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そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
セイコー
キングセイコー
今回紹介するのは、1960年代に亀戸の第二精工舎が製造したハイビートの手巻きムーヴメント、Cal.4502を搭載したキングセイコーだ。
そもそもハイビートと呼ばれるムーヴメントは、機械式腕時計の精度をつかさどるテンプというパーツが、一般的に毎時2万8800振動(毎秒8振動)以上のペースで動くもののことを指し、2万1600振動(毎秒6振動)以下のものをロービートとして区別している。当時のセイコーはスイスの天文台コンクールへの参加をとおして、振動数の向上、つまりハイビート化こそが時計の高精度化につながるものだと確信して開発研究を進めていたのだ。

【写真の時計】セイコー キングセイコー。Ref.4502-8000。SS(38mmサイズ)。手巻き(Cal.4502)。1960年代製。取り扱い店/喜久屋商事 時計部
当時、手巻き式のハイビートムーヴメント自体が世界的にも珍しかったが、なかでも毎時3万6000振動(毎秒10振動)で量産されていた手巻きムーヴメントは、今回紹介するセイコーのCal.45系と、レディース用のCal.1964、諏訪精工舎のCal.5740Cなど、決して多くは存在しなかった。耐久性の面から、振動数を毎時2万8800振動に抑えるメーカーが多かった中、セイコーは保油装置の“ダイアフィックス”をガンギ車の軸受けに採用することで、早期の油切れを抑制していたのだ。
また、既存のムーヴメント(セイコー クラウン)をベースにハイビート化していた諏訪精工舎のCal.5740Cと比較すると、Cal.4500Aは斬新な機械設計を取り入れており、歯車の数や特殊なレイアウトなどから、精度を出すことに特化した設計のムーヴメントであることがうかがえる。秒針を止めるハック機能も備えられているため、精度の高さをいかんなく発揮できるだろう。
面を強調したクッションケースの裏ブタにはネジ込み式が採用されており、パッキンの交換を行えば日常的な使用でも安心できるだろう。ややエッジが落ちているものの、目立った打痕などはなく、文字盤も7~8時位置に変色が見られるものの、塗装の剥がれは見られない。
また、可能であれば技術力の高い時計店・修理業者でリューズ内部のパッキンを交換することを推奨する。これは、防水性の低下のみならず、硬化したパッキンによって、滑りの悪くなったリューズ操作の重さを軽減することで、手巻き時のゼンマイの感触をわかりやすくし、ゼンマイを巻ききってしまうことを防止する意味合いがある。
ゼンマイが切れるケースも確認される45系だが、適切な整備と使用を心掛けることで大きな破損は防止できるはずだ。ハイビートムーヴメントに限らず、リューズ操作や動作に違和感を覚えた場合には、必ず信頼のおける時計店に持ち込むことをおすすめしたい。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎喜久屋商事 時計部