アンティーク時計

【ビギナー必見】アンティーク時計の選び方講座|第3回 なぜいまも使える? アンティークに共通する堅牢設計

 よく“アンティーク時計は作りがいい”と言われる。
 当時の時計のほとんどが長く使うことを前提に作られていたため、確かにしっかりとしたものは多いのだが、現行品のように気にせずガンガン使えるかというとそれは違う。

 なぜなら古いものであることにはなんら変わりはなく、経年による劣化などが避けられないからだ。
 そのため普段使いするうえでは、それなりに注意も必要となる。
 アンティークウオッチを楽しむには、古いがゆえの弱点も頭に入れておく必要があるのだ。

 そこで、アンティーク時計を購入するうえで憶えておいてほしいポイントをビギナーにもわかりやすく紹介していく本連載。3回目は、長く使うためにも知っておきたいムーヴメントの「耐久性」について解説する。

長く使うことを前提に作られている

 アンティークウオッチは1960年代後半の高年式のものでさえ、すでに50年も経っている。
 初心者にとって、アンティーク時計を購入したとしてもどれぐらい使えるのだろうかと不安になることは至極当然ではなかろうか。そこで今回は耐久性について触れておきたい。

 まず外装面で気を付けなければならないのは“サビ”。金素材については問題ないが、ステンレススチールケースの場合は、正直なところ現在の304や316Lスチールに比べると、当時一般的に用いられていた素材はサビに弱い。そのため着用したときの皮脂や汗には特に気を遣わなければならないことは確かだ。ただ、これも着用後にまめに乾拭きするだけでだいぶ軽減されるということは覚えておいてもらいたい。
 もしどうしても不安ならば、60年代に入るとこのスチール自体がサビに対する耐性がかなり向上しているので、高年式の個体を選ぶといいだろう。

 次にムーヴメントについてだが、アンティークの場合は、そもそもが長く使うことを前提として作られており、耐久性についてもしっかりと考えて設計されているのだ。
 しかもその構成パーツのほとんどは手作りによって丁寧に仕上げられているため元々の品質はとても高い。よって、しっかりとメンテナンスさえ怠らなければ、安心して長く使えるはずである。

構造が単純であるほど、パーツが少ないほどに不具合は起きにくい。そのため、アンティークの扱いに慣れていないうちは、故障が起きにくい手巻きを選ぶと安心だ

 ただし、何度も繰り返すが年月が経っているものだけに、いくら耐久性が高いからといっても、ブランドや個体の使用状況によっても、その作りやコンデションは様々である。そのためアンティークウオッチの選び方のほうがある意味重要だ。

 そして、そのポイントは次の三つ。
 ひとつ目は50〜60年代のもので、なるべくシンプルな3針タイプを選ぶこと。理由は機構が単純であればあるほど壊れないからだ。その点からすると、複雑なクロノグラフなど確かに魅力的ではあるが、日常使うアンティークとして、または最初の1本として狙うのであれば、シンプルな3針モデル、もっと言えば自動巻きよりも手巻きのほうがいい。

天真折れを防ぐため考案された耐震装置(ルビー色の石を押さえた金属パーツ)は、1940年代以降、一気に普及した。アンティークを選ぶうえではこの耐震装置の有無にも注目したい

 二つ目は、よく名が知られていて、しかも自社ですべてを製造するマニュファクチュールブランドを狙うこと。安心を買うという意味ではこれもひとつの方策だ。
 そして三つ目はやはりアンティーク専門店で購入すること。メリットは色々あるが、アフターメンテナンスのことを相談できる点はビギナーにとってこれほどの安心はないだろう。

 それでは最後に、堅牢設計を意識した実力派ムーヴメントとその搭載モデルを紹介したい。

 

ロンジン/12.68系キャリバー

オールドロンジンを代表する手巻きの傑作機が12.28系キャリバーだ。スモールセコンド版の12.68Z(写真右)の初出は1929年。歯車を支える“受け”の一部を一体化させたことで優れた耐久性を得た。この12.28は後にセンターセコンド版の12.68ZNや、サイズ違いの10.68Zといった数々の派生を生み出しただけでなく、懐中時計用(写真左)としても設計が転用された。

経年による枯れた雰囲気の文字盤に、ブルースチールのリーフ針がよくマッチした、Cal.12.68Z搭載の個体。
■SS(31㎜径)。手巻き(Cal.12.68Z)。1940年代製。参考価格25万円

 

オメガ/30mmキャリバー

当時、各天文台コンクールの腕時計部門におけるムーヴメント直径基準の上限いっぱいである30㎜に合わせたオメガの傑作キャリバー。1939年の初出以降、オメガはこれをブラッシュアップし続け、60年代まで製造した。精度はもとより量産機としては飛び抜けた基礎体力を誇る。狙うのではあれば耐震装置が標準装備された40年代以降がおすすめ。

30mmキャリバーとは、初作であるCal.30をベースに発展したキャリバーの総称(オメガでは改良を加えるたびに新たなキャリバーナンバーを与えていた)で、260系や280系といったキャリバーもこれに含まれる。このモデルは、耐震装置を備え、衝撃性も強化されたCal.256を搭載。
■K14YG(33㎜径)。手巻き(Cal.265)。1950年代製。参考価格18万円

 

IWC/ペラトン自動巻き

開発者の名にちなみ“ペラトン自動巻き”と呼ばれるIWCの85系キャリバー。ベースとなるCal.85の初出は1950年で、摩耗が少ないラチェット式の自動巻き機構を採用したほか、ローターをショックアブソーバーで支えることにより、優れた耐衝撃性を誇った。狙うならば精度の微調整が可能になった発展形の853以降がおすすめ。

IWCで現在も受け継がれる耐磁時計インヂニュアの第1世代。デイト表示の有無に加え、ゴールドケース仕様などのバリエーションが展開された。
■インヂニュア。SS(36㎜径)。自動巻き(Cal.8531)。1960年代製。参考価格100万円

 

文◎堀内大輔(編集部)

-アンティーク時計