アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
マービン
レクタンギュラー
今回紹介するのは、1930年代に製造されたマービンの14金イエローゴールド製レクタンギュラーモデルだ。22×37mmのサイズは現代の感覚からすると、レディースウオッチにも見えるが、当時はメンズ向けに販売されていた。現在ではジェンダーレスに使用できる絶妙なサイズ感が魅力的だ。
14金YG製のケースと青焼きの時分針が美しく、シンプルなセクターダイアルと組み合わせたアール・デコ様式のデザインが、まるでアクセサリーのブレスレットのような雰囲気を演出している。特に、レクタンギュラーケースならではの、横に張り出さないケース形状が腕になじみやすく、ラウンド型の時計にはないコンパクトな装着感が魅力的だ。

【写真の時計】マービン レクタンギュラーモデル。K14YG(22×37mmサイズ)。手巻き(Cal.200)。1903年代製。27万5000円。取り扱い店/プライベートアイズ
ケースの裏ブタはヒンジ式になっており、工具で開閉が可能な構造が採用されている。ただし、非防水のアンティークであるという点に加え、角の多いレクタンギュラーケースであるため、通常のアンティークウオッチと比較しても気密性が非常に低く、水気や湿気に気を使わなければならない点には注意したい。
しかし、そのデメリットを補って余りある魅力を、レクタンギュラー型の時計は備えている。それは、専用に設計された角形ムーヴメントと、その駆動音が響きやすいケース構造にある。もちろん、年代やメーカーによって採用するムーヴメントが異なるため、レクタンギュラーケースであっても丸形ムーヴメントを採用している場合もあるが、専用に設計されたパーツ配列やブリッジ分割、同年代の時計ならではのシャトン止めの大きな穴石など、職人による手仕上げの痕跡を感じられる、愛好家にとって垂涎の要素が満載なのだ。
そして、防水性がほとんどないケースも、ムーヴメントの駆動音を反響・増幅させ、心地よい音を響かせる特徴がある。ムーヴメントのトルクや振角、メンテナンス状態や使用者の聴力によって変化するものの、正常に動作している時計であれば、雑音のある室内でもチクタクという駆動音が耳に届くほどだ。これはレクタンギュラーケースに限らず、アンティークウオッチ全般に当てはまる特徴と言えるだろう。
本個体では、マービン製の角形ムーヴメント、Cal.200を搭載。厳密にはトノー形ではあるが、まんべんなく敷き詰められたパーツがマニア心をくすぐる。機械式腕時計の精度をつかさどるテンプの軸(天真)に耐震装置が装備されていないため、落下などの強い衝撃を避ける必要がある。とは言え、日常生活で丁寧に使用する場合には問題にはならないだろう。また、先にも述べたように、防水性に乏しいため、高温多湿で汗をかきやすい夏場や、雨天時の着用を避けることを推奨する。文字盤にはわずかな変色や傷があるものの、目立ったダメージは見受けられない。
着用シーンは限定されてしまうものの、秋の気配を感じるこれからの季節に合わせて着用したい1本だ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