黎明期である1950年代を経て、 60年代以降に急速な進化を遂げたダイバーズウオッチ。 その中でも、卓越した技術力と開発力で、先行するスイスの有名ブランドと比肩する優れたダイバーズウオッチを生み出したのがセイコーだ。 今回の短期特別連載では全5回にわたって国産初のダイバーズウオッチとされる、 65年初出の初代150mダイバーから、メカニカルダイバーズウオッチの完成形と言える、 75年初出の飽和潜水600mダイバーまで、歴代モデルを紹介しつつ、その魅力を改めて探っていく。
セイコー
150m ファーストダイバー
第1回目に紹介するのは、1965年に登場した初代150mダイバー、通称“ファーストダイバー”だ。
まだダイバーズウオッチというジャンルが一般的ではなかった65年に、諏訪精工舎が国産初のダイバーズウオッチとして発売したのが“6217-8000”である。ベゼルは逆回転防止ではなく両方向回転、リューズもネジ込み式ではない2重パッキン構造と、現在のダイバーズウオッチの基準とは少々異なるものであったが、打ち抜きで成形された気密性の高いケース、ネジ込み式の裏ブタにより 150m防水を確保しており、同年に日本を出発する南極地域観測隊越冬隊員の装備品として寄贈され、過酷な環境下で 隊員をサポートした実績が知られている。
この初代モデルは初期仕様のRef.6217-8000と後期仕様のRef.6217-8001が製造されたが、製造期間は65年から68年と非常に短く、6217-8000に至っては翌年には6217-8001に置き換えられた。両モデルの違いで特徴的なのがリューズだろう。実機を比較するとわかりやすいが、初期仕様は直径約5.5mmの小振りなリューズ、後期仕様は操作性を考慮してひと回り大きいリューズが採用されている。
【画像:初期仕様と後期仕様のディテールを比較する(全4枚)】
リューズのサイズに加えて、リューズパイプの構造自体も変更されているため、後期仕様に初期仕様のリューズを装着することはできない。しかし、初期仕様のケースは大振りなリューズとの互換性を備えており、現存する個体は後期仕様のリューズに変更されている場合も多い。また、ベゼルにも改良が加えられており、後期仕様では簡単に外れにくい構造に変更されている。
裏ブタに施されたレファレンスナンバーやイルカマークの仕上げにも違いがあり、初期仕様では長期にわたる使用で薄れて消えてしまいやすい、浅いエッチング仕上げであったのに対し、後期仕様はくっきりとしたエッチングに変更されている点にも注目だ。
ムーヴメントには、手巻き機能をもたない自動巻きのCal.6217Aを搭載。毎時1万8000振動のロービート機でありながらも、マジックレバーによる優れた巻き上げ効率によって安定したトルクを供給し、優れた安定性を誇ったムーヴメントだ。
このモデルの登場を機に、セイコーはダイバーズウオッチをはじめとする本格的なスポーツウオッチの開発をさらに推し進め、さまざまな分野のプロフェッショナルに向けて高い信頼性を備えた腕時計を生み出していくこととなった。
粗削りながらも、そうした精神の原点を体現するファーストダイバーは、やはり特別な存在であると言えるだろう。
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文◎LowBEAT編集部



