アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
カルティエ
オーガニックウッドタンク LM
今回紹介するのは、1975年から76年にかけて製造されていたとされるカルティエのウッド タンクである。
ユニークなのはケースと文字盤に “ブラジリアンローズウッド”を使用している点。ブラジリアンローズウッドはその名のとおりブラジル原産の木材だ。
ブラジリアンローズウッドは密度が高いために非常に硬く、木材の内部にヤニを含んでいるため経年によって深みのある色合いとツヤが出る特徴をもっている。また、含まれているヤニには虫食いや腐敗を防ぐ効果もあるという。そのため、古くから家具や楽器などに用いられることが多く、高級木材として人気を集めていた。しかし、その希少性から違法伐採のターゲットにされ、個体数が激減してしまったために、現在はワシントン条約によって取引が厳しく制限されているのだ。

【写真の時計】カルティエ オーガニックウッドタンク LM。ヴェルメイユ・ブラジリアンローズウッド(23mm×30mmサイズ)。手巻き。1970年代製。118万円。取り扱い店/DECO
【画像:ローズウッドの文字盤やケースサイドを見る(全6枚)】
そんな貴重な木材を使用したタンクは、パリ・ニューヨーク・ロンドンの3ブティックで限定3000本のみの製造された。カルティエは、ローズウッドの希少性に加え、その硬さと耐久性に着目し、このモデルに採用したのだろう。艶やかでありながらも柔らかな色合いをもつケースサイドが、このタンクに唯一無二の個性を与えている。
しかしながら、経年による乾燥と収縮によってひび割れが生じやすく、文字盤やケースが原形をとどめている個体が多くない。その説明を聞くと、脆く壊れやすいという印象をもつかもしれない。だが、ベルトのバネ棒を受けるラグ内面や裏ブタ、風防まわりなど、ケースの基本構造にはシルバーをベースとしたヴェルメイユ925が用いられており、丁寧に扱うことで割れによる破損を防ぐことができるはずだ。
本個体では文字盤やケース部分に割れは見られず、比較的良好な状態を保っている。また、ベルトの尾錠には70年代のプレマストをはじめとした、オールドタンクに付属していたとされる、非常に珍しい“ドゥーブルC”刻印の角形尾錠が装着されている。
日本国内だけでなく、世界中のコレクターが探し求める1本。カルティエのタンクをこよなく愛するコレクターにとって必見の逸品だ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎DECO