アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
スミス
デラックス
今回紹介するのは、かつてイギリスに存在していた腕時計メーカー、“スミス”が1950年代に製造した手巻き腕時計、スミス デラックスだ。
その中でも、本モデルは裏ブタの刻印からわかるように、旧イギリス国鉄の勤続45年を称えて贈られた1本であり、ケースに9金イエローゴールドを使用した特別な時計として仕上げられている。
イエローゴールドのケースにスモールセコンドと青焼き針、アラビア数字のインデックスを配した文字盤など、非常にシンプルで50年代頃の時計らしいフェイスデザインが魅力的だ。全体のコンディションに注目すると、ケースは研磨などによるエッジのダレが見られ、リューズも長年の使用による摩耗が確認できる。文字盤は斑点状のシミが見られるものの、均一に変色しているため、比較的良好な状態だ。青焼きの時分針については、根元部分や先端部にわずかなサビが見られるため、コンディションにこだわる人は要チェックだ。

【写真の時計】スミス デラックス。K9YG(31mm径)。手巻き(Cal.60461E)。1950年代製。17万8000円。取り扱い店/WatchTender銀座
【画像:文字盤の状態や独特な設計のムーヴメントを見る(全6枚)】
ムーヴメントには、耐震装置を備えた自社製Cal.60461Eを搭載。軸受け部分や脱進機周りの摩耗対策として、現代では最低17石以上使用するのが一般的だが、本機はやや控えめな15石仕様となっている。ただし、少ない部品点数と堅牢性を重視した分厚い地板構造により、実用面では十分な耐久性を確保している。
ゼンマイを収める香箱車や、巻き上げを担う角穴車・丸穴車を受け板で覆う構造、さらには板状の大きなコハゼばねなど、随所に懐中時計を思わせる古典的な設計が採用されている点も興味深い。
また、テンプを支える受け板を2本のネジで固定するという、珍しい構造を採用している点も本ムーヴメントの特徴だ。これは受け板の固定力を高めることでテンプの安定性を向上させ、軸の傾きを抑える目的があったのではないかと考えられる。
ムーヴメント全体には粒金仕上げが施され、受け板には“MADE IN ENGLAND”の刻印が入る。湿気の影響と思われるわずかな変色は見られるものの、大きなキズや腐食はなく、年代を考えれば良好な状態を保っている。非防水のケース構造を採用しているため、文字盤やムーヴメントを保護するためにも、高温多湿を避けて使用することを強く推奨する。
スイスやドイツ、日本、フランス、ロシアなど、かつてはさまざまな国で腕時計が製造されており、それぞれ異なる設計思想やデザインの魅力が存在していた。その中でも、イギリス生まれのスミスは、実用性とデザイン性を高い次元で両立させた時計を数多く手がけていたブランドだ。
手巻きのアンティークウオッチに興味はあるものの、他の愛好家と被らない個性的な1本を探している。そんなこだわり派の時計愛好家にとって、スミスの腕時計は必見の存在と言えるだろう。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎WatchTender銀座

