【希代のウオッチデザイナー】魅惑のジェンタ作品を振り返る

 ウオッチデザイナーの先駆けであり、今日のウオッチデザインに多大な影響を与えた巨匠ジェラルド・ジェンタをご存じだろうか。

 彼がオーデマ ピゲの“ロイヤルオーク”(1972年)やパテック フィリップの“ノーチラス”(76年)のデザインを手がけたことは、時計好きの間であまりにも有名だ。

チャールズ・ジェラルド・ジェンタ(1931-2011年)
1931年スイス生まれ。51年に宝飾学校卒業後はジュエリーデザイナーの道を進む。公式資料によると61年に時計デザイナーに転向とあるが、時計デザイン自体はそれ以前から行っていた。最初期の仕事には、オメガのコンステレーションのCラインケース(62年)がある。その後、69年に自身の名を冠したデザイン事務所を創設。72年に手がけたオーデマ ピゲのロイヤルオークでウオッチデザイナーとして不動の地位を確立した。以降も数多くのアイコニックピースを世に送り出し、今日のウオッチデザインに多大な影響を与えた人物だ

 ジェンタはこれら以外にも実に多くのアイコニックピースを世に送り出した。と同時にそれ以上に多くのフォロワーを、ユーザーだけに留まらず生み出した。

 そのひとりが同時代を代表するデザイナーでもあるヨルグ・イゼック氏だ。
 そのことはデビューまもない同氏がデザインを手がけたヴァシュロン・コンスタンタンの“222”(77年)を見ても明らかだろう。

222(ヴァシュロン・コンスタンタン)
1977年にブランド創業222年を記念して発表された“222”。ヴァシュロン・コンスタンタンにおける元祖高級スポーツウオッチで、デザインはヨルグ・イゼック氏が担当した。コンセプトはもとより、2ピースケースを採用する点など、ジェンタ作品に範を得ていることは明白だ。
■Ref.222。SS(37mm径)。120m防水(当時)。自動巻き(Cal.1121)

 

 今回は、現代のウオッチデザインにも多大な影響を与え続ける希代のウオッチデザイナー、ジェラルド・ジェンタが残した数々のアイコニックピースを振り返ってみたい。

 

》Iconic Piece 01
ロイヤルオーク(オーデマ ピゲ)

 ジェンタのウオッチデザイナーとしての地位を不動のものとした1972年発表のロイヤルオーク。戦艦の舷窓をモチーフに、八角形ベゼルを備えた高級薄型スポーツウオッチだ。
 今日、展開される高級スポーツウオッチと言われるモデルの多くが、本作の影響下にあるといっても過言ではないだろう。
■Ref.5402ST。SS(39mm径)。50m防水(当時)。自動巻き(Cal.2121)。参考相場500万円〜

 

》Iconic Piece 02
ノーチラス(パテック フィリップ)

 戦艦をモチーフにしたロイヤルオークに対し、潜水艦に範を取ったのがノーチラスである。
 初出は1976年。ケースに特徴的な耳をもつことから“ジャンボ”の通称でも知られる。裏ブタを持たない2ピースケースを採用し、2針の薄型自動巻きを搭載した。
 ノーチラスと言えば、現行モデルが定価以上で流通するプレミアムモデルとして知られるが、この初代にいたってはさらに高額で1000万円を超えることも珍しくない。
■Ref.3700/1A。SS(42mm径)。12気圧防水(当時)。自動巻き(Cal.28-255 SC)。参考相場900万円〜

 

 

》Iconic Piece 03
Cラインケース(オメガ)

 卵型のフォルムが特徴となった通称Cラインケースは、1962年発表のコンステレーションで初めて採用された。
 その後、シーマスターなどでも採用され、この時代のオメガを特徴付けるデザインアイコンとなった。ちなみにジェンタが携わったのはケースデザインのみだったとされる。
 60年代から70年代にかけて多くのブランドがCライン“風”のケースを投入していたことからも、いかにその反響が大きかったかうかがい知れる。また、オメガに関して言えば製造数も多かったため、現在もアンティーク市場で入手しやすく、身近に楽しめるジェンタ作品のひとつだ。
■コンステレーション。K18PG(35mmサイズ)。自動巻き(Cal.564)。参考相場30万〜50万円

 

 つまるところ昨今のトレンドになっている“ラグジュアリースポーツ”というジャンルは、ジェンタが生み出したと言っても差し支えない。

 いまではジェンタ作品の初期モデルの多くは、入手が非常に困難な状況にあるが、気を落とすことはない。
 なぜなら、その後継機もしくはその影響を受けた良作はいまでも数多く展開されており、楽しむことができるからだ。

 

文◎堀内大輔(編集部)

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