【第7回】ポストヴィンテージ時代の腕時計|飛躍的に進化した1970年代のダイバーズウオッチ

1970年に開発されたオメガのシーマスター600 プロプロフ。ヘリウムガズの侵入を阻止する驚異の気密性を実現し、なんとエスケープバルブを採用せずとも飽和潜水を可能とした歴史的なモデル。サイズは46×45mm。自動巻きのCal.1002搭載(ロービート14号より)

 2回にわたって1970年代の特徴としてクロノグラフに注目してきたが、ダイバーズウオッチもモンスター級の防水性能を備えたモデルが続々とリリースされるなど、実は70年代に入って飛躍的に進化を遂げているジャンルと言える。

 そんな当時を象徴するモデルといえばやはりオメガのシーマスター600プロプロフ(70年)であろう。その風貌は上の写真を見てもわかるように、ステンレススチール鋼をくり抜いて作られたモノコックケースの異様さからも、明らかに防水性能を優先した作りだということがうかがい知れる。そのため当時のダイバーズウオッチは40mmオーバーは当たり前、とにかく厚くてデカい。

 また、当連載の第4回「宇宙時代の到来で流行した異形ケース!」で解説したように、ケースのデザインにも70年代らしい特徴が表れている

(左)オメガ、シーマスター1000。サイズは43×54mm。自動巻きのCal.1012搭載 (右)ブランパンのフィフティファゾムス バラクーダ。ケーズサイズは43mm。ムーヴメントはアシールド社の自動巻きCal.1913(ロービート14号より)

 それは先述したオメガのプロプロフのモノコックケースに改良を加えて1000m防水にさらにスペックアップしたシーマスター1000(71年)や、60年代後半から70年代にかけて製造されたブランパンの同じく1000m防水を備えるフィフティファゾムス バラクーダにも見られる、ふっくらした卵形のケースが採用されている点だ。

 しかも、ラグがなくブレスレットをケースに直接セットする仕様も比較的に多くみられるのもこの時代の特徴のひとつと言える。これはあくまで筆者の個人的見解だが、当時は防水能力を確保するためケース自体が大きく、特に縦方向が50mm前後になるため手首への装着性を考えて取られた構造なのではないかと考えられる。

高防水モデルの普及を加速させたカリビアン1000の存在

右は1970年代のジェイニー社の広告。左はジャケドローの広告。下から2段目にジェニー社のカリビアン1000を採用したダイバーズウオッチが掲載されている(ロービート14号より)

 そしてもうひとつこの時代のダイバーズウオッチに共通する性能がある。それは1000mもの驚異的な防水性能である。しこもこんな高レベルの防水能力を備えたモデルが70年代になると先述のオメガやブランパンだけでなく、様々なメーカーから発売されるようになったのである。その背景にあったのが“トリプルセーフ”と呼ばれるワンピース構造を持つケースの存在だった。

 中堅メーカーのジェニー社が開発した1000m防水を可能としたダイバーズウオッチ用のケース“カリビアン1000”がそれである。ジェニー社はこれを他社にも供給、多くのブランドからも1000m防水が続々登場したというわけである。

カリビアン1000を使って開発されたダイバーズウオッチ。左がジェニー、右がアクアダイブである

 写真左はカリビアン1000を使って作られた1000m防水を備えたシェニー社のダイバーズウオッチ。減圧限界時間を表示する特許取得の逆回転防止ベゼルを備える。右はジェニー社からカリビアン1000の供給を受けて製作されたアクアダイブのダイバーズウオッチだ。ほかにも数多くのメーカーがこの特殊な防水ケースを採用したダイバーズウオッチを製造した。

 かつて1950年代後半にケースメーカーのEPSA社が開発した防水ケース“スーパーコンプレッサーケース”によって、60年代に各社によるダイバーズウオッチ開発が加速したように、70年代には新たに“カリビアン1000”というさらなる高防水ケースの存在が、時代を牽引して行ったのである。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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