【時計というより、もはや芸術品】高度な職人技が生み出した、“ギョーシェ文字盤”採用モデル-3選

 腕時計に工芸品的な美しさを加え、同時に視認性を高めるギョーシェ装飾。主要な装飾とともに、おすすめのモデルを厳選して紹介。

伝統を受け継ぎながら、新たな技法を創出して進化を継続

 時間を知らせる道具でありつつ、装飾品でもある腕時計。その魅力を象徴するのが、文字盤に施されたギョーシェ装飾だろう。その歴史は意外に古く、18世紀にアブラアン・ルイ・ブレゲが考案したとされている。

 文字盤に立体感と高級感を加える繊細で美しい模様が1番の魅力だが、実は見た目の美しさはもちろんのこと美観と実用性を両立した装飾でもあり、光の反射を抑えて文字盤の視認性を高める役割も果たしているのだ。

 また、留意しておきたいのが、ひとくちにギョーシェ装飾といっても製造方法に違いがあるという点だろう。現代では生産効率とコスト削減のために金型を使用した型押しや、オートメーションで装飾を彫り込むのが主流となっているため、ギョーシェ装飾を施したモデルが手頃な価格でリリースされているが、それはあくまでもギョーシェ風のデザイン。

 伝統的なハンドギョーシェは特殊な旋盤を備えた機械を使用して職人が手作業で装飾を施すため量産が難しく、そのほとんどが高級時計に採用されている。美観についても型押しとは一線を画す立体感とエッジを備えているのだ。

 ここでは、伝統的な技法で仕上げられた秀作を厳選してみた。定番のクル・ド・パリ、ソレイユのほか、様々な装飾が生み出されているので、模様の違いに注目してみるのも面白いだろう。

》伝統的な手動旋盤を駆使したハンドギョーシェとは?

 現在は一見するとハンドギョーシェに見えても、コストと手間を削減するために、機械による彫り込みや型押しのプレスを採用するブランドが多い。

 そんななか、クロノスイスでは、およそ100年前の古いギョーシェマシンを継承し、 “アーティスト”と呼ばれる熟練の職人が、模様に合わせて曲線専用のギョーシェマシンと直線専用のギョーシェマシンを使い分けて、現在も手作業のギョーシェ彫りを施している。

 製作には高度な技術と繊細な作業が必要なため、まる1日をギョーシェ彫り作業に当てても仕上げられる枚数は30枚ほど。手作業で製作されるギョーシェ文字盤が、いかに貴重であるかが実感できる。

 バイトを文字盤に当て彫り込むが、手に伝わる感覚を頼りにした繊細な作業で、約0.1㎜の規則正しい深さを維持しているというから驚きだ。

 円形ディスク状のパーツが見えるが、これが曲線用手動旋盤の心臓部。装飾ごとにレシピが組み立てられており、バイトに規則的な動きを伝えることで曲線を彫り込むことができる。


》編集部のおすすめモデル-其の1
CHRONOSWISS(クロノスイス)
グランド レギュレーター

 かつて、時計工房において時刻合わせ用の時計に採用されていたレギュレーター機構を腕時計に搭載し、モダンに進化させたクロノスイスの代表モデル。時、分、秒針をそれぞれ独立して配置した独特の意匠が最大の特徴だが、美しいギョーシェ装飾も大きな魅力。印象的なのが、文字盤に施された伝統のクル・ド・パリ装飾だろう。よく見ると中央のサークル部分とサブダイアルで装飾のサイズを微妙に変えており、美観と視認性が高められているのだ。ハンドギョーシェならではの鋭角で立体的な彫り込みにも、職人気質のこだわりが光る。

■Ref.CH-6723。SS(44mm径)。3気圧防水。手巻き(Cal.C.673)。119万9000円

【問い合わせ先】
栄光時計
TEL.03-3837-0783
クロノスイス公式サイト
https://www.eikotokei.co.jp/brandsite/index/index/id/58


》編集部のおすすめモデル-其の2
URBAN JÜRGENSEN(ウルバン・ヤーゲンセン)
ワン・コレクション

 ウルバン・ヤーゲンセンが初めて手がけるラグジュアリースポーツモデルとして2019年に発表したワン・コレクション。独自のステンレススチールブレスを採用しており、そのブレスとケースをすべて曲線で構成することで、エレガントな雰囲気を強調。通常は縦方向に仕上げるグランドルジュ(麦の穂を意味する)装飾を、あえて横方向にアレンジするなど文字盤の装飾にも工夫が凝らされており、クラシックな雰囲気を備えつつモダンな雰囲気を醸し出している。

■Ref.5241。SS(41mm径、13.8mm厚)。120m防水。自動巻き(Cal.P5)。352万円

【問い合わせ先】
レ・ザルティザン
TEL.03-5940-7797
ウルバン・ヤーゲンセン公式サイト
https://www.urbanjurgensen.com


》編集部のおすすめモデル-其の3
CZAPEK(チャペック)
ケ・デ・ベルク オーロラ・ボレアリス

 代表作である“ケ・デ・ベルク”のギョーシェ装飾文字盤モデル。二つのサブダイアルの中心からの曲線を規則的かつ複雑に組み合わせた“リコシェ”ギョーシェ装飾はチャペック社が特許をもっており、スイス屈指のギョーシェダイアルメーカーであるメタレム社と共同で製作されている。文字盤には美観を損なわないように、スケルトン仕様に加工されたブルースチール針を配置。ブルースチール針の色合いが、白い水のように見える“リコシェ”ギョーシェ文字盤に上品なコントラストを効かせている。

■XOスチール(42.5mm径)。5気圧防水。手巻き(Cal.SXH1)。世界限定10本。286万円(予価)

【問い合わせ先】
ノーブルスタイリング
TEL.03-6277-1600
チャペック公式サイト
http://noblestyling.com/brand/cz/

 

文◎船平卓馬(編集部)

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