近年多方面から注目を集め、確実に人気が高まっているカルティエの時計。なかでも、ひと昔前(1980〜2000年代のポストヴィンテージ期)の生産終了モデルはまだ市場の評価が追いついておらず、狙い目だと話す業界関係者も少なくない。
そこで今回は、ポストヴィンテージ期に一大ブームを巻き起こした“マストタンク(マスト・ドゥ・カルティエ)”をクローズアップ。“ひと昔前のカルティエ時計”を象徴する大衆ラインのロングセラーを紹介する。
【画像】豊富なデザインバリエーションも魅力!大ヒットシリーズ“マストタンク”
“生活に不可欠なもの”を意味する英語のMust(マスト)をコンセプトに、1976年に発表されたマストタンク。それまで特権階級のためのブランドとして認識されていたカルティエによる安価な大衆シリーズは、ブランドの歴史に残る出来事であった。
マストタンクの低価格化を実現した大きな要因が、シルバーをゴールドの被膜で覆う“ヴェルメイユ”と呼ばれる金属表面加工技術の採用だ。ヴェルメイユとは、銀の含有率が92.5%の銀合金(通称スターリングシルバー)に20ミクロンの18金イエローゴールドの層を重ねる手法で、金無垢に比べて大幅にコストを削減できる。最高峰のジュエリーメゾンならではの金属加工技術の成せる業であった。

■ヴェルメイユ(30×24mmサイズ)。手巻き(Cal.78-1)。1980年代製。参考商品
ムーヴメントにはクォーツや汎用機のETAベースのものが使用され、より手軽に楽しめるようになった点も大衆化を押し進めた。大量生産が可能となり流通量が飛躍的に増えたことで、2004年に製造が終了したあとも比較的手に入りやすいのもうれしいところだ。
ほかのシリーズと一線を画すのは価格面だけではなく、文字盤デザインの幅広さだ。タンク ルイ カルティエを踏襲する伝統的なローマンダイアルからユニークなフォントのアラビア数字を使ったもの、シンプルな単色文字盤から複数のカラーを組み合わせたものまで実に様々。ほかのシリーズに比べ、手巻きとクォーツの価格差がほとんどないことも特徴的だ。
ただ、ヴェルメイユによる金メッキが剥がれやすかったり、文字盤のクラック(割れ)が起こりやすかったりと弱点も少なくない。購入の際はそれらの点に留意し、極力コンディションの良い個体を粘り強く探してみるのがいいだろう(※2025年11月末現在、お手頃な個体は20万円ほどから流通している)。
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文◎市村 信太郎
