【国産時計のウンチク】世界初の市販チタニウムモデルは50年以上も前に誕生していた!?

 ステンレススチールよりも軽量でサビにくく、かつ金属アレルギーを起こしにくい素材として注目され、いまでは広く時計外装に採用されている“チタニウム”。黎明期において有名なチタニウムウオッチにはポルシェデザイン バイ IWCのチタニウム クロノグラフ(1980年発表)が挙げられるが、 実はこのモデルが発表される10年も前の70年にシチズンが市販化を実現していたという事実をご存じだろうか。

50年にわたって技術を磨く
チタニウム時計の先駆者

 シチズンは初となるチタニウムウオッチに、未知の記号として用いられる“X”と無限大(∞)の記号に似た“8”を組み合わせて“X-8(エックスエイト)”と名付けた。このことからも、当時の先進素材であったチタニウムがもつ可能性に大きな期待を寄せていたことがわかる。実際、同社では以降、今日に到るまでの半世紀にわたって、その技術を磨き続けている。

《シチズンのチタニウムウオッチ開発の歩み》

1970年/世界初のチタニウム製腕時計【X-8 コスモトロン・クロノメーター】
1960年代の宇宙開発競争のなかで、優れた特性をもつことから宇宙用素材として注目を集めたチタニウムを時計外装に用いられないかという発想から開発がスタートし、70年に発売された世界初のチタニウムウオッチ。ケースには純度99.6%チタニウムを採用。当時4万5000円という価格で、販売数は2000個未満だった。

1987年/チタニウム素材でソフトな輝きを実現【アテッサ】
チタニウムは、ほかの金属に比べて軟らかく加工するのが困難な素材だ。そのため鏡面加工を施すことが難しく、当時のチタニウムウオッチの大半が、マットで表面がざらついた外装であった。そんななか、シチズンでは、チタニウムでありながらも柔らかな輝きを与えることに成功。エレガントな雰囲気をまとうアテッサを1987年に発表した。

2000年/デュラテクトをチタニウムに施したモデルが誕生【アスペック】
ケースやブレスレットの素材表面に特殊な加工処理を施すシチズン独自の技術“デュラテクト(デュラテクトMRK)”を採用した初のチタニウムウオッチ。チタニウムの色調を生かしたシルバー色が特長となっており、優れた耐傷性を実現。鏡面仕上げを施した後に表面をコーティングするため、本来の美しさを長く保つ。

2006年/2重の表面硬化技術を実現【プロマスター エコ・ドライブ電波時計】
デュラテクトは、当初のコーティングする技術から、素材自体を硬くする技術、そして両方を複合的に施す技術へと発展していった。本作は両方を複合的に施した技術“デュラテクトMRK+DLC”を採用した初のモデル。擦りキズだけでなく、打ちキズにも強いという特性をもち、以降スーパーチタニウムはプロユース仕様にも広がっていく。

2018年/スーパーチタニウムを用いた超薄型機【エコ・ドライブ ワン】
世界最薄となる1mm厚の光発電エコ・ドライブムーヴメントを搭載し、ケース厚も3.53mmに留めた超薄型モデル。サファイアガラスと同等の硬度となるデュラテクトαを施し、薄さと強度を両立させた。
■Ref.AR5030-59L。スーパーチタニウム(36.5mm径、デュラテクトα加工)。日常生活防水。クォーツ(Cal.8826、エコ・ドライブ)。55万円

2020年/世界初のチタニウムモデル誕生から50年【アテッサ アクトライン エコ・ドライブ GPS衛星電波時計 F950 ダブルダイレクトフライト】
スポーティな雰囲気が強調されたアテッサ アクトラインのブラックチタンモデル。外装に採用されるのはデュラテクトDLCで、一般的なDLC加工よりもはがれにくく耐久性に優れるほか、艶やかな輝きを与えることも可能だ。
■Ref.CC4014-62E。スーパーチタニウム(44.3mm径、デュラテクトDLC加工)。10気圧防水。クォーツ(Cal.F950、エコ・ドライブ)。27万5000円

 そんな同社のチタニウムウオッチ開発史におけるブレイクスルーは2000年。独自の表面硬化技術“デュラテクト”を施したモデルを生み出したことであろう。表⾯が軟らかくステンレスと⽐べてキズつきやすいという弱点のあったチタニウム素材が、このデュラテクトを施すことによってステンレススチールの5倍以上の表⾯硬度をもち、さらに美しく平滑な鏡⾯仕上げも可能としたというのだから驚きである。

 加えてチタニウムの弱点を克服すると同時に、もうひとつの大きな恩恵を得た。
 それは、時計デザインの自由度がいっそう高まったことである。耐久性が増したことによる薄型化や、高級感ある仕上げが与えられるようになった同社のチタニウムウオッチは、その後いっそうバリエーションを拡大。スポーツ系からドレス系まで幅広く展開され、今日、シチズンのコレクションの中核を担っている。

ここまで進化している!
宇宙開発の分野でも活躍が期待される独自素材“スーパーチタニウム”

 シチズンのチタニウム加工技術と表面加工技術デュラテクトを組み合わせた独自素材として展開されるのがスーパーチタニウムだ。その特長は“キズに強い”“軽い”“肌にやさしい”“サビにくい”と、腕時計素材としてまさに理想的なもの。さらに近年ではピンクやゴールドなど、従来のチタニウムでは表現できなかった色調も実現し、デザインの幅を広げている。

 そして遂に同社のスーパーチタニウムは、腕時計の素材にとどまらず、宇宙開発の舞台へ挑戦し始めた。⺠間⽉⾯探査プログラム“HAKUTO-R”が2022年に予定している⽉⾯着陸のランダー(⽉着陸船)の⼀部パーツにデュラテクトDLCを施したスーパーチタニウムが採⽤される予定なのだ。このことからもいかに信頼性の高い素材であるかうかがい知れる。

 

“スーパーチタニウム”を採用する、おすすめブラックチタンモデル

 1000ビッカース硬度以上を誇るデュラテクトDLCが施され、その精悍さが魅力となったアテッサのブラックチタンシリーズは選択肢も豊富に展開される。ちなみに腕時計にDLC加工をいち早く採用したのもシチズンで、1987年のバーゼルワールドにDLC加工を施したモデルを参考出展している。
■(右)Ref.AT8185-62E。スーパーチタニウム(42mm径、デュラテクトDLC加工)。10気圧防水。クォーツ(Cal.H800、エコ・ドライブ)。14万3000円 (左)Ref.CB0215-51E。スーパーチタニウム(42.5mm径、デュラテクトDLC加工)。10気圧防水。クォーツ(Cal.H145、エコ・ドライブ)。11万円

 
文◎堀内大輔(編集部)

【問い合わせ先】
シチズンお客様時計相談室 TEL:0120-78-4807
https://citizen.jp

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