【セイコースタイルを確立した】44GSの55周年を記念した限定モデルを実機レビュー

 今回グランドセイコーからリリースされたメカニカルハイビートGMTは、44GSの誕生55周年を記念したアニバーサリーモデルだ。44GSは、セイコーの歴史のなかでも非常に重要な意味をもつモデルだ。まずはこのオリジナルがどんな時計だったかを解説していこう。

グランドセイコー メカニカルハイビートGMT 44GS 55周年記念限定モデル
■Ref.SBGJ255。ブライトチタン(40mm径/14mm厚)。10気圧防水。自動巻き(Cal.9S86)。世界限定1200本(うち国内500本)。94万6000円

 1960年代当時のセイコーは長野の諏訪精工舎、東京・亀戸の第二精工舎の2カ所の拠点があり、お互いがその開発力で凌ぎを削っていた。グランドセイコーは諏訪精工舎で生まれたブランドで、第二精工舎は対抗ブランドとしてキングセイコーを送り出してきたが、スペック的に諏訪の後塵を拝している感は否めなかった。その第二精工舎が67年に満を辞して送り出してきたのが、亀戸初のグランドセイコー44GS(ムーヴメントが第二精工舎製)だったのだ。
 ムーヴメントはテンプを単に大型にするのではなく、キングセイコーを継承した両持ちテンプを採用することで安定性を追求。デザインも平面と二次曲面を巧みに生かし、全体を鏡面仕上げにすることでシャイニーな存在感を生み出した。シンプルなバーインデックスだが抜群の視認性を誇り、しかも機能美に満ちたこのスタイリングは、現在に至るまでグランドセイコーの基本的なデザインのベースとなっている。いわば現在のグランドセイコーのプロダクトに直接連なる偉大なるモデルなのだ。

2013年に発表された“44GS限定モデル(復刻デザイン)”

 それほどの名機だった44GSだが、製造期間は約2年ほどと短く、価格的に高価だったこともあって現存する個体は少ない。状態の良い個体は中古市場でかなりの高値となっているが、セイコーでは折に触れて復刻デザインのモデルをリリースしており、このモデルを同社がいまでも重要視していることがよくうかがえる。2014年にも44GSデザインのメカニカルハイビートGMTモデルが、ジュネーブ時計グランプリで部門賞を受賞している。今回の55周年記念モデルは、基本的にはその14年のメカニカルハイビートGMTをベースとしたものだ。

 外観を見ていくと、まずグランドセイコーらしいシンプルにして品の良いホワイトダイアルに、ブルースチールのGMT針がよく映えている。ダイアルには微細な縦のヘアラインが入っていて高級感を高めている。GSロゴもブルーの配色で、差し色としてうまく効いている。ケースサイドの曲線は美しく、ラグ部分のくびれのないぷっくりしたレトロなフォルムは、ちょっと可愛げがあっていま見てもユニークだ。年齢を問わず使いやすいスタイルだけに、生涯使える相棒となってくれるだろう。

 ラグのカーブも腕にフィットするように計算されており、装着感が良いのはグランドセイコーらしいポイントだが、このモデルは外装にブライトチタンを採用しているので非常に軽く仕上がっており、それがさらに装着感の向上に貢献している。ブライトチタンは純チタンの1.5倍の硬度があり、トーンも明るいためダイアルのホワイトと相まって全体が垢抜けた雰囲気になっている。ザラツ研磨を駆使した仕上げの使い分けも美しいが、硬質なチタンにこのクオリティの研磨を施すことができるのは、グランドセイコーの確かな技術力があってこそだろう。さらにチタンはムーヴメントにも採用されており、シースルーのケースバックから覗ける大きな金色のローターもチタン製だ。この金色はメッキではなく、金属を電気分解して酸化膜を生成する陽極酸化加工によるもので、メッキとはひと味異なる深みのあるトーンが楽しめる。グランドセイコーの遺伝子を受け継ぐハイビート機の10振動にして、約55時間のパワーリザーブを備えており、実用性もバッチリだ。

 価格は100万円近いが、国際時計のフラッグシップたるグランドセイコーの象徴的モデルの現代版と考えれば、妥当な線だと感じる。製造本数は1200本で、そのうち国内での販売は500本だが、現時点ではまだ購入可能。ただしグランドセイコー認定のブティック・サロン・マスターショップのみでの取り扱いとなる。

 

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎編集部

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