりを設けた大きな軸受けのルビーなどから素性の良さを感じられる。
シンプルでトラブルの起こりにくい要素で構成された本個体は、アンティークウオッチ初心者にもおすすめできる1本と言えるだろう。玄人向けのイメージを持たれがちなモバードの中でも、使用者を選ばないマイルドなスペックを備えた1本だ。ただし、防水性能については過度な期待は禁物であるため、水気や湿気を避けて使用することを推奨したい。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎WatchTender銀座
