アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ティファニー
ポケットウオッチ by Agassiz watch co
今回紹介するのは1920年代に製造されたティファニーの懐中時計だ。
太字のローマンインデックスが特徴的な文字盤と、鋭く磨かれたブレゲ針のバランスが美しく、洗練された印象を与える。
ティファニーと言えば、現在でも世界五大ジュエラーとして認知されている高級メゾンだが、かつては時計製造の分野でも確かな実力を備えていた。1847年頃から時計の販売を開始し、1870年代頃には短期間であったもののスイスの自社工場で高品質な時計の製造を行っていたのだ。後にこの工場はパテック フィリップに売却され、パテックがティファニー向けのムーヴメント生産を続けていたという歴史も残されている。これが、ティファニーとパテック フィリップのダブルネームが多い理由のひとつでもある。
自社工場を売却した後も、自ら時計製造に携わっていたことのあるティファニーは、ムーヴメントの品質にこだわった時計作りを続けていた。今回紹介する個体も、ロンジンと深い関わりをもつ名門アガシ社がティファニー向けに製造を行った21石、8姿勢調整、スワンネックやウルフトゥースなど、ハイクラスな仕様が満載の最高級ムーヴメントを搭載している。

【写真の時計】ティファニー ポケットウオッチ by Agassiz watch co。K18YG(44.5mm径)。手巻き。1920年代製。69万3000円。取り扱い店/プライベートアイズ
コート・ド・ジュネーブ仕上げの受け板や、繊細な面取り仕上げが施されたネジやアンクル、受け板に埋め込まれた大きく艶やかな穴石など、圧倒的な美しさを誇るムーヴメントがいまなお輝き続けている。また、精度面においてもぬかりない作りが採用されており、バイメタルテンプ、巻き上げヒゲ、スワンネック緩急針などがふんだんに用いられている。
2重裏ブタが特徴的な18金イエローゴールド製のケースは、内ブタにもゴールドを使用しており、表ブタと内ブタに共通の固有番号を刻印、さらにムーヴメントにも共通の固有番号が刻印されている点が特徴だ。このような徹底した製品管理が、ロンジンを思わせるポイントである。
文字盤の"TIFFANY&Co"や"SWITZERLAND"の表記もすべて象嵌(ぞうがん)仕上げとなっており、貴重なパープルスチール針を使用するなど、一つひとつの品物に時間と手間を掛けて製造を行っていた時代のなかでも、他社を圧倒するほどの品質を誇る貴重なポケットウオッチだ。
1920年代当時、一般的な懐中時計すらも手に入れることが困難な高級品であっただけに、このような高級品を手にすることができたのは、ごく一部の限られた富裕層や貴族のみであったはずだ。かつては限られた人だけが所有できた希少な懐中時計が、現在では100万円以内で手に入る。そうした点を踏まえると、歴史とロマンを求める時計愛好家にとって、懐中時計はまさにブルーオーシャンとも言える存在なのではないだろうか。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ
