こだわりを主張できる2大プロダクトである時計とメガネ──。それぞれに愛情を注ぎたいのはもちろんだが、この二つが相思相愛だと洒落感は倍増しになる。そこでお送りする、メガネと時計のベスト相性を探る“男の自己満コーディネイト”連載。撮影の舞台は、昼はメガネ店&喫茶、夜はクラフトレモンサワーBARとなる御徒町の知る人ぞ知る名店“ルッテン_”。アナタにぴったりの眼鏡と時計、ついでにレモンサワーやいかに!?
レトロフューチャーで、狙うは“インパク知”
人生の半分をアメカジで過ごしてきた大人が「流行りだからオーバーサイズのセットアップを着よう」と言われても、ハードルが高いのは当たり前の話。でも、気分転換に「いつもと違う時計とメガネを着けてみよう」と言われたら? チャレンジもしやすいのではないだろうか。
時計とメガネは、小物というくくりでありながら人の印象を大きく左右する。これがハマっているだけで、同じ着こなしでもグッと洗練されたそれに見えるのだから、試してみない手はない。
そこでまず意識したいのは、時計とメガネの“テイスト”を揃えること。今回は、“レトロフューチャー”な時計とメガネにフォーカスしたい。決して奇抜じゃないのに洒落て見える、マンネリ打破にうってつけのコンビである。
本題に入る前に、“レトロフューチャーとは何ぞや?”から話を進めよう。手持ちの広辞苑を開いても載っていなかったのでデジタル大辞泉の力を借りると、そこには“過去のSF作品などに描かれた未来。また、それらに登場する文化・ファッション・デザインなどを取り入れた現代の芸術作品や工業製品”とある。もっと平たく言えば“昔考えられていた未来像”ということになるだろう。
【画像】男の三種の神器かも? “時計とメガネとレモンサワー”を拡大してじっくり見る
***レトロフューチャーな時計***
当然、考える人によって未来像は異なるのだが、ここには大きなステレオタイプが存在するように思う。ステレオタイプとは、まだ見ぬ未来を描きながら旧時代の技術なり様式美なりが色濃く残っていることである。『スターウォーズ』のC3POしかり、『ブレードランナー』のカオスな街並みしかり。これが『ドラえもん』の描く未来になると、途端にレトロの要素が薄れてしまう。さておき、レトロフューチャーには人の知的好奇心をくすぐり、懐かしさとともに憧れの念を抱かせる魅力がある。
そこで今回スポットを当てる時計が、“ゾディアック”の“アストログラフィック レトロフューチャー(1970年代製)”である。看板に偽りなしとは、まさにこのこと。我々の思い描くレトロフューチャーを地で行くようなスタイルの一本であり、横から見るとUFOのような形状をしたGFケースや、“ミステリーダイアル”と呼ばれる宙に浮かんだように見える針に、唯一無二の個性がある。
しかし、丸みを帯びた形状や遊び心あふれるそのデザインは同時に親しみを感じさせ、エイジングの具合も相まって、意外なほどに手馴染みがよい。ゴールド色の時計にありがちな成金趣味とは無縁なところも、好ポイントといえよう。
ZODIAC(ゾディアック)
アストログラフィック レトロフューチャーデザイン(1970年代製)
ルーツは1882年に遡るスイス老舗の、往年の名作。3枚の透明ディスクへ時・分・秒を示す針や丸を記し、あたかも宙に浮いて回っているかのように錯覚させる通称“ミステリーダイアル”を備える。自動巻きムーヴメントは当時のトレンドであった毎時36000振動のハイビートタイプ。ヘアラインサテン仕上げのケースはGF(金張り)で、遊び心あふれるルックスでありながら上質感がある。ちなみにこの時計、横から見るとUFOのような古墳のような、台形型に盛り上がった独特のフォルムをしている。ほのかに薫る古代文明感がまた、冒険心をくすぐるのだ。
【問い合わせ先】
SELECT(セレクト)
TEL.03-5846-8834
https://select-watch.tokyo
***レトロフューチャーな眼鏡***
そんなレトロフューチャーの名作に合わせるメガネは、これまたレトロフューチャーな“ファクトリー900 レトロ”のコンビネーションフレーム“RF-171”。油圧プレスによる三次元的な造形やメタルのインナーリム使い、トップリムの一部が欠けたようなデザインに個性のある一本だが、同時にクラシックなクラウンパントを基調としているため、そこまで奇抜に映ることもない。往年のボキャブラ天国に倣ってテイストを表現するならば、“インパク知”といったところか。
ちなみにこのブランド、コンセプトが“半世紀タイムスリップして未来のメガネを追求する”というユニークなもの。現在からマイナス50年するとちょうど1970年代になり、先の時計の製造年代ともマッチする。黒×金の渋みのあるカラーリングも含めて、相性が悪いはずがない!という話だ。
想像してみてほしい。白Tにジーンズ姿の男性の時計とメガネが、こんなレトロフューチャーなコンビだったら……。相当のお洒落巧者に映るのではないだろうか?
FACTORY 900 RETRO
ファクトリー900レトロ
世界随一のプラスチック成形技術を活かしたアヴァンギャルドな作風で人気を博す、ファクトリー900。そこから派生したファクトリー900レトロは、“半世紀タイムスリップして未来のメガネを追求する”というコンセプトに基づき、“これからのクラシックスタイル”を提案するブランドだ。“RF-171”は、油圧プレスによる厚手のアセテートリムとメタルのインナーリムを組み合わせたクラウンパント。クラウンパントとはボストンタイプの上部を平らにしたようなスタイルを言い、フレンチヴィンテージに多く見られる。昨今人気が再燃し、いまや一大定番となったスタイルだが、本品はリムの一部が欠けたようなエッジの効いたデザインに、らしさが光る。
Column:レトロフューチャーな時計とメガネな日に飲みたいお酒は?
セサミレモンサワー
ごま焼酎の紅乙女とバーボンを少々、そこに宮崎産のマイヤーレモンときび砂糖を漬け込んだルッテン自家製のレモネードシロップをマリアージュさせた“セサミレモンサワー”は、ふわっと鼻に抜ける黒ごまの香りにどこか懐かしさを覚える、個性派にして優しい風味。異なるお酒をブレンドすることで生まれる味の奥行きも見事! ルッテンのレモンサワーすべてにいえることだが、レモンサワーってこんなに美味しいの!?と感動すること請け合いだ。700円。
***眼鏡とレモンサワーの詳細はこちら***
洒落者が集う青山のアイウェア名店“ブリンク ベース”を運営する荒岡 敬さんが、地元御徒町に開店したマルチスタイルショップ。12:00〜19:30の昼の部では、カフェ営業を行いながらアイウェアや民藝、郷土玩具を販売し、19:30〜21:30までの夜の部(※木・金・土のみ)では、33種類のクラフトレモンサワーが飲めるBARに変身する。料理も美味しい!
眼鏡とクラフト at RUTTEN_
住所:東京都台東区上野5-5-10 1F
定休日:毎週月曜日、第3水曜日
TEL.03-6284-2675
https://www.rutten-eyewear.com/
文◎秦 大輔
1980年生まれ。大学卒業後に編集・ライターとしてのキャリアをスタートし、ファッション誌、モノ雑誌を中心に、ウェブメディアでも原稿を執筆。時計についてはタイメックスを愛用しており、2021年に発行された『TIMEX PERFECT BOOK』でも執筆を担当している。
構成◎船平卓馬(編集部)/写真◎山本れお