近年のヴィンテージブームもあり、多方面で注目度が高まっているアンティーク時計。かつては中高年男性を中心とした玄人の趣味というイメージが強かったが、現在は20〜30代の若年層や女性ユーザーの関心も高まっており、年々市場が加熱している。
そこで今週からは、複数回にわたって“初心者におすすめのアンティーク時計”をテーマに記事をお届け。アンティークファンはもちろん、なんとなく興味自体はあったけれどまだ手が出せていない人、さらにはこれから学んでみたいとお考えの方々に向けて最良の選択肢をナビゲートする。
【写真全10枚】三つのカテゴリー別!“一生モノ”の初アンティーク時計
●アンティーク時計の魅力と、年々高騰する市場
長く使うことを前提とした堅牢設計、製造当時のトレンドを反映したいまとは異なるデザイン、経年によって生まれた独特の味わい、腕になじみやすい小振りなサイズ感など、現行の時計にはない多くの魅力をもったアンティークウオッチ。金価格の高騰などの影響で年々高額化が著しい現行モデルに対して、手頃な価格の個体も多くコストパフォーマンスに優れている点も大きなメリットとして挙げられる。

(左)現代の腕時計に比べて小振りなサイズ感なのもアンティークウオッチの魅力のひとつ/(右)文字盤の変色の仕方は個体によって千差万別だ(写真はすべてオメガ・シーマスターシリーズの経年変化)
かつては20万円もあれば名門ブランドの良質な個体が手に入ったが、世界的な需要増により市場価格は高騰。現在、安心して実用できる個体を探すなら、“50万円台まで”という予算設定がひとつの現実的なラインとなっている。
●初心者におすすめなアンティーク時計とは?
では、初心者が最初に選ぶべきアンティーク時計とは何か。総合的に普段使いしやすいといった点では、1950〜60年代にかけて量産された時計がおすすめだ。そして著名ブランドのシリーズであればさらに安心感は大きい。数があるため部品調達がしやすく、しっかりと修理を受けてきた個体という可能性も高いからだ。もちろん中級以下の知名度が低いメーカーの時計でも十分使えるものはあるのだが、ラフに扱われてきた個体も多く、ケースの質も千差万別のため初心者にはおすすめしづらい面が大きい。

手頃な価格帯で流通量も多いオメガのなかでも“シーマスター”シリーズはバリエーションの選択肢が多く、初心者にも強くおすすめできる
◎ブランド&シリーズで選ぶ
候補のブランドとしては、実用時計としての完成度が高いロレックス、オメガ、ロンジンに加え、主に1950〜60年代にかけて大量生産されたIWC、セイコー。定番としては、このような面々が挙げられる。ただ、近年の高騰によりロレックスの自動巻きは50万円台までで購入できるモデルが少なくなっており、ロンジンは歴史的名機が多いものの、生産本数の少なさから初心者にはややハードルが高い面もある。
そのため推奨3ブランドとして、オメガ、IWC、セイコーを挙げさせていただく。
◎ムーヴメントで選ぶ
ムーヴメントについては、初心者ほど手巻きを推す関係者は多い。もちろん、ロレックスの1500系やオメガの550系キャリバーなど使いやすい自動巻きもあるのだが、手巻きはパーツ点数が少ないため不具合が起こりにくく、結果的にメンテナンスコストも低くなる。そして、ゼンマイを手で巻くという醍醐味もセットで時計に愛着をもちやすいという点でも、まずは手巻きがおすすめできるのだ。

アンティークロレックス史上最高傑作と称される、自動巻きムーヴメントの1500系キャリバー(写真はCal.1570)
一方で、使いやすさに勝る自動巻きでは、やはりロレックス1500系は鉄板。精度が高く、丈夫であることに加えてロングセラー機であるため市場に多く流通している。それゆえパーツも手に入りやすく多くの技術者が扱いに慣れているムーヴメントでもあるため、将来的なメンテナンスに対する不安も少ない。リバーサー式の全回転両方向巻き上げ式のため巻き上げ効率も優れており、メンテナンスを欠かさなければ、いまなお一線級の実力を誇る。
◎ジャンルで選ぶ
ジャンル別に探すのなら、構造がシンプルで壊れにくいベーシックな3針時計から始めたい。3針はアクの少ないデザインのものが多く、デイリーユースにも最適だ。なかでもラウンドケースモデルは60年代以降の高年式個体であれば裏ブタもスクリューバックになっており、防汗程度の役割も期待できる。

数あるジャンルのなかでも屈指の人気を誇るクロノグラフ(写真上)、ミリタリー(写真左下)、ダイバーズ(写真右下)
一方で、コンプリケーションウオッチと呼ばれるような複雑機構モデルはまだ少ない時代だが、歴史的背景によって生まれた道具としての機能性をもつ時計は現代にまでしっかりと受け継がれている。ストップウオッチ機能に加え、複数のメーター類が配されたデザインも魅力的なクロノグラフ、戦争の歴史とともに発展してきたミリタリー、防水性を追求して生まれたダイバーズの三つが特に人気の高いジャンルだ。
次回以降は、ブランド&シリーズ、ムーヴメント、ジャンルの三つのカテゴリーそれぞれにおける具体的なおすすめモデル(キャリバー)を紹介していく。
【過去連載記事もチェック!】
■【パネライも小さくなった!】 デカ厚ブームの終焉と、劇的変化を遂げた“あの名作”の現在地|性別の垣根を超える腕時計 No.039
■加熱する“小ぶり×薄型”ウオッチ【セイコー、シチズンほか】38mm径以下が主流に?業界を超えて広がるミニマリズム潮流とは|性別の垣根を超える腕時計 No.038
■争奪戦必至の“桜色”モデルが続々登場!【オメガ×スウォッチ、セイコーほか】2026年最旬カラーの腕時計たち|性別の垣根を超える腕時計 No.037
文◎市村 信太郎

音楽・教育業界を経て編集者に。時計、メイク、ファッションほかレディース・メンズの垣根を超えたジェンダーレスなスタイルを体現し、その魅力を伝えるべく奮闘中。Yahoo!ニュース連載「性別の垣根を超える腕時計」(第1〜3週日曜)。インタビュー記事『Time Files』(第4週日曜)。
![]()