アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ホイヤー
オートマチック クロノグラフ
今回取り上げるのは1980年代頃に製造されたホイヤーの自動巻きクロノグラフだ。
40mm径のケースはソリッドで肉厚なステンレススチール製のクッションスクエア形状を採用。装飾的要素を極限まで削ぎ落とし、武骨で力強いツールウオッチとしてのキャラクターを確立している。波打つような模様のブルー文字盤、オレンジのクロノグラフ針の組み合わせがスポーティで爽やかな印象を与えるデザインだ。
本個体は文字盤にプリントがないものの、全く同じデザインを採用したモデルでは、コルティナの名を冠したモデルも存在していたようだ。
キズや打痕。文字盤の腐食も見られず、全体のコンディションは良好だが、針の塗料が補修されている点は留意しておきたい。
ちなみに、本個体と同一のケースと文字盤デザインを採用したモデルがレマニアからも発売されており、当時のホイヤーとレマニアの関係性を示すかのような興味深いモデルでもあるのだ。

【写真の時計】ホイヤー クロノグラフ。Ref.510.513。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.5012)。1980年代製。55万8000円。取り扱い店/ジャックロード
【画像:クッション形のケースや裏ブタ、ブルー文字盤の状態を確認する(全5枚)】
そして本モデル最大の特徴は、同軸積算計を採用したレマニア製の自動巻きクロノグラフの名機、Cal.5012を採用している点にある。
通常のクロノグラフでは、30分や60分ほどの積算計を文字盤上に配されたインダイアルで表示するが、このムーヴメントでは、文字盤の中心にあるクロノグラフ針と同軸上に取り付けられた分積算計の針(オレンジの矢印形の針)が動くことで、経過時間の判読性を高めているのだ。
このムーヴメントはレマニアのCal.5100をベースに、12時位置の24時間計を廃し、毎時2万8800振動から毎時2万1600振動のロービート化を行っていた。また、丸穴車を取り付ける地板の一部やカレンダー機構のパーツ、クロノグラフ機構を覆うカバープレートなどに、樹脂製部品を導入したことでも知られている。一見するとコストダウンにも見えるが、注油が不要で摩耗に強く、金属同士のような焼き付きを起こさないという利点があったため、部品点数の多いクロノグラフの合理的な量産に向いた素材であったとも言える。
もっとも、輪列パーツや歯車類、クロノグラフ機構のレバー類など、長期的に強度や耐久性が重視される箇所については、従来通り金属製のパーツが使用されているため、現在でも十分にメンテナンスが可能である。何より、旧西ドイツ軍などで使用されたミリタリークロノグラフにおいて数多く採用されていた実績を見ても、その信頼性と耐久性の高さが窺える。
タグ・ホイヤーへと統合される直前、激動のクォーツショック期をタフに生き抜いたホイヤーの機械式クロノグラフの系譜。カレラのような王道とは一味違うマニアックさを備えた本作は、オールドホイヤーの世界をより深く愉しみたいコレクターにとって、これ以上ないほど硬派で所有欲を満たしてくれる1本と言えるだろう。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎ジャックロード

