数週にわたりお届けしている「初心者におすすめのアンティーク時計」連載。先週の記事では“ブランド&シリーズ”のおすすめを取り上げたが、今回のテーマはアンティーク選びにおいて最も重要、かつ醍醐味でもある“ムーヴメント(駆動装置)”だ。
アンティーク時計が製造後半世紀以上を経たいまでもきちんと動き続けているのは、当時の手抜きのないムーヴメント設計によるもの。ハイビート化が進み、部品点数を増やして様々なギミックを競い合う現行ムーヴメントに対して、アンティークは大振りで肉厚なパーツをロービート(少ない振動数)でゆっくり動かすという設計思想のため、それだけ壊れにくい。
歯車には歯こぼれしにくい良質な素材を選び、留石も大きなものでがっちり受ける。パーツ表面はきれいに磨いて摩耗の影響を最小限に抑え、金メッキは分厚く施して簡単に剥がれないようにする。こういった基本に忠実で丁寧な部品加工が緻密に施されているのだ。
今回は、ムーヴメントのなかでも不具合が少なく初心者にもおすすめな“手巻きキャリバー”の名機を紹介。ロンジン、セイコー、ロレックス、IWCから四つの傑作キャリバーをピックアップした。
【写真全12枚】アンティーク屈指の“傑作手巻きキャリバー”4選
【「Cal.12.68」/ロンジン】
“非凡な基礎体力を備える、アンティーク界屈指のタフキャリバー”

■製造開始1929年〜。毎時1万8000振動。4.25mm厚。Cal.12L/12.68Z/12.68N/12.68ZS(※アルファベットZはスモールセコンド仕様で、N、ZSはセンターセコンド仕様)
まずはロンジンの名キャリバー、12.68。同機搭載モデルを複数本所有するアンティーク時計ユーザーも故障した記憶がないと話すほどのタフさで、手頃な価格帯の時計にも多く搭載されている。
軍用として採用された実績もあり信頼性も高く、オールドロンジンの代表機のひとつだ。
【写真】アンティークテイスト満載!12.68Z搭載モデルのスモールセコンド
【「Cal.45系」/セイコー】
“国産時計史に名を残す、超高精度の傑作ハイビート機”

■製造開始1968年〜。毎時3万6000振動。3.5mm厚。Cal.4500A/4502A/4520A/4522A/4580(※数字の末尾“2”はデイト表示付き)
調整しだいで精度を日差数秒以内に追い込むことも可能なセイコーの45系キャリバー。市場でも安定的に流通しており、ヒゲゼンマイもすでに製造中止になっているとはいえ出回っているため、メンテナンス面の不安も少ない。
現行顔負けの精度を追求できる、日本が誇る傑作ハイビート機だと言えるだろう。
【「Cal.1200系」/ロレックス】
“現存数も豊富!ロレックスが誇る手巻きのロングセラー”

■製造開始1954年〜。毎時1万8000振動。5.07mm厚。Cal.1210/1215/1200/1220/1225(※数字の末尾“5”はデイト表示付き。1220、1225は毎時1万9800振動)
ロレックス史上最高傑作との呼び声高い自動巻き1500系と同時期の1950年代に誕生し、80年代まで製造されたロングセラー機。基本的にはすべてノンクロノメーター仕様のため相場も自動巻きに比べるとまだ手頃で、40万円前後から購入が狙える。
耐震バネのほか巻き上げヒゲゼンマイが採用されるなど、当時としては高級仕様の本格的な作りにも注目だ。
【写真】ロレックスの名機、1200系ムーヴメントの細部を見る
【「Cal.89」/IWC】
“圧倒的な生産数と高いメンテナンス性!オールドインターの代表機”

■製造開始1946年〜。毎時1万8000振動。4.35mm厚。Cal.88/89(※88はスモールセコンド仕様)
ほとんどのアンティーク店に在庫があり、比較的安価なモデルにも搭載されているオールドインターの名作手巻き。なかには丁寧な仕上げが施された個体もあるため、選ぶ楽しさも味わえる。
故障が起こらないとは言えないが、修理に慣れているショップが多いためメンテナンス面でも安心できる。
次回は同じくムーヴメントから、自動巻きキャリバーの名機を紹介する。
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文◎市村 信太郎

音楽・教育業界を経て編集者に。時計、メイク、ファッションほかレディース・メンズの垣根を超えたジェンダーレスなスタイルを体現し、その魅力を伝えるべく奮闘中。Yahoo!ニュース連載「性別の垣根を超える腕時計」(第1〜3週日曜)。インタビュー取材記事『Time Files』(第4週日曜)。
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