アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
セイコー
グランドセイコー ファースト
今回は1960年代から70年代にかけて、国産時計の最高峰を目指して開発された、グランドセイコーの初代モデルの魅力を紹介する。
グランドセイコー ファーストは、その名のとおり“グランドセイコー”の名を冠した初めての時計であり、スイスに追いつき追い越すという願いを込めて命名されたとされている。
ムーヴメントには諏訪精工舎が製造した、高い基本性能を備えた手巻き中3針の“クラウン”をベースに、秒針停止機能と微動緩急針を付与したうえで、最上級の仕上げと調整を施したCal.3180を搭載している。手巻き時計でありながら、摩耗対策に使用される人工ルビーの軸受けを25石も使用している点からも、精度のみならず耐久性まで考慮されていたことがうかがえる。

【写真の時計】セイコー グランドセイコー ファースト。GF(35mm径)。手巻き(Cal.3180)。1962年製。71万5000円。取り扱い店/BQ
【画像:金張りのケースやムーヴメントの状態を見る(全6枚)】
このムーヴメントには、60年代当時のスイスクロノメーター規格よりも厳格とされる、セイコー独自の検定精度基準が設けられており、歩度証明書を添付して販売されていた。このことからも、ムーヴメントの完成度の高さとセイコーの強い自信がうかがえるだろう。
80ミクロンもの厚みをもつ金張りのラウンドケースに、太くどっしりとしたラグを組み合わせたケースデザインが最大の特徴で、平滑面を強調したセイコースタイル以前の丸みを帯びたフォルムが魅力的だ。通常の時計であれば、長年の使用によって金張りが剥がれてしまうことも多いが、本シリーズではエッジのダレこそ見られるものの、剥がれることなく美しい状態を維持している個体が多い印象である。また、裏ブタにはライオンのメダリオンがはめ込まれているが、このメダリオンが剥がれていたり、社外の補修品に交換されていたりする場合もあるため、オリジナリティーにこだわる人は要チェックだ。
文字盤については、“Grand Seiko”ロゴの仕上げによって大きく3種類に分類することができ、プリントロゴ、彫りロゴ、浮き出しロゴに分けられる。今回取り上げている個体の文字盤は浮き出しロゴで、その中でも前期型に分類される。また、これらの文字盤には仕上げ方法や植字インデックスの太さや素材、印刷の違いなどが複数存在し、度重なるマイナーチェンジによって、同一シリーズであっても生産時期によって各所にわずかな違いが見られる点が特徴的だ。
ケース径は約35mmと、現代の基準から見るとかなりコンパクトだが、文字盤の面積が大きいファーストモデルならではの堂々とした佇まいが、確かな存在感を放っている。
グランドセイコーのスタイルを築き上げたとも言える本作は、約3年間にわたる生産の後、ケースやムーヴメントなどすべてにおいて、より近代化された後継機“セルフデーター”へとバトンを渡し、市場からフェードアウトしていったのだ。
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文◎LowBEAT編集部
