
9月にお届けした記事「【たかが手巻き、されど手巻き】手巻き式腕時計の魅力とメリットを考える」(関連記事参照)で、手巻き式腕時計、いわゆる自らが手でゼンマイを巻き上げなければならない手巻き式ムーヴメント搭載腕時計について、そのメリットとして四つのポイントを挙げた。今回はその四つ目に挙げた下記についてもう少し説明を加えたい。
『4)手巻きの高級時計に限っては、自動巻き式のようにローターで機械が覆われていないためシースルーバックになった裏ブタからその細部が確認できる。そのため徹底して細部にわたって仕上げが施されることも多く、そのメカニズムが生み出す造形美を堪能できる』
これは最低でもウン百万円以上もする高級手巻き式が対象となってしまうが、機械式ムーヴメントならではの複雑なメカニズムと繊細さ。これらを徹底して見せるための装飾や手作業による仕上げが手巻き式の場合は施されていることが多い。
そういったモデルは必ず腕時計の裏ブタ側がシースルー仕様になっていてテンプと呼ばれる心臓部の動きはもちろん、細部の美しい装飾や仕上げを鑑賞できるというわけだ。時間を知る道具としてだけでなく美術工芸品のように“観て愉しむ”。もしかすると手巻き式の良さを実感できる一番の魅力と言えるのかもしれない。
ちなみに写真はドイツの時計メーカー、モリッツグロスマンのベヌー37(私物)というドレスウオッチ。右側を覆う洋銀製のプレートに施されたグラスヒュッテストライプと呼ばれる美しい縦縞模様は表面が波打つようにわずかな凹凸が設けられているため光の加減で陰影が生まれる。
しかもシンプルゆえに繊細なエングレーブが施された左側の心臓部をより際立たせている感じなのだ。これはメーカーによっても造形は様々で作り手の思いと個性が最も感じられて実におもしろい。
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