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そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ゾディアック
キングライン 36,000 クロノメーター
今回紹介するのは、1960年代に製造された自動巻きムーヴメントを搭載した、ゾディアックのキングライン 36,000 クロノメーターだ。
シルバーグレーの筋目仕上げの文字盤に、1秒が5分割された繊細なミニッツマーカーを組み合わせた、精度の高さを表現したかのようなデザインが魅力的だ。筆記体でプリントされたキングラインの文字や、文字盤6時位置に配された“OFFICIALLY CERTIFIED CHRONOMETER”の表記がどこか誇らしげに見える。
立体的なアワーマーカーとすっきりとした文字盤デザインによって非常に優れた視認性を実現しており、クロノメーターとしての高い精度を遺憾なく発揮できるはずだ。
ケースや文字盤のコンディションも非常に良好で、目立つキズもほとんどなく、研磨の施されていないオリジナルのシェイプを維持している。
文字盤やモデル名に36,000と記されている通り、本モデルは毎時3万6000振動のハイビートムーヴメントを搭載している点が最大の特徴である。

【写真の時計】ゾディアック キングライン 36,000 クロノメーター。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.78-79)。1960年代製。13万2000円。取り扱い店/プライベートアイズ
【画像:ケース全体やハイビートのムーヴメントの状態を確認する(全6枚)】
本個体に搭載されるCal.78-79は、エボーシュメーカーであるAS(アシールド)社の手巻きムーヴメントCal.AS1687/AS1688をベースに、ジラール・ペルゴを中心として、ドクサ、エベラール、ファーブル・ルーバ、ゾディアックの5社で共同開発されたとされている。ムーヴメント自体のハイビート化とともに、2枚の切替車を使用したリバーサー式の自動巻きユニットが追加されている点が特徴的だ。
手巻きムーヴメントをベースに自動巻き機構を上乗せするという設計自体はやや古典的ではあるものの、高トルクかつ耐久性が重視されるハイビートを駆動させるにあたっては、堅牢で無理のない設計のベースムーヴメントを活用することで、安定した性能を発揮できたようだ。
毎時3万6000振動のハイビートは、高トルクかつ高速で動作する部品が多いため、耐久性を確保しながら安定した精度を維持することが難しく、積極的に採用するメーカーは決して多くなかった。
そんな中でも、ゼニスのエル・プリメロやCal.405/408、ロンジンのウルトラクロン、セイコーのCal.61系、エボーシュのCal.AS1920やCal.ETA2837など、少数ながら市販モデルに積極的に採用するメーカーも存在していた。
しかし、69年には機械式腕時計の精度を凌駕するクォーツ式が誕生し、70年代中頃にはコストダウンにも成功して市場に普及していったことで、高精度な機械式腕時計の存在意義は薄れ、毎時3万6000振動ハイビートモデルも徐々に姿を消していってしまったのだ。
とは言え、電力や電子部品を一切使用しないハイパワーな機械で高精度を目指したハイビートウオッチは、モータースポーツのレースマシンを彷彿とさせる存在でもあり、現在でも一部の愛好家から熱狂的に支持されているジャンルでもある。
60年代から70年代にかけて奇抜で個性的なデザインの時計を数多く生み出してきたゾディアックの中でも、クロノメーター機らしい正統派デザインを取り入れたキングラインに改めて注目したい。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎プライベートアイズ
