インタビュー

【インタビュー】'90年代に時計界を騒然とさせたアイクポッドが帰ってきた!

電撃復活を果たした新生アイクポッドのキーマンにインタビュー

 

 アイクポッドは、古くからの時計好きには非常に懐かしい存在だろう。

 1980年代後半から世界的に復権の兆しを見せていた高級機械式時計。当初、そのブームを牽引したのは復活を遂げた名門ブランドだったが、90年代後半になるとパネライやフランク ミュラーなど個性的なブランドが従来の愛好家だけでない、幅広いユーザーを開拓していった。

 そんな個性的なブランドのひとつが、ドイツ人の実業家オリバー・アイク氏がアップル社の製品も手掛けたプロダクトデザイナー、マーク・ニューソン氏とともに94年に立ち上げた“IKEPOD(アイクポッド)”だ。

 同社最大の魅力となったのが、プロダクトデザイナーが手がける時計らしく、従来の時計ブランドとは一線を画したユニークなデザイン。丸みを帯びた有機的でユニークな造形と鮮やかな色使いを採用した独自のスタイルは、古典的な機械式時計のイメージを覆し、時計好きからデザイン好きまで、熱烈なファンを獲得したのである。

 カルト的人気を博したアイクポッドだったが、2012年以降は休眠状態となっていた。それを熱烈なコレクターでもある投資家がブランドの権利を購入し、18年に再始動したのだ。

デュオポッド
往年の傑作、ヘミポッドの特徴的なケースデザインを継承しつつ、エマニュエル・ギョエ氏によってデザインされたシンプルな文字盤をもつ。ちなみに3針ではなく秒針のない2針仕様で展開されているのは、共同オーナーのクリスチャン・ルイ・コル氏の「クォーツのステップ運針があまり好きではなかった」というこだわりから。 ■Ref.IPD005SILB。SS(42㎜径)。5気圧防水。クォーツ。7万7000円(税抜き)

クロノポッド
デュオポッドと同じく流線形ケースを採用したクロノグラフモデル。一見してクォーツ式時計であることがわからないように、通常センターに設置されるクロノグラフ針を、6時位置のインダイアル表示に改めている。なお9時位置のインダイアルが30分積算表示、3時位置が24時間表示だ。 ■Ref.IPC009SILB。SS(44㎜径)。5気圧防水。クォーツ。9万2000円(税抜き)

 

 そして2019年、いよいよ日本での取り扱いがスタート。再上陸に際して、同社の共同オーナーであるクリスチャン=ルイ・コル氏が来日し、新生アイクポッドが掲げる新たなブランドフィロソフィーを語ってくれた。

アイクポッドの共同オーナーであり、マネージングディレクターを務めるクリスチャン=ルイ・コル氏。1990年代から数々の時計メーカーでマーケティングに携わる。2016年に当時、アメリカ人投資家が所有していたアイクポッドの権利を取得。18年末よりブランドを再始動させた。

「いまから約25年前、私は前衛的なデザインのアイクポッドにひと目惚れしました。しかし、スイス製機械式ムーヴメントを搭載し、生産数も限定されていたアイクポッドは非常に高額で、当時の私にとって憧れの時計だったのです。そしていま、自分自身がアイクポッドを販売する側に回って強く思ったのは、この優れたデザインの時計をもっと多くの人に楽しんでもらいたいということでした。そこでまずは徹底的にコストの見直しを図ったのです。幸いにも現在は様々な技術が進化しており、当時のままのデザインとクオリティを維持しながら、リーズナブルな価格を実現できました」(クリスチャン=ルイ・コル氏)

 新生アイクポッドの初コレクションは往年の傑作をベースにリデザインされた“デュオポッド”と“クロノボッド”の2種。それぞれの価格は前者が7万7000円、後者が9万2000円とかつての約10分1という驚くべき価格設定だ。
 その秘密は、機械式からクォーツムーヴメントに載せ換えていることに加え、外装も人件費の高いスイスを避け、中国製のケース、台湾製の文字盤と針を用いた点にある。

「いまだに“中国製ケース”ということを公にしたがらないスイスメーカーは多いですが、昨今は技術力が向上しており、クオリティは決して低いものではありません。このデュオポッドとクロノポッドのケースは一から製作したものですが、この仕上りには熱烈なコレクターの方にもご満足いただけるはずです」

過去モデルのケース構造を改めて研究し、再現された流線形ケース。ケースフォルムはオリジナルにほぼ忠実だが、裏ブタのないワンピース構造を採用していたかつてのケースに対して、裏ブタ式の2ピース構造に改めてメンテナンス性を向上させた。一般的な時計ケースとは異なり、アイクポッドのケースはラグがなくぷっくりとしているため、実際のサイズほど大きくは見えない。デュオポッドも42mm径あるが、納まりが良く、装着感も良好だ

 実物を見せていただいたが、ケースは美しい曲線を見事に描いているだけでなく、ケースに施されたヘアライン仕上げも適度に深さがあり実に丁寧な仕事だ。ちなみにヘアライン仕上げを施すために特注の研磨機を開発したと言う。つまり新生アイクポッドが原産国を公言しているのは、クオリティに対する絶対の自信があってこそなのだ。

 もちろんデザイン面でもその自信は絶対である。文字盤デザインを担当したのは、オーデマ ピゲの初代ロイヤルオーク オフショアなどを手がけたエマニュエル・ギョエ氏。オリジナルのテイストを継承しつつも同氏の感性が融合された。

 価格を抑えて幅広い層へのアプローチする一方、ツウ好みな要素も取り込んだ新生アイクポッド。さらにいま自動巻きモデルの開発も進めていると言う話しもあり、今後の動向も目が離せない。

(文◎堀内大輔)

【問い合わせ先】
アイクポッド 公式サイト
http://www.josawa-watch.com/ikepod.html

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