SIHH 2019年 新作時計レポート【vol.03】 IWC

往年のマークⅪを彷彿とさせる、魅力的な作りの新スピットファイア

 IWCのブースに入るや否や真っ先に目に飛び込んできたのが巨大な戦闘機だった。実はこれ1940年代にイギリス空軍の主力機として活躍した“スピットファイア”なのである。しかもブース全体が格納庫を模して作られており、スタッフも飛行服を思わせるオリーブグリーンのコスチュームという凝りよう。さすがに戦闘機の本物を見る機会はなかなかないことだけに、筆者も思わずその細部に目を凝らして見入ってしまったほどである。

 このシルバーに輝くスピットファイアだが、実は1943年に製造されたもので、約14名の専門家によって、2年以上の歳月をかけてレストアされた機体だ。そして今年8月には、スティーブ・ボールトビー・ブルックスとマット・ジョーンズという二人のイギリス人パイロットによって、何とこのスピットファイアによる世界1周飛行が計画されている。プロジェクト名は「シルバースピットファイア – The Longest Flight(最長飛行)」。総飛行距離4万3000kmを約100の区間に分けて行われるという、もちろん世界初の試みだ。

SIHH会場内に設けられたオーディトリアムで行われたトークセッションで“シルバースピットファイア”プロジェクトへの想いを語る、スティーブ・ボールトビー・ブルックス(左)とマット・ジョーンズ

 今年のIWCが力を入れたのは、このブースに象徴されるとおりIWCの旗艦ラインであるパイロット・ウォッチコレクションに加わった新しい“スピットファイア”シリーズである。そして全5種類のモデルが発表された。その中のひとつ、パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・スピットファイア“ロンゲスト・フライト”(上の写真)は、この世界1周飛行プロジェクトにちなんで開発された250本限定のスペシャルエディションである。

 最大の特徴は、任意のタイムゾーンを簡単に設定できる、IWCによる特許取得済みのタイムゾーナー機構を搭載している点だ。回転ベゼル上の都市名を12時の三角マーカー位置にセットすることで、その回転ベゼルに連動して、時針、12時位置の24時間表示、そして日付け表示が同時に動き、あっという間にその都市の時間帯に変えられるという、つまりワールドタイマー機能を装備するスグレモノなのである。海外によく出かける御仁にとっては、まさに便利この上ないものになるのではないか。

 搭載するムーヴメントは、このモデルのために開発された自社製Cal. 82760 。耐摩耗性に優れたセラミック製の部品を使ったペラトン自動巻き機構搭載機で60 時間のパワーリザーブというのも特筆に値する。

 そして今回、筆者が注目したモデルがもうひとつある。それはパイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア、つまり3針の最もベーシックなラインである。早速実機を着けさせていただいた(上の写真)のだが、見た目の雰囲気はもちろんのこと、手首への納まりも良く、手首の細い筆者でもピッタリで、なかなかいい感じに仕上がっている。

 それもそのはず、ケース径39mmと同じパイロット・ウォッチコレクションの既存のマークシリーズに比べて、若干のサイズダウンがなされている。加えてミニッツインデックスの一部と時分針の夜光に、経年変化したようなベージュっぽい色をあえて採用しレトロな雰囲気を演出、オリーブグリーンのNATOタイプの布製ストラップがセットされるなど、かつてイギリス空軍に制式採用された伝説のモデル“マークⅪ”を強くイメージさせるような全体の作りが、このモデルの魅力をグッと引き立てていることは間違いない。

 さらに、搭載されているのは新開発の自社製自動巻きムーヴメント、Cal.32110 。何と 72 時間ものロングパワーリザーブを誇る。つまり最大で約3日間も動き続けてくれるのだ。週末着用せずとも月曜の朝もちゃんと動いている。何かと慌ただしい月曜の朝に、時刻合わせという煩わしさから解放されるというのも、大きな魅力と言えるのではないだろうか。

パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・スピットファイア“ロンゲスト・フライト”

INFORMATION
型番:Ref.IW395501
ケース素材:ステンレススチール
ベルト素材:オリーブグリーンの布製
サイズ:ケース径46mm、ケース厚15.2mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.82760/毎時2万8800振動/パワーリザーブ60時間)
機能:時・分表示、日付け表示、秒針停止機能付きセンターセコンド、回転式ベゼルで設定可能なワールドタイマー機能と24時間表示
税込価格:154万4400円(250本限定)

 

 

 

パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア

INFORMATION
型番:(上)IW326801、(下)IW326802
ケース素材:(上)ステンレススチール、(下)ブロンズ
ベルト素材:(上)オリーブグリーンの布製(ほかにブラウンのカーフスキンタイプ、Ref.IW326803あり)、(下)ブラウンのカーフスキン
サイズ:ケース径39mm、ケース厚(上)10.8mm、(下)10.6mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.32110/毎時2万8800振動/パワーリザーブ72時間)
機能:時・分表示、日付け表示、秒針停止機能付きセンターセコンド、耐磁性軟鉄製インナーケース
税込価格:(上)57万2400円、(下)64万2600円

 

 

 

 

 

 

パイロット・ウォッチ・UTC・スピットファイア “MJ-271”

INFORMATION
型番:Ref.327101
ケース素材:ブロンズ
ベルト素材:ブラウンのカーフスキン
サイズ:ケース径41mm、ケース厚14.2mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.82710/毎時2万8800振動/パワーリザーブ60時間)
機能:時・分表示、日付け表示、秒針停止機能付きセンターセコンド、第2時間帯UTC表示、耐磁性軟鉄製インナーケース
税込価格:117万7200円

 

 

 

パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・スピットファイア

INFORMATION
型番:(上)IW387901、(下)IW387902
ケース素材:(上)ステンレススチール、(下)ブロンズ
ベルト素材:(上)オリーブグリーンの布製(ほかにブラウンのカーフスキンタイプ、Ref.IW387903あり)、(下)ブラウンのカーフスキン
サイズ:ケース径41mm、ケース厚15.3mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.69380/毎時2万8800振動/パワーリザーブ46時間)
機能:時・分表示、日付け・曜日表示、クロノグラフ機構(30分積算計、12時間積算計)、秒針停止機能付きスモールセコンド、耐磁性軟鉄製インナーケース
税込価格:(上)72万9000円、(下)79万9200円

 

 

 

 

 

ビッグ・パイロット・ウォッチ・ パーペチュアル・カレンダー・スピットファイア

INFORMATION
型番:Ref.503601
ケース素材:ブロンズ(裏ブタ:チタニウム)
ベルト素材:ブラウンのカーフスキン
サイズ:ケース径46.2mm、ケース厚15.3mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.52615/毎時2万8800振動/パワーリザーブ7日間)
機能:時・分表示、日付け表示、パワーリザーブ表示、4桁の西暦、永久ムーンフェイズ(北半球と南半球に対応)を表示する永久カレンダー、秒針停止機能付きスモールセコンド
税込価格:343万4400円(限定250本)

 

特殊な素材を使った“トップガン”シリーズの新作

 パイロット・ウォッチコレクションに属するもうひとつのシリーズ“トップガン”にもセラミックや特殊素材を採用した四つの新作が同時に発表された。なかでも注目なのはIWCが開発したという新素材“セラタニウム”を使用した“パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン・セラタニウム”である。

 IWCが特許を取得するこの新素材は、特殊なチタン合金をベースに開発されたもの。そのためチタニウムと同等の軽さと堅牢性にセラミックと同等の硬度を併せ持ち、傷が付きにくいという特性を備えている。しかも、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)のような従来のコーティング手法とは製造法がまったく異なるため、セラミックの表面が剥がれるということは永久的にない。

SIHH会場内に設けられていた特設ブース“SIHHラボ”内の一角に展示されていたセラタニウムケース。解説員の技術スタッフに製造方法について尋ねてみたが、さすがに答えてはくれなかった

 さらに、肌への刺激が少なく、耐腐食性にも優れており、加えてこの素材自体がマットブラックの色合い持つことから、プッシュボタンやピンバックルにまで、まったく同じ色と質感で仕上られている点も特徴と言えるだろう。筆者も実機を実際に着けてみたが、重厚感のある見た目に反した軽さがとても印象的だった。

パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン・セラタニウム

INFORMATION
型番:Ref.IW371815
ケース素材:セラタニウム
ベルト素材:布製インレイ付きラバー
サイズ:ケース径44mm、ケース厚16.8mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.79420/毎時2万8800振動/パワーリザーブ44時間)
機能:時・分表示、日付け・曜日表示、クロノグラフ機構(30分積算計、12時間積算計)、中間タイム計測用のスプリットセコンド機構、秒針停止機能付きスモールセコンド、耐磁性軟鉄製インナーケース
税込価格:168万4800円

 

 

パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン “モハーヴェ・デザート”

INFORMATION
型番:Ref.IW389103
ケース素材:サンドカラーのセラミック
ベルト素材:サンドカラーのラバー
サイズ:ケース径44.5mm、ケース厚15.7mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.69380/毎時2万8800振動/パワーリザーブ46時間)
機能:時・分表示、日付け・曜日表示、クロノグラフ機構(30分積算計、12時間積算計)、秒針停止機能付きスモールセコンド、耐磁性軟鉄製インナーケース
税込価格:104万7600円(限定500本)

 

 

パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン

INFORMATION
型番:Ref.IW389101
ケース素材:セラミック
ベルト素材:ブラックの布製
サイズ:ケース径44.5mm、ケース厚15.7mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.69380/毎時2万8800振動/パワーリザーブ46時間)
機能:時・分表示、日付け・曜日表示、クロノグラフ機構(30分積算計、12時間積算計)、秒針停止機能付きスモールセコンド、耐磁性軟鉄製インナーケース
税込価格:96万6600円

 

 

 

パイロット・ウォッチ・オートマティック・トップガン

INFORMATION
型番:Ref.IW326901
ケース素材:セラミック
ベルト素材:ブラックの布製
サイズ:ケース径41mm、ケース厚11.4mm
防水性:6気圧防水
ムーヴメント:自動巻き(Cal.32110/毎時2万8800振動/パワーリザーブ72時間)
機能:時・分表示、日付け表示、秒針停止機能付きセンターセコンド、耐磁性軟鉄製インナーケース
税込価格:72万3600円

 

 

(取材・文◎菊地吉正/現地撮影◎神戸シュン)

お問い合わせ:IWC TEL.0120-05-1868     https://www.iwc.com/ja/home.html

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

関連記事

  1. フランスの時計ブランド“リップ”が、50年代のレトロなクロノグラフを復…

  2. 久しぶりの香港!

  3. ビジネス使いでちょっと上をゆく、30万円台からの実用時計“トリカレムー…

  4. クラシックブルーをまとったジンの500本限定

  5. グラデーションで時を表現する究極のミニマルウオッチ、“ZIIRO(ジー…

  6. アクティブな女の子のための新作ウオッチがロキシー×BABY-Gから新登…

  7. ベストセラーのアドミラルにウッド文字盤の個性派が登場

  8. イタリア発、レトロな回転ディスク式のメンズ時計“トリフォグリオ”

人気の記事

ロレックス

スマートウォッチ

ドイツ時計

カジュアル時計

アンティーク時計

レディース時計