女性編集者がレディースウオッチを実際に見て、感想を交えて紹介する本企画。今回は“BREGUET(ブレゲ)”、の旗艦レディースコレクション、“クイーン・オブ・ネイプルズ”を拝見しました。
時計に詳しくない女性の方は“ブレゲ”という名前に聞きなじみがないかもしれませんが、時計史においては外せない存在・ブランドです。
というのも創業者のアブラアン-ルイ・ブレゲは、“時計の歴史を200年早めた”と称される天才時計師。いまでは当たり前となっている自動巻き機構から衝撃吸収装置、トゥールビヨンなど、数々の画期的な機構を発明しました。
ブレゲの死去後もその技術は彼の弟子たちによって綿々と受け継ぎつつ、ブレゲというブランドは彼の名を継ぎ、現在も高級時計ブランドを代表するひとつとしてその名を轟かせています。
【コレクションのおさらい】
今回紹介するクイーン・オブ・ネイプルズ誕生のきっかけは、1800年代まで遡ります。
当時、ブレゲのお得意様であったナポレオン1世の妹、カロリーヌ・ミュラが、腕に着用できる時計をブレゲに発注しました。
その特注品は、ミニッツリピーターやムーンフェイズなどの複雑機構や温度計まで搭載していたほか、手首に巻く素材は金糸と髪をより合わせてベルトとしていたそう。
ただしその時計の詳しい情報は、姿形を写した写真すら残っておらず、製作者であるブレゲが残した作業台帳の記録しかありませんでした。
そこに記述されていた、“楕円ケース”をはじめとした情報を手がかりに2002年に生み出されたのが、クイーン・オブ・ネイプルズなのです。
【チェックポイント】
》手首で輝くパヴェダイヤとブレゲ数字・針がマッチ
特徴的な楕円形のケースには、一面のダイヤモンドをセッティング。よく見ると、文字盤とガラスの間のケース内側にもダイヤモンドが均等にセットされています。
写真に映っておらず恐縮ですが、インデックス・針ともにブレゲがデザインした、ブレゲ数字とブレゲ針を採用。さらに文字盤の一部にはマザーオブパールを用いるなど、クラシカルさとモダンな雰囲気がうまくマッチしています。
》細部にまでこだわったデザインはさすが
ケースサイドにあるコインエッジ装飾も、ブレゲの時計を特徴づけるデザインのひとつ。ブランドでは“フルート模様”とも呼ばれています。
これはゴールド素材に“冷鍛”という冶金作業を施し、しっかり固定した工作機器で手作業によって刻みこんでいるそう。
またもうひとつ特徴的なのが、4時位置にあるリューズ。大振りなだけでなく、操作がしやすいようファセット加工(凹凸に刻みがつけられた装飾)が施されています。いままでいろんな時計のリューズを見てきましたが、どの時計よりも操作がしやすかったです。
》バーリーコーン装飾が美しい自社製ムーヴメント
ムーヴメントには自社製自動巻きキャリバー537/3を搭載。ローターはプラチナ製かつ繊細なバーリーコーン装飾が施されています。
この繊細な仕上げは、サファイアクリスタル製のシースルーバックから見ることができます。
【装着感】
■ブレゲ。クイーン・オブ・ネイプルズ 8938。Ref.8938BR/8D/964 DD0D。K18RG(36.5×28.45mmサイズ)。3気圧防水。自動巻き(Cal.537/3)。609万4000円
18金ローズゴールド製のケースと、鮮やかなオレンジカラーのアリゲーターベルトがうまく調和し、手首に爽やかな印象を与えてくれました。
また特徴的なオーバルケースでありながらカーブなどが設けられていなかったため、装着感に一瞬不安を感じましたが、実際に着けてみると、6時位置にある丸いユニークなラグの可動域が広く、きちんと手首に沿ってくれました。
リューズも邪魔にならない4時位置のため操作感も良好。ただし総重量が約3カラットのダイヤモンドと自動巻きムーヴメントを搭載しているため、少し重みは伝わってきました。
文◎松本由紀(編集部)/写真◎水橋崇行
【問い合わせ先】
ブレゲ ブティック銀座
TEL.03-6254-7211
https://www.breguet.com/jp