10万円前後の価格帯で“3針スタンダードモデル”を牽引したのが、日本の時計ブランドだ。近年は、シチズン、オリエントなど、ムーヴメントを自社で手がけていた日本の大手時計メーカーが幅広い価格帯で汎用キャリバーの供給を行うようになっており、国産の機械式モデルのラインナップが充実している。
セイコーのTMIやシチズングループに属するMIYOTAは自社の汎用ムーヴメントを外部に供給しているが、こうした近年の動向は機械式時計を展開する新興国産ブランドの創設にも大きな影響を与えた。
ムーヴメントの供給を受け、機械式時計を展開する新興の“マイクロブランド”が次々と誕生しているのだ。厳密な定義があるわけではないが、“マイクロブランド”とは数百個単位で商品を製造し、B to C(企業が直接ユーザーにプロダクトを提供)での販売を主体とする小規模ブランドを指す。
ベンチャー企業のようなもので、大手にはない独自のコンセプトで、ディテールを作り込んだモデルを展開している。価格以上に満足度の高いモデルが豊富にリリースされているので、ぜひチェックしていただきたい。
【画像】予算10万円台まで最強ウオッチグランプリ2025、“3針スタンダード部門”5モデルを見比べる
【3針スタンダード部門:ノミネートモデル01】

■SS(35mm径)。10気圧防水。自動巻き(MIYOTA製Cal.9039)。9万3700円
KUOE(クオ)
ロイヤルスミス 90-006
ドレスウオッチのベストセラーとして人気を博す“ロイヤルスミス 90-006”のニューバージョンだ。インデックスは、ロイヤルスミス 90-006では初となるブレゲ風のアラビア数字を用いており、上品な雰囲気を醸し出す。凹凸模様をもった“ワッフル文字盤”を採用することで立体感を与えており、35mm径という小振りなケースサイズながらも、適度な存在感を生み出している。
これまでオプションとして展開されていたメタルブレスレットを標準装備した点も魅力のひとつ。装着される3連ブレスは、本作のために新規設計されたもので、既存のブレスよりも各コマがフラットな形状になった。
【編集部:堀内が受賞の理由を解説】

ヴィンテージ感と個性を両立したバランス感が絶妙
「ゴールドの差し色がヴィンテージテイストを際立たせるギルト仕様のハニカムダイアルによって、ブランドの世界観をくずすことなく、個性を表現しているのはさすが。汎用自動巻きムーヴメントのなかでは驚異的な薄さを実現した9039を採用し、ドーム形のサファイアガラスを組み合わせても、ケース厚は11.5mmと適度なサイズ感なのも魅力です」
【画像】小ぶりな35mm、ベストセラーの進化形“ロイヤルスミス 90-006”を別アングルで見る
【問い合わせ先】
クオ グローバル
info@kuoe-jp.com
※メールにて問い合わせに対応
【3針スタンダード部門:ノミネートモデル02】

■Ref. KTL01。SS(38mm径)。10気圧防水(10気圧)。自動巻(Cal.9039)。8万8000円
KIWAME TOKYO ASAKUSA(キワメトウキョウ アサクサ)
USUKI(浅黄)
2025年に東京・浅草で創設された国産ブランド、キワメトウキョウのファーストモデル。フィールドウオッチやドレスウオッチのエッセンスを受け継ぎながら、 “余白”や“陰影”など、日本的な美意識をデザインに取り入れた。本作は日本の伝統色である“浅黄(うすき)”文字盤を採用しており、アイボリーよりもやや黄味が濃く、温かみのある色合いが印象的だ。
表面にマットな黒塗装を施したアラビアインデックスが特徴になっており、一般的なインデックスに見られる金属の輝きとは異なる趣を感じさせる。高級時計に使われる“ブルースチール針”を採用しているのも、こだわりのポイントだ。
【編集部:船平が受賞の理由を解説】

価格以上の上質感を生み出す細部の作り込みや造形
「“浅黄(うすき)”文字盤の色調に合わせて、高級時計に使われる“ブルースチール針”を採用したほか、立体的なシリンジ型の針、別体成型のベゼルとケースなど、細部の作りこみが素晴らしい。ドレスウオッチのスタイリングですが、アンティークのロンジンなどで見られるステップベゼルを彷彿とさせるベゼルにより、フィールドウオッチの雰囲気がプラスされているのもおしゃれです」
【画像】ブルースチール秒針も魅力、ファーストモデル“USUKI(浅黄)”を別アングルで見る
【問い合わせ先】
KIWAME TOKYO ASAKUSA ショールーム
info@kiwametokyo.com
※メールにて問い合わせに対応
【3針スタンダード部門:ノミネートモデル03】

