航空界の英雄リンドバーグのアイディアから生まれたロンジンの歴史的タイムピース

 いまから90年以上前の1927年5月21日。
 当時25歳だったアメリカの飛行家チャールズ・A・リンドバーグがスピリット・オブ・セントルイスと名付けたプロペラ機で、世界で初めて大西洋単独無着陸飛行(ニューヨーク-パリ間)という偉業を達成した。

 今回は、この記念すべき日にちなみ、英雄リンドバークが構想し、ロンジンが製作した歴史的なタイムピース“アワーアングルウオッチ”を紹介したい。

 偉業を無事達成したリンドバーグだったが、やはりサポートがいない状況のなかでの長距離飛行には多くの困難が伴ったようだ。
 この飛行を通して、もっとしっかりとした航空航法を整備する重要性を感じていた彼は、当時、航空航法の第一人者であったアメリカ海軍のP.V.Hウィームス大佐に個人教授を受ける。

 そこでウィームス大佐が考案した“ウィームスウオッチ”の存在を知った彼は、もっと便利に航空航法を使用できるアイディアを思いついたと言われる。

時計の動きを止めずに秒針を合わせるため、秒目盛り自体を回転させるという、逆転の発想に基づき、文字盤中央に回転式ディスクが採用されたウィームスウオッチの第1世代

 そしてこのアイディアをもとにした新たなナビゲーションウオッチの製作をロンジンに委託。こうして31年に完成したのが〝リンドバーグウオッチ”の愛称で知られるアワーアングルウオッチである。

 回転ベゼルや文字盤に一般的な時計では見られない数字が記されているが、これがまさにアワーアングル(時角)ウオッチと言われるゆえんだ。専門的な話になるため詳細は割愛するが、これにより経緯度計算を容易にし、地理的な位置を正確に測定することを可能にしたのである。
 いまのようにGPSなどもちろんなかった時代。この方式が最も迅速かつ正確に現在地を知る手段であり、当時アワーアングルウオッチには、世界中のパイロットたちから注文が殺到したという。

 

アワーアングルウオッチ(第1世代)


 その初期モデルの直径は47.5mm。
 腕時計と呼ぶにはあまりにも大きいが、飛行中でも瞬時に情報を読み取るためには、これぐらいのサイズが必要だったのだろう。ウィームスウオッチ同様に文字盤中央部分が回転する仕組みになっている。
 左が前期型の個体でシルバー製のケースを採用。右が後期型でステンレススチール製に変更された。いずれも歴史的価値が高いことに加え、製造数もそれほど多くなく相場は高額のため、現在はコレクターズアイテムとなっている。参考価格400万円〜

 

アワーアングルウオッチ(第2世代)

 1937年には大幅にサイズダウンしたアワーアングルウオッチの第2世代も登場している。
 判読性を重視した第1世代はパイロットたちには好評を博したが、一般のユーザーにとってはやはり大きすぎたためだろう。34mm径とかなり小振りになった。こちらのほうが断然普段使いしやすいため、現在の愛好家たちからの支持も高い。参考価格200万円〜
 
 数ある傑作モデルを生み出したロンジンだが、そのなかでもこのアワーアングルウオッチは別格のようだ。
 過去にもアニバサリーイヤーにはたびたび復刻モデルを発表したが、現在ではヘリテージコレクションとしてレギュラー展開もされている。

 

文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修

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