アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
セイコー
クォーツ スーペリア
高度経済成長期真っ只中であった1969年。セイコーはクォーツ式腕時計の開発を急ピッチで推し進め、同年の12月25日に世界初の市販クォーツ式腕時計“アストロン”を発売した。もっとも、初期型に採用された手ハンダによるハイブリッドICは耐久性に難があったため、後に対策部品へと交換されたという記録も残されている。
その後、セイコーは自社でICの開発・製造を可能にしたことで、クォーツ式腕時計の開発は飛躍的な進化を遂げることとなった。また、このIC製造技術を発展させることで、産業用・家庭用機器に搭載されるマイクロコンピュータチップの製造が可能となり、現在のセイコーインスツルやエプソンといった総合電子デバイスメーカーとしての礎を築き上げたのである。
そして今回紹介するのは、後のセイコーエプソンの前身である諏訪精工舎が1976年に製造したスーペリア クォーツだ。“スーペリア”の名が示すとおり、繊細なエンボス加工の施された文字盤表面と、立体的かつ平滑面が協調されたインデックス、すべてが植字によって刻まれたミニッツマーカーが特別な雰囲気を醸し出している。また、金メッキの施されたケースも平滑面が強調された力強いデザインで、セイコーの特徴とも呼べるザラツ研磨によるスーパーフィニッシュが用いられている。いまなお煌びやかに輝く仕上がりからはフラッグシップモデルとしての威厳が感じられるだろう。加えて、純正のハードレックスガラスには反射防止のコーティングが施されており、光に当たると薄い緑や紫に輝くのが特徴だ。

【写真の時計】セイコー クォーツ スーペリア。Ref.4883-8001。SGP(37mm径)。クォーツ(Cal.4883)。1976年製。19万8000円。取り扱い店/BQ
【画像:緻密なインデックスやケースの仕上げなどを見る(全5枚)】
ムーヴメントには諏訪精工舎製のCal.4883を搭載。発売当時は月差±1秒の精度を誇り、10秒単位で停止するという特殊な秒針停止機能まで搭載されていたのだ。また、クォーツ式でありながらも回路基板や絶縁パーツを除く大半の部品は金属で構成され、機械式時計の面影を色濃く残す設計となっている。耐久性を重視した設計であるため、製造から約半世紀が経過した現在でも、問題なく動作している。加えて、裏ブタには電池交換を容易にするためにコイン溝式のハッチが用意されている点にも注目だ。
クォーツ式腕時計は寿命が短いというイメージがある一方で、本機のように耐久性を重視したムーヴメントであれば、定期的なオーバーホールと電池交換、そして湿気や水分を避ける適切な使用を心掛けることで、長期使用が十分に可能であることを証明している。もっとも、メーカーごとに構造や材質、設計思想が異なり、電子回路内のコンデンサーやICにも寿命は存在するため、一概にすべてのクォーツ式腕時計が長寿命であるとは言い切れない点は留意すべきだろう。
本個体以外にも、クォーツ式の腕時計を使用する人には、高温多湿を避け、電池の液漏れを起こさないよう、電池切れで停止した際には、信頼できる時計専門店で早期に交換してもらうことを推奨する。電池の液漏れは、電気接点や電子回路の腐食を起こし、クォーツ式腕時計が故障する最大の原因となりうるからだ。
また、自分自身で電池交換を行うという人も、使用する電池については液漏れを起こしにくい、腕時計専用の酸化銀電池を使用することをおすすめしたい。
【LowBEAT Marketplaceでほかのセイコーの時計を探す】
文◎LowBEAT編集部