■SS(37mm径)。10気圧防水。自動巻き(MIYOTA Cal.9039)。一般発売予定価格7万9200円
KNIS(ニス)
刻 ーKOKUー ブレゲ数字
“刻 ーKOKUー”は、芸術的な彫金インデックスを採用した新作だ。量産時計で一般的に採用されるプリントや貼り付けとは異なり、文字盤そのものに深くインデックスを彫り込んでいるのが最大の特徴。彫刻作品のような立体感を生み出し、古典的な気品と現代的なシャープさを兼ね備えたデザインに仕上げられた。ブレゲ数字インデックス仕様のほかに旧漢数字仕様も展開されている。
彫金ブレゲ数字インデックスが工芸的な美観と視認性を両立。1940~60年代のアンティークウオッチに由来するライスブレスレットがしなやかな装着感を実現している。この価格帯では珍しいドーム形サファイアガラス風防も魅力だ。
【編集部:堀内が受賞の理由を解説】

個性を主張する彫金文字盤と細部の作りが素晴らしい
「彫金インデックス文字盤やサファイアクリスタル風防、ライスブレットなど、コストのかかる作り込みを要所に採用つつ、10万円以下というコストパフォーマンスの高さは大きな魅力。ミヨタのプレミアム機であるCal.9039を搭載。厚さ9㎜の小振りで薄型お設計を実現し、幅広い着用シーンと調和する、スマートなスタイルに仕上げられているのも好印象です」
【画像】彫金を施した工芸的な文字盤を拡大、ニスの新作“刻 ーKOKUー”を別アングルで見る
【問い合わせ先】
LIME(ライム)
TEL.075-708-6184
【3針スタンダード部門:グランプリ受賞モデル】

■Ref. SZSB035(シルバーグレー) 。SS(40mm径)。日常生活用強化防水(10気圧)。自動巻(Cal.4R35)。5万5000円(チックタック公式オンラインストア限定販売)
SEIKO×TiCTAC(セイコー×チックタック)
セイコー×チックタック コラボレーション モデル
日本を代表する時計メーカー“セイコー”と“TiCTAC(チックタック)”のコラボレーションで展開される人気シリーズ。メカニカルモデルの伝統的な形状を踏襲しつつ、チックタックが独自のアレンジを加えた点が支持を集め、2019年に登場した第1弾は、チックタックにおいて“3年連続売り上げナンバー1”という大ヒットを記録した。
25年にリリースされた新作はブレスレット仕様で、写真のシルバーグレー文字盤(チックタック公式オンラインストア限定仕様)とブリティッシュグリーン、二つのモデルがラインナップされている。これまで、セイコーとTiCTACのメタルブレスレットモデルは夜光インデックスを採用したミリタリーテイストのデザインが主流だったが、本作では植字されたアプライドのインデックスと“SEIKO”のブランドロゴを配置。立体的な造形が高級感を高めている。
ケースはリューズを除いた直径が40mmで、厚さが11mm。40mm以下だとややコンパクトな印象となるが、程よく手首の内側に収まりつつ、存在感を主張してくれる。
ムーヴメントは、毎時2万1600振動で、最大41時間パワーリザーブを備えたCal.4R35を搭載。装飾は簡易的な印象だがメカニカルな造形を楽しめる。ガラス内面に印刷された“TiCTAC LIMITED EDITION”の文字も特別感を高めるポイントだ。
【編集部:船平が受賞の理由を解説】

ノミネートモデルの中でも突出したコストパフォーマンス
「インデックスは、バーインインデックスとアラビアの混合で、バーインデックスのみ表面を“虹挽き”で仕上げています。“虹挽き”はグランドセイコーなどにも採用されている筋目処理で、微細な溝が光の回折・干渉を起こし、高級感のある虹色の輝きを生み出します。ブレスレットは3連のスタンダードな仕様。ラグよりも少し内側からブレスレットが稼働するように設定されているため、手首とケースの間に隙間が生じにくく、快適に手首をホールドしてくれます。程よいサイズとデザインバランスの良さ、コストパフォーマンスと三拍子揃っています」
【画像】完売を繰り返す人気モデル、“セイコー×TiCTAC”コラボを別アングルから見る
【問い合わせ先】
TiCTAC池袋パルコ店
TEL.03-5391-8376
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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