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【10万円以下の価格破壊ウオッチ:バルチック】マイクロローター採用モデル、MR01を実機レビュー

 景気の低迷とコロナ禍によってここ数年にわたってトレンドが見当たらない状況となっているカジュアルウオッチ市場だが、視点を海外市場に向けてみると、そんな状況でも新たな動きを確認することができる。それが “マイクロブランド”の台頭だ。

 マイクロブランドとは、数百個単位の少量で商品を製造し、BtoC(企業が直接ユーザーにプロダクトを提供)で商品を販売する小さな時計ブランドのこと。海外市場では2010年頃からその数を増やしており、時計界の新たなジャンルとして時計好きから注目を集めている。

 ブランドによってその魅力は様々だが、マイクロブランドに共通している魅力は主に二つ。まず、そのコストパフォーマンスの高さである。すべてのブランドに当てはまるわけではないのだが、マイクロブランドの多くは自社のオンラインショップでの直販を主軸にすることで事業コストを削減しており、手の届く価格でありながら高品質な時計をラインナップしている。また、オーナー自身が時計愛好家であることが多く、時計好きの嗜好を捉えた商品を作れるというのも特徴といえるだろう。

 時計好きのツボを心得たコンセプトとデザインを備えたモデルを手の届く価格で展開することにより、目の肥えた時計好きから支持を集めて、勢力を拡大しているというわけだ。

 今回は、そんなマイクロブランドのなかから、フランスの時計ブランド、“バルチック”をクローズアップ。10万円を切る価格ながら、マイクロローター採用ムーヴメントを搭載したことで話題となっている新作モデル、“マイクロローターMR01”を実機レビューしていく。


 なお、タイムギア(TIMEGear)の公式YouTubeチャンネルでも、今回実機レビューしたバルチックの“MR-01”を含め、編集部の注目モデルの試着レビュー動画を公開している。ぜひチェックしてみて欲しい。

【タイムギア公式YouTubeチャンネル】


【今回の実機レビューモデル】

BALTIC(バルチック)
マイクロローター(MR01)

■Material:ステンレススチール
■Size:直径36mm、ラグの上下約44mm、厚さ8mm(風防を含めると約9.9mm)
■Waterproof:3気圧防水
■Movement:自動巻き(Hangzhou製Cal.ELA05MN)
■Price:9万4600円(レザーベルト仕様)
※写真は別売りのライスブレスを装着(時計本体9万4600円+ライスブレス1万5400円)


【バルチックのブランド紹介】

 バルチックは、アンティークウオッチコレクターを父にもち、その影響から自身も時計コレクターとなったエティエンヌ・マレク氏が立ち上げたフランス発の時計ブランド。マレク氏の父が残した1950年代〜60年代の時計にオマージュを捧げたデザインが特徴となっており、10万円を切る手頃な価格でありつつ、アンティークウオッチと見紛う雰囲気を実現している。


 今回の紹介するのは、マイクロローター採用の自動巻きムーヴメントを搭載するバルチックの新機軸、MR01だ。名だたる高級ブランドが参加するチャリティーオークション、“Only Watch”で2021年に初めて発表されて時計好きの間で話題となったモデルであり、レギュラーコレクションとしてリリースしてからも、本国のフランスを含めて、入荷即完売となっている時計である。


【外装について】


 ケースはベゼル、ミドルケース、裏ブタと3つのパーツで構成。ベゼルは1950年代から60年代のロンジンなどでも見つけることができる直線的な造形のステップベゼル仕様で、表面、サイドともに鏡面仕上げを採用。薄型のミドルケースは表面を鏡面仕上げ、サイドはヘアライン仕上げを採用しており、鏡面で統一されたベゼルとの対比により、デザインにメリハリが加えられている。ミドルケースのサイドをヘアライン仕上げにしたことで、ステップベゼルの存在感を際立たせ、デザインのアイコンに仕立てているのもポイントといえるだろう。


 また、ステップベゼルを備えた小振りなケースとともに、アンティーク感を高める役割を果たしているのがドーム型風防だろう。現行の時計はサファイアクリスタルを採用することが一般的だが、このモデルはアンティーク時計の雰囲気や質感にこだわり、あえてアクリルガラスを採用。こんもりと膨らんだ独特のフォルムが、アンティークを思わせる雰囲気を加えている。


【文字盤のデザインについて】

 文字盤は古典的な懐中時計のエッセンスを感じさせるスモールセコンド仕様。光の当たり方や見る角度で微妙にニュアンスを変える梨地仕上げの文字盤をベースに、スモールセコンド部分を一段凹ませた意匠となっており、文字盤との段差に加えて、同心円の装飾を施すことで立体感と視認性が高められている。


 スモールセコンドで見られる立体的な意匠は外周の目盛り部分にも採用されており、梨地仕上げの文字盤よりも一段低く成型した後、ヘアライン仕上げが施されている。ヘアライン仕上げを採用した外周の目盛り、梨地の文字盤、同心円のスモールセコンドと、高さと仕上げを使い分けたことにより、価格以上に高級感を感じさせる仕上がりとなっている。


 また、アプライド仕上げのブレゲ数字インデックスも、このモデルのアイコンのひとつ。10万円以下の手頃な時計は、インデックスの立体感が中途半端で、角がダレて丸くなっていることも多いが、このモデルは適度な高さを備えており、角のエッジも程よい質感を確保。適度な高さと鋭角さを備えたことにより、主張が強い梨地の文字盤のなかにあっても、インデックスがしっかりと存在感を発揮しており、視認性も良好だ。


【ムーヴメントについて】


 ムーヴメントは香港のHangzhou製、Cal.ELA05MNを搭載。輸入元によると、バルチックでパーツに再仕上げを施しているようで、ブランド名を刻印したマイクロローターに加え、ペルラージュ仕上げ、コート・ド・ジュネーブ仕上げなど、伝統的な装飾を施したムーヴメントの造形を余すことなく鑑賞できる。受け板の角の面取りやローターの側面など、細部を細かく見ると若干仕上げの甘さも見つけられるが、10万円を切る価格帯のモデルとしては、ほかと別格の質感、造形美を備えているのは間違いない。


【装着感について】


 ケースのサイズは36mmで、厚さは約8mm(風防を入れると9.9mm)。ステップべゼルを備えた重厚な見た目の印象とは異なり、コンパクトで軽快な着け心地を楽しめる。上下のラグの先端までの幅も44mmに抑えられているため、ラグを含めた時計全体が手首の内側に余裕をもって納まるのも好印象だ。


【問い合わせ先】
エイチエムエスウォッチストア表参道
TEL:03-6438-9321
www.hms-watchstore.com/


 

文◎船平卓馬(編集部)

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