アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
シチズン
レオパール 28800
1960年代後半から70年代初頭にかけて、国産機械式腕時計の技術力はピークを迎え、各社から数多くの名作が生み出された。今回紹介する時計もそのなかの1本であり、優れた性能と量産性を両立した傑作機であった。
今回紹介する時計は、1960年代後半から70年代前半頃に製造されたシチズンのレオパール 28800だ。
薄型で、毎時2万8800振動のハイビートムーヴメントを防水ケースに搭載した設計は、セイコーのロードマチックやキングセイコーといったビジネスマン向けモデルを想起させる。実際、この製品はそれらに対抗すべく、シチズンが市場に投入したモデルとされている。

【写真の時計】シチズン レオパール。Ref.4-770323 TA。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.7720)。1970年代製。4万4800円。取り扱い店/WTIMES
発売当初は毎時2万1600振動のムーヴメントを搭載していたが、後に毎時2万8800振動、さらには毎時3万6000振動まで振動数を高める改良が施された。そして最終的に、高いポテンシャルを秘めたこのムーヴメントは、“レオパール ハイネス”や“グロリアス シチズン”のベースまで上り詰めたのだ。
オメガのコンステレーションを思わせるCラインケースと、純正の細やかな7連ブレスレット、繊細な模様の文字盤など、フォーマルな装いに合わせやすいデザインが採用されている。加えて、現代の時計でも実現することが難しい薄型のケース厚に仕上げている点にも注目だ。
本個体は、毎時2万8800振動の自社製ムーヴメント、Cal.7720を搭載。自動巻き機構にはリバーサー式を採用し、両方向の巻き上げを可能としている。加えて、各部品の摩耗を防ぐために、28石もの人工ルビーが使用されており、香箱車(1番車)の上下軸受けや、リバーサーの軸受け、2重構造になったガンギ車の軸受けの保油装置など、重要な部分に適切な石が配置されているのだ。
また、同時代の自動巻き腕時計の巻き上げローターの軸に採用されていたボールベアリングと比較しても圧倒的に玉数が多く、通常では5~6個であるボールを、20個まで増やしており、耐衝撃性と耐久性を高めようとしていたことがうかがえる。
加えて、日付け調整の方法も独特であり、時計を立て12時位置を上にした状態でリューズを押すと日付が、12時位置を下にした状態でリューズを押すと曜日が変更される構造が採用されている。また、通常の時計のように、カレンダー操作禁止時間帯に不用意にリューズが押され、カレンダーが動いてしまった場合の破損を防ぐ構造を採用している点にも注目だ。
現在ではあまり注目されていないものの、この時代の腕時計には、よく考え抜かれた設計と独創的なアイディアによる機械的な魅力が詰まっている。“平凡なデザインで面白みに欠ける”、“大量生産品ゆえに希少性がない”といった理由から、愛好家の間では見過ごされがちだが、豊富なバリエーションと高い実用性は、ほかにはない選択肢を与えてくれる。
アンティークウオッチ初心者から国産時計を知り尽くした玄人まで、扱いやすい性能とレアなデザインを見つけ出す楽しみが魅力的なシリーズだ。
【LowBEAT Marketplaceでほかのシチズンの時計を探す】
文◎LowBEAT編集部/画像◎WTIMES