アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
J.W.ベンソン
クッションケース
今回紹介するのは、1920年代から30年代頃にかけて製造されたと思われる、J.W.ベンソン(ジェームズ・ウィリアム・ベンソン)の手巻き時計だ。
一般的にはあまり聞き馴染みのない名前かもしれないが、一部の愛好家の間では1847年にロンドンで創業した歴史をもつ、イギリスの老舗時計ブランドとして知られている。1879年にはヴィクトリア女王から王室御用達(ロイヤルワラント)を授与され、イギリスを代表するブランドとして名声を確立した。英国らしい質実剛健なデザインが魅力で、日本では白洲次郎が愛用したことでも知られ、アンティーク市場でも人気の高いブランドだ。
本個体は、温かみのある色合いの9金製ケースに、丸みを帯びたクッションケースを組み合わせた、英国時計らしい端正な佇まいが特徴的だ。裏蓋内部の刻印が確認できないため製造元に確証は持てないが、FB(フランソワ・ボーゲル)社製ケースに似た、10角形のねじ込み式裏蓋を採用した堅牢な構造となっている。9金は当時、J.W.ベンソンが得意とした素材であり、淡く上品な発色が魅力だ。

【写真の時計】J.W.ベンソン クッションケース。K9YG(30mm径)。手巻き。1930年代頃製。38万9850円。取り扱い店/かめ吉
【画像:ポーセリンの文字盤や9金無垢のケースを別アングルから見る(全6枚)】
また、割れや剥がれのない美しい状態を維持したポーセリンダイアルや、ミリタリーウオッチを思わせるアラビアインデックス、夜光の剥がれが見られない(修復の可能性はあるが)コブラ針など、30年代当時のイギリスで流行したデザインの風合いを色濃く残している。アンティークマニア必見のコンディションと言えるだろう。
ケース素材に18金や24金ではなく、純度の低い9金を使用した理由としては、18金よりも硬度が高く、日常使用にも耐えうる素材であったことが挙げられる。もちろんそれだけでなく、経済的合理性と高級品としての価値を両立させる目的や、イギリス国内において9金が正式な貴金属として認められていたという背景も関係している可能性がある。
当時のJ.W.ベンソンのムーヴメントには、信頼性に優れたシーマ(タバン)やロンジン、スミスなどのムーヴメントが採用されていたとされる。こちらも内部を確認できないため断定はできないものの、同様の文字盤やケースサイズ、構造を持つ個体では、シーマのCal.032KBなどが搭載されていた事例が複数確認されている。
マイナーブランドとして語られることの多いシーマだが、軍用時計にも採用されるほど堅牢な設計のムーヴメントを手がけてきた実力派ブランドだ。アンティーク時計店での取り扱いは多くないが、有名ブランドに引けを取らない作り込みにぜひ注目してほしい。
とはいえ、外観や年式のみでムーヴメントを特定するのは困難だ。詳細が気になる場合は、取り扱い店に問い合わせてみることをおすすめする。
英国紳士の実用時計として長年愛されてきたJ.W.ベンソンの金無垢時計。アンティークならではの旨味が凝縮された30年代の腕時計に、ぜひ注目してほしい。
【LowBEAT Marketplaceでほかの1930の時計を探す】
文◎LowBEAT編集部/画像◎かめ吉
