【OUTLINEのアウトライン|no.6】 開発段階に存在した、まったく違うもうひとつのデザインとは!

 1980年代のデッドストック品として発見された3種類のスイス製手巻き式時計。アウトラインの1980リビルドシリーズは、筆者がそのデザインをやり直して1年がかりで製品化したものだ。6回目の今回は、その中のひとつ、角形モデルの“レクタンギュラー138IV”のデザインについて書きたいと思う。

 まずリデザインするにあたり、これのオリジナルを最初に目にしたときに何となく思い浮かんだのが、アンティークウオッチ愛好家の間でよく“角金時計”と呼ばれる、1920〜50年代のアメリカンウオッチだった。


レクタンギュラー138IV。かつて販売されていた1980年代の日本といえばバブル時代。これのオリジナルは白文字盤に細身のリーフ針、ノーインデックスのかなりシンプルなドレスウオッチだった。フォンテンメロン製手巻きムーヴメントを搭載。32本限定。各11万円(左のシルバータイプは完売)

 なぜ、そのように思ったのかというと、製品化が可能なコンディションレベルの個体が全部で32本あった。そのうちシルバータイプのケースは6本しかなく、残りの26本はゴールドメッキタイプだったのだ。オリジナルは白文字盤に細身のリーフ針、外周にレイルウェイトラックはあるものの時表示は無い。つまりノーインデックスのかなりシンプルなドレスウオッチだったのである。おまけに製品化できる個体はそのほとんどがゴールドケース。さて、どうしたものか、と考えていたときにふと浮かんだのが、ゴールドケースを生かした角金時計だったのである。

【画像】1920年代に誕生したアメリカンウオッチ、通称“角金時計”とは

 しかも、角金時計がそうだということではないが、この時計だけがワイヤーラグ仕様だったこともあって、古典的なイメージがより強く30年代の雰囲気としてもちょうどいいと感じたことも大きい。

 アメリカンウオッチ、とりわけ角金時計は、1920〜30年代に花開いたアールデコを取り入れたデザインが主流となっていた。そのため特に30年代のものは、アラビアインデックスの書体にも個性的なものが多く、実は、その当時を象徴するアラビア数字を使ったデザイン案も当初は作っていたのである。それが下の写真だ。

スマホで撮った写真のためクリアーではないのが残念だが、右上が今回採用したデザインで、二つある黒文字盤に直線的な極太アラビアインデックスを合わせたデザインが、今回ボツにしたデザインである

 この直線的に描かれた極太のアラビア数字を使ったデザインは、角金時計に止まらず30年代当時の女性向けドレスウオッチにもよく使われたもので、アールデコの時代らしいデザインだ。正直なところ、これはこれで手首に乗せるとカッコ良く、実際に弊社の女性スタッフたちには好評だった。しかし、いかんせん主張が強いため好き嫌いがはっきり分かれるのではないか、ということから今回採用しなかったというわけである。

 ちなみに、最終的に採用したデザインのモチーフとなったのは、角金時計と同じ1930年代に作られたパテック フィリップのレクタンギュラーモデル(下の写真)”。これをベースに、スモセコ周りを中心に若干のアクセントを加えて角金時計のテイストを少し残したデザインに仕上げたのである。

1930年代に作られたパテック フィリップのレクタンギュラーモデル。文字盤はエナメル仕様で、ムーヴメントには丸型で、ルクルト製をベースに改良を加えた、手巻きのCal.10を搭載する(写真はロービート No.1より)

詳しくはアウトライン公式WEBサイトで

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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