アンティーク時計

はじめてのアンティーク時計におすすめな定番モデル-其の1【デイトジャスト】

 はじめてアンティーク時計を購入しようとお考えの人におすすめしたいのが、“定番”と呼ばれるモデルだ。常道ではあるが、ことアンティークについては現行品以上に定番を選ぶメリットは大きいといえる。
 そのメリットのひとつが“高い信頼性”だ。
 アンティークはやはり古いものだけに、ある程度の不具合が出るものだが、今日、定番と呼ばれるものは、ムーヴメントにせよ外装にせよ、しっかりと作り込まれているモデルが多いため、それが少ないのである。特にアンティーク時計の扱いに慣れてないうちは、こうしたモデルを選んだほうが安心であることはいうまでもない。そこで今回からアンティーク時計で定番と呼ばれるモデルにフォーカスし、その魅力をお伝えしたい。

 

定番-其の1/ロレックス デイトジャスト

 アンティークでも抜群の知名度と人気を誇るロレックス。デイトナを筆頭にスポーツモデルが軒並み数百万円という高値で流通するため、ハードルが高いように思われるかもしれないが、なかには50万円アンダーで狙えるモデルもある。そのひとつが“デイトジャスト”だ。

デイトジャストはロレックスの創業40周年を記念して1945年に発表された。当時、同社のもつ技術が結集されており、モデル名は日付けが午前0時に瞬時に切り替わるカレンダー機構に由来する。また小窓式デイト表示にセンターセコンドという当時、新しかったスタイルも大きな注目を集めた。なお写真のモデルは第3世代にあたるRef.1601である。参考価格40万円

 

 1945年の誕生以来、現在も製造が続けられるロングセラーであるデイトジャストは、堅牢なオイスターケースに自動巻きムーヴメントを納め、かつ日付けが瞬時に切り替わるデイトジャスト機構(実際にこの機構が完成したのは発表から10年後)を搭載したモデルだ。当時としては非常に優れた実用性を備えていたことに加え、センターセコンド仕様と、袖に時計が隠れても日付けが見えるようにと3時位置にデイト表示を配した、今日におけるスタンダードな時計スタイルを確立したエポックピースでもあった。

 その後、デイトジャストもロレックスの時計の大半がそうであるように、基本的な意匠を踏襲しつつもハイスペックなムーヴメントにスイッチされながら歴史を紡いできた。そのためデイトジャストといっても選択肢は幅広い。
 この幅広い選択肢のなかから特にビギナーにおすすめしたいのが、自動巻き専用機として57年に完成した1500系キャリバーを搭載した第3世代である。
 1500系キャリバーには振動数の違いやデイト機構の有無などでいくつかのバリエーションがあるが、第3世代デイトジャストに搭載されたのは基本的にクロノメーター仕様の1565もしくは1575(違いは振動数で前者が毎時1万8000振動、後者が1万9800振動)の二つで、これらは精度はもとよりスポーツ系モデルにも用いられるほどのタフな作りが特徴となったムーヴメントである。つまり、普段使いとしても信頼性が高いムーヴメントといえるのだ。

アンティークムーヴメントの傑作として高く評価されるのが1500系キャリバーだ。大きなテンプが与えられたことで、外乱の影響に強くかつ精度も安定しやすいという特徴があるほか、両方向巻き上げ式を採用し、高い巻き上げ効率も実現。さらに耐久性も意識した作りも高く評価されている

 加えてこの第3世代からラインナップにステンレススチール仕様(第2世代までは基本的にゴールド製ケースのみだった)が追加されたというのも見逃せない。より実用向けになっただけでなく、当時販売価格が下がり製造数も一気に増えた。そのため現在でも比較的入手しやすく、30万円台後半という価格から狙えるのだ。

様々なバリエーションが展開されるデイトジャストだが、1500系が搭載された第3世代以降、ステンレススチール仕様が登場した。つまりスレンレス仕様をチョイスすれば必然的に1500系以降の進化版ムーヴメントが搭載されているということだ

ロレックスのもうひとつのスタンダードモデルとして展開されたオイスターパーペチュアルにも1500系キャリバーを搭載し、かつ価格も手ごろなアンティークモデルが多くあるため、ビギナーにおすすめできるが、ケースが34mm径と現代の基準からすると結構小さい。これに対してデイトジャストは36mm径とひと回り大きく、適度に存在感もあるため、使いやすいという人は多いだろう

 

文◎堀内大輔/写真◎笠井 修

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