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【歴史の陰に隠れたセイコーの名機】アンダー5万円で狙えるハイビート&瞬間日送りの国産アンティーク

アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。


セイコー
ロードマチック スペシャル

今回紹介するのは、1970年代に亀戸に工場を構えていた第二精工舎が製造した、セイコー ロードマチック スペシャルだ。
ロードマチックは68年から諏訪精工舎で生産が開始され、当時の学生やサラリーマンをターゲットとしたモデルであったとされている。曜日付きカレンダー機能を搭載した高精度なCal.56系ムーヴメントを採用し、装着感を意識したコンパクトで薄型、かつ防水性能を重視したケースが特徴だ。

準高級機として位置づけられていたが、現代の基準から見ても非常に高い完成度を誇っており、ウィークポイントであるカレンダー機構を除けば、いまなお実用機として十分通用するスペックを備えている。

【写真の時計】セイコー ロードマチック スペシャル。Ref. 5206-6100。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.5606)。1970年代製。3万9800円。取り扱い店/WTIMES

【画像:文字盤や70sデザインのケースを見る(全4枚)

 

本個体は、第二精工舎が1970年から製造を開始した“スペシャル”の名を冠するCal.52系を搭載するモデルである。特別感のあるネーミングながら、一般向けに量産されていたモデルで、通常モデルとの価格差もほとんどなかったことから、ロードマチックシリーズのバリエーションのひとつとして展開されていたようだ。

生産当時はスリムでオーソドックスなデザインが主流であったが、70年代に入ると流行の影響を受け、鮮やかで個性的なカットガラスモデルが数多く登場するようになる。今回紹介する個体も9面カットのガラスを採用しているが、ネイビー文字盤のおかげか比較的落ち着いた印象だ。セイコースタイルの派生形とも言えるケースラインに、V.F.A.などを想起させるフーデットラグが組み合わさり、カットガラスとともに70年代らしいデザインを際立たせている。

ケースには小キズなどが見受けられ、やや使用感が感じられるが、文字盤はキズや変色も見られず良好なコンディションを維持している。

ムーヴメントには薄型自動巻きのCal.5206を搭載。毎時2万8800振動のハイビート仕様で、日付けと曜日の瞬間切り替え機能を備えたハイスペックムーヴメントだ。巻き上げ方式にはリバーサー式を採用しており、輪列配置からは同工場が60年代に製造していたCal.51系を思わせる設計となっている。文字盤6時位置の“Special”表記が筆記体であれば瞬間日送り機能付きのCal.5206、ブロック体であれば通常のカレンダー機能をもつCal.5216と判別できる。

注意点として、Cal.52系は潤滑油が不足した状態では自動巻き機構まわりに不具合が生じやすく、摩耗や破損を招く可能性がある。時計を振った際や手巻きを行った際に異音や引っ掛かりを感じた場合は、速やかに時計店で整備を受けることを推奨する。特に手巻きを多用すると負担がかかる点は覚えておきたい。

また、Cal.5206の瞬間日送り機能も潤滑油不足に陥ると不具合を起こしやすいため、しっかりとオーバーホールされた状態での使用をおすすめする。そのためか、後継モデルのCal.5216では瞬間日送り機能が省かれ、通常のカレンダー機能に変更されている。

優れた性能を引き出すために、ややクセのある設計を採用したロードマチック スペシャルだが、そのスペックは現行機にも引けを取らない。同時期のキングセイコー スペシャルやクロノメーターモデルにも搭載され、後のCal.4S系の設計ベースともなったCal.52系ムーヴメントは、機械式腕時計の生産技術を一時的に失ったセイコーが、技術を継承していくうえで欠かせない存在であった。あまり話題に上ることは少ないが、セイコーの歴史を語るうえで重要なキーストーンと言えるだろう。

歴史の陰に隠れた名脇役のロードマチック スペシャル。国産時計の購入を検討する際には、ぜひ候補のひとつに加えてほしい1本だ。

 

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文◎LowBEAT編集部/画像◎WTIMES

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