ドイツ製高級腕時計“モリッツ・グロスマン”が日本市場に思いを込めて投入した四つの限定モデルとは!

 “モリッツ・グロスマン”といえば、2015年2月、文京区小石川の播磨坂(はりまざか)沿いの閑静な住宅街の一角に、いきなり世界初の直営第1号となるブティックを出店して大いに話題を呼んだドイツの高級時計ブランドである。

 2008年、ドイツ・グラスヒュッテに創業と比較的に新しい新興ブランドながら、19世紀の古典設計を継承し、ムーヴメントの90%以上を自社で製造するほど徹底してハンドメイドにこだわる。しかも生み出される時計は古典的かつ気品にあふれ、とりわけムーヴメントの仕上げの美しさには目を見張るものがある。それゆえ時計愛好家からの評価も高く、いまや知る人ぞ知る存在だ。

 冒頭でも触れたように、直営ブティックを世界に先駆けて日本で展開したことからも、日本市場をモリッツ・グラスマンはいかに重要視していたかがおわりいただけるだろう。そして、そんな日本のユーザーのために力を入れてきたのが日本限定モデルだ。

 ここでは、これまでリリースされた四つの日本限定モデルを取り上げたいと思う。ただ、すでに完売しているモデルもあることをあらかじめご了承いただきたい。

■ベヌー・ジャパンリミテッド

K18WG(41mm径、厚さ11.1mm)。日常生活防水。手巻き(Cal.100.0)。限定15本

 べヌーは、モリッツ・グラスマンの記念すべき第1作目として2010年に発表された同社初のコレクション(現在は生産終了)である。19世紀のグラスヒュッテ製懐中時計を彷彿とさせる自社開発の手巻きムーヴメントCal.100.0が搭載された。

 このムーヴメントは、ジャーマンシルバーを使った3分の2プレートやホワイトサファイアの受け石を留めるゴールドシャトンなど、19世紀の高級懐中時計に採用されていたドイツ・グラスヒュッテ様式をふんだんに取り入れた芸術的な作りだ。しかも、美しさだけでなくアフターメンテナンスに配慮した独自の構造や機構を取り入れ、整備性にも優れる。

 新興ブランドにもかかわらずモリッツ・グロスマンが、日本において高い評価を受けた背景には、このムーヴメントの存在が大きかったに違いない。

19世紀のグラスヒュッテ製懐中時計を彷彿とさせる自社開発の手巻きムーヴメントCal.100.0。構成するパーツの90%以上を自社内で製造されている

 そんな話題性もあってか、ベヌーの最初の日本入荷分が早い段階で完売してしまい、購入できなかったユーザーの要望を受けて特別に製作されたのがベヌー・ジャパンリミテッドというわけだ。オリジナルとの違いはブランドロゴに差し色として使われている赤をやめて黒一色にしている点。

 些細な違いのように思われるが、本来ロゴはブランドのアイデンティテーとして手を加えることはなかなか難しい。それを、シンプルなものを好む日本ユーザーの要望に応えるかたちで実現したものらしく、こんなところからも日本市場への配慮がうかがい知れる。

 ちなみにジャパンリミテッドの発売は15年10月のこと。18金ローズゴールドとホワイトゴールド、それぞれ限定15本が用意されたが、ローズゴールドはすでに完売。写真のホワイトゴールドはごくわずかながら購入可能とのこと(要問い合わせ)。価格は330万円だ。

■テフヌート36・ジャパンリミテッド

K18RG(36mm径、厚さ8.32mm)。日常生活防水。手巻き(Cal.102.0)。限定15本

 テフヌートは2015年に発表されたモリッツ・グロスマン初となる薄型のドレスウオッチだ。搭載されている自社製の手巻きムーヴメント、Cal.102.0は、既存のベースムーヴメントであるCal.100系をさらに小径・薄型化するために新設計されたムーヴメントである。

 テフヌート36・ジャパンリミテッドは16年3月に発売。オリジナルのテフヌートには設けられていなかったスモールセコンドに加えて、モリッツ・グロスマンとしては初めてローマンインデックスが採用された点も特徴である。

 先に紹介したベヌー・ジャパンリミテッドと同様に、18金ローズゴールドとホワイトゴールド、それぞれに限定15本が用意された。ただ、こちらは残念ながらホワイトゴールド、ローズゴールドともに完売している。

■ベヌー ピュア・ジャパンリミテッド

SS(41mm径、厚さ11.35mm)。日常生活防水。手巻き(Cal.201.0)。限定20本

 2016年12月にリリースされたジャパンリミテッド第3弾は、何とモリッツ・グロスマンのベヌーシリーズ初のステンレススチールモデルである。

 ベヌーの後継機として登場したシンプルな3針モデル“アトゥム”と薄型ドレスモデルの“テフヌート”にステンレスモデルが新たにラインナップされたことを受けて、日本のユーザー向け限定仕様として20本だけが製作された。

 オリジナルとの違いは大きく二つ。ステンレススチールケースのピュアシリーズは文字盤の素材に真鍮が使われているが、日本限定は18金ゴールド素材のモデルと同じくソリッドシルバーを採用した高級仕様。加えてブランド初となるブラックダイアルが採用されている点も大きな特徴である。

 価格は当時の税込価格で194万4000円と、モリッツ・グロスマンとしては200万円を切るコストパフォーマンスの高い初のモデルだったこともあって注目度は高く、残念ながらすでに完売している。

■アトゥム エナメル・ジャパンリミテッド

写真のようにローズゴールドケース(右)がクリームエナメル、ホワイトゴールドケースはアイボリーエナメルとケース素材によって変えられている。ケース径41mm、厚さ11.35mm。日常生活防水。手巻き(Cal.100.1)。限定各7本

 そして第4弾は、モリッツ・グロスマン初となるエナメルダイアルを採用した、日本限定7本という極めて希少なモデルだ。

 そもそもアトゥム エナメルは、スイスの名門ドンツェ・カドラン製のグランフー・エナメルダイアルを採用したスペシャルエディション。18金ローズゴールドとホワイトゴールドモデル、それぞれ世界限定で25本だけを製造するという代物だ。

 ジャパンリミテッドは、同じグランフー・エナメルではあるものの、日本だけの限定カラーが採用されているというところがすごい。しかもそれは、ローズゴールドケースがクリームエナメル、ホワイトゴールドケースはアイボリーエナメルとケース素材によって変えているというから何とも贅沢な作りではないか。

 搭載されているのは手巻きのCal.100.1。モリッツ・グロスマンが最初に開発したCal.100.0の後継機である。最大の特徴は、プッシャー付きグロスマン製巻き上げ機構が装備されている点だ。

このジャパンリミテッドのヒゲゼンマイにはブルーが採用されており、スペシャル感を際立たせている

 時刻調整の際にリューズを引き出すと同時にムーヴメントは巻き上げモードから時刻調整モードに切り替わり、リューズは自然と元の位置に戻ってしまう。つまり調整後に手で押し込む必要がないという、他にないちょっとしたギミックを備える。ケースに埃が入るのと、リューズを押し込む際に針の位置が変わってしまうのを防ぐために考案された独自の機構だ。

 18金ローズゴールドとホワイトゴールドがそれぞれわずか7本だけが用意された。ローズゴールドはすでに完売だが、ホワイトゴールドは購入可能とのことなので気になる人は早めに問い合わせを。ちなみに価格は484万円だ。

文◎菊地吉正(編集部)/問い合わせ先、モリッツ・グロスマン ブティック TEL.03-5615-8185

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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